ナイジェリアに学ぶアイドルとの接し方
この世はアイドル戦国時代
2021年、この世は正にアイドル戦国時代。
2010年頃の48グループに始まり、
坂道、ももクロ、地下アイドル等、
ブームは入れ替わり立ち代わりの群雄割拠。
祇園精舎の鐘の声どころか、
アイドルのOvertureにも、
諸行無常の響きを感じますね。
そして〝アイドルヲタク〟を名乗るハードルも、
随分低くなったように思います。
同好の士は巷に溢れるようになりましたからね。
そんな中職場のナイジェリア人「アチェベ(仮名)」も、
そのうちの一人でした。
日本のアイドル文化と母国・ナイジェリアの文化、
その狭間に位置したアチェベについて、
今日はお話したいと思います。
アチェベ、アイドルと出会う
アチェベは努力家でした。
自然豊かなナイジェリアの首都・アブジャの郊外に産まれ、
努力に努力を重ね、ヨーロッパの大学に進学。
そこで偶然日本の〝サムライ〟文化に触れたことがきっかけとなり、
日本の企業に就職。
そこで私と出会うわけです。
彼とはバックグラウンドに共通項はありませんでしたが、
不思議と仲良くなり、終業後は杯を交わす仲に。
その日は「日本の音楽事情を知りたい!」
と言った彼の家でDVDを見ていました。
過去のBuono!のライブが流れており、
2人で身体を揺らしていました。
その時に彼が「カワイイ・・・」と言った方が、
嗣永桃子さんでした。
その時には既に引退していましたが、
彼がアイドル文化を知りたいと思うきっかけとなりました。
日本のアイドル文化と母国・ナイジェリアの文化、
2つの文化を知った彼が、
職場の〝アイドルヲタク〟に、彼自身に、
少しずつ変化をもたらしていきます。
そんな彼の姿を見て私自身もまた、
少しずつ変化していくのです。
その中から今日は少しだけ、彼のエピソードを紹介したいと思います。
①職場のふみえさん、推しの人数に迷う
アイドルヲタクをしていると、推しの人数問題には必ず遭遇します。
単推しを貫くべきか、あるいは・・・
職場のふみえさん(仮名)もその一人でした。
ふみえさんはジャニーズのとあるグループを応援しています。
しかし最近別のグループの子を好きになったそうで・・・
ふみえさん『単推しだったのに・・・
アチェベ、私どうしたらいい?』
アチェベ 「そのグループの子も、
別のグループの子もスキデスカ?」
ふみえさん『うん!!』
アチェベ 「ダッタラ、2人とも愛してシマイナサイ。」
ふみえさん『どういうこと?』
アチェベ 「ナイジェリアでは、
一夫多妻制にしている人イマス。
ちなみに私の部族では、
4人まで認められてイマス。」
ふみえさん『なるほど・・・ということは・・・』
アチェベ 「そう・・・4人まで単推しデス・・・」
その後ふみえさんの推しはどんどん増えていきました。
でもあなた日本国籍だからな???
②アチェベ、アイドルと結婚したい
日本のアイドル現場ではヲタクがしばしば
「絶対結婚しような!!」などと叫びます。
ある種の社交辞令のように発声する人もいれば、
本心から叫んでいる〝ガチ恋〟と呼ばれる人もいます。
アチェベ、後者のガチ恋になってしまったようです。
アチェベ「聞いてクダサイ・・・
嗣永桃子さんと結婚したい・・・」
私 『相手はアイドルだからねえ・・・』
アチェベ「日本ではアイドルが恋愛すると、
雑誌等で叩かれマス。
いけないことなのですか?」
私 『アイドルは〝みんなのもの〟だからね。』
アチェベ「〝みんなのもの〟デスカ・・・
それ、ナイジェリアと一緒デス!!」
私 『えっそうなの?』
アチェベ「ナイジェリアの一部の部族では、
一妻多夫制アリマス。
それと同じです。
日本にもナイジェリアがアリマシタ。」
文字にするまで理解が追い付かなかったのですが、
彼は感動して涙を流していました。
日本のアイドル文化=ナイジェリアの文化。
地球に生きている人間の差異なんてちっぽけなもので、
私達は地球に等しく生きる〝家族〟なのかもしれません。
③アイドルヲタクは日本の〝サムライ〟だ!!
月日を経て、アチェベもアイドルヲタクとして成長してきました。
そんな彼、この前初めてライブに行ってきたそう。
私 『アチェベ、ライブどうだった?』
アチェベ「サイコーでした!!
でも一つ気になりマシタ。」
私 『どのあたりが?』
アチェベ「ファンが振り回す棒、あれ何デスカ?」
私 『あれはサイリウムだね。
推しメンのカラーのを振ったりするんだ。』
アチェベ「とてもかっこよかった!
サムライの刀のようダッタ!」
サムライ=武士は自衛のため、
武装した領主が起源という説があります。
アイドルのためサイリウムで武装したヲタクは、
もしかしたら現代に生きる〝ラストサムライ〟かもしれません。
この世はアイドル鎌倉時代
アイドルとは実に儚いものです。
だって、いつか卒業して消えてしまう存在なのだから。
綺麗な沙羅双樹の花も、いつかは枯れてしまいます。
綺麗なサイリウムも、いつかは過去のものとなります。
ただ春の夜の夢のよう。
だけど、その一瞬の輝きを追いかける楽しさを、
アイドルとの接し方を、
アチェベが教えてくれた気がします。
今いる推しとその周囲が、
次のステージに向かうその日まで、
いや、次のステージでも、
永遠に輝き続けますように。
この世のアイドルは平家物語のよう。
綺麗で儚い。
守るべき存在のために刀を振るう。
アイドルのためにサイリウムを振るう。
この世は〝アイドル鎌倉時代〟。
平家物語が成立したこの時代の方が、
現代のアイドル像にピッタリだと思いませんか?
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