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冬の星々(140字小説コンテスト第4期)応募作 part3

季節ごとの課題の文字を使ったコンテストです(春・夏・秋・冬の年4回開催)。

冬の文字 「広」
選考 ほしおさなえ(小説家)・星々事務局

1月31日(水)までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、過去の受賞作などは以下のリンクをご覧ください)

受賞作の速報はnoteやTwitterでお伝えするほか、星々マガジンをフォローしていただくと更新のお知らせが通知されます。

優秀作(入選〜予選通過の全作品)は雑誌「星々」(年2回発行)に掲載されます。
また、年間グランプリ受賞者は「星々の新人」としてデビューし、以降、雑誌「星々」に作品が掲載されます。

雑誌「星々」既刊ご購入▼


応募作(1月15日〜21日)

投稿日時が新しいものから表示されます。

1月21日

見坂卓郎(サイトからの投稿)
空が広くなった。かつて空を四角く切り取ったビル群は跡形もなく消え去り、昼には目にしみるような青空が、夜には囁き声が聞こえるような星空が、ただ視界によって丸く包まれた。プラネタリウムはずっとそこにあったんだ。そうやって語りかける相手はもういない。僕はひとり、体育座りで空を見ている。

ギザギザ仮面 @penginsaizu
オイラの身体が広い天体の星座になってて、オイラはみずがめ座だけど、ちょっとうお座に近いので、右足のくるぶしに大きな魚の目があった、そこがばい菌が入って切って2度も魚の目はなくなってしまったよ、もったいないと言うか痛かったので、しょうがなかった

干月 @Mikangetsu
「ここが海?」
空を見上げて、君が言う。雲が流れて、水が落ちる様を僕たちは見ていた。風の音を聞いて、遠くから指す光を浴びた。
ようやくでてきた世界は薄暗くて、寒かった。この世界を見るために、僕たちはここまで来たんだったか。
「世界って広いね」
君は明るい声で言う。水が、落ちる。

星野明希(サイトからの投稿)
同じ制服、同じ授業、でも。小学生の頃、国語の教科書に「広がることば」って詩が書いてあった。当然日本語で、この国にしか広がることができないと言われているようで嫌だった。高校生になり、あの詩が消えて久しい。そしてようやく気がついた。広がることを強制されることがこんなに苦しい。

物部木絹子 @yuko_momen
「優しい人になりたい。みんな僕は優しいって言うけど、甘いだけなのは自分だって分かってる。」
「確かに甘さ、の面は否めないが、それで誰かの心が晴れたならそれも広義では優しさなんじゃない?」
本当は君みたいになりたい。って、言えたら前に進める気がするけれども言わない。僕はやっぱり甘い。

いちいおと @oto_ichii
雨音に耳をそばだてながら思い出したのは、心ない噂が広まり、夢をあきらめた日のこと。眠れずに開いたノートに「才能がない」と殴り書きして自らを納得させた。もしあの頃の自分に声をかけてあげることができるなら、と考える。好きなことはつづけて、と伝えたい。夢はいくらでも抱えていいのだから。

山尾登 @noboru_yamao
この広い世界で、キミと巡り逢えたのは奇跡だよ。あなたがそう言って、目を輝かせたのは、もう半世紀前のこと。K大学祭にお互いが友達同士で、参加したのがきっかけだった。あのあなたが今、目の前にいる。この広い世界に70数億という人間がいるのに、今日まで夫婦を続けて来た!ってこそ奇跡なのよ。

長中ちすず(サイトからの投稿)
星が落ちた。落ちた場所には、「星」と聞いて誰もが思い浮かべるあの形の星があった。五か所のトゲトゲの先には、なんとそれぞれにコクピットがあり、そこには照れくさそうにしている宇宙人がいた。そいつらはペコペコと頭を下げたあとまた飛び立ち、私は広い宇宙を少し身近に感じた。

一齣其日(サイトからの投稿)
広大で果てのない砂漠を彷徨ってる気分だった。就活サイトをずっとスクロールして時間が過ぎる。よく分からない。自分が何をしたいのか。どんな仕事に就きたいのか。イメージも湧かない。ポチポチとタップして適当に何社かピックアップ。考えてみると、僕はまだ砂漠に立っていないのかもしれなかった。

つくえのゆくえ @kamakiriyasa
「この地球では視野が狭いと生きていけないぞ」と親や先生に幾度となく説教されたなあ。大人になった今でも、結局おれは目の前のたった1つのものしか見えていない。どうやったらもっと視野が広くなるんだろう。目の前の色だって青一色だ。だから俺はここにいるのか。地球を眺めながら、広志は嘆いた。

結励琉 @lightnoveldream
都会を遠く離れた広々とした草原で、冬の星座の観測をしていた。天頂近くには、ふたご座のポルックスとカストルが並んで…いない。あれ、俺は寒空の下、何時間か居眠りをしていたのか。それにしても、知っている星がひとつもない。「あなたは不幸にも亡くなられたので異世界に」空から声が降ってきた。

結励琉 @lightnoveldream
子供の頃、夏休みに父の郷里の祖父母の家を訪ねることが楽しみだった。都会のマンションの自宅にはない広縁から星空を眺めて、デネブ、アルタイル、ベガといった星の名前を教わるのが好きだった。今は祖父母も空の星になってしまい、家も明日から取り壊す。最後の日、広縁からオリオン座を眺めている。

1月20日

 @AoinoHanataba
広場に聳え立つ、大樹の桜が切り落とされた。育ちすぎて、今にも倒れそうで危ないから、と。立派な桜の木が、あっという間に切り株になってしまった。でも……。切り株の端から、細い枝が生え、蕾を膨らませている。
……また、会える時が来るといいね。
僕は切り株の上に腰を下ろし、細い枝を撫でた。

ありさ(サイトからの投稿)
白い壁の一点に小さな蜘蛛がいる。蜘蛛にとって壁はあまりに広大なので、一生懸命もそもそ歩いても、たいして進んでいない。「追い風」と息を吹きかけたら、壁にしがみついてしまった。余計なことをしてごめんねと、むきゅっと力む蜘蛛をかわいく思う気持ち。助けたい気持ちは必ずしも報われない。

ありさ(サイトからの投稿)
電話を切った後も仕事が手につかないのは、恋の苦しみでしょう。僕は楽しみながら苦しんでいる。君は気づかないし、考えたこともない。だけど、君は悪くない。きっと僕は流されてしまうんだ、「ずっと良い友達でいよう」に。仲良しの広狭について夜通し考えるくらいに贔屓しているんだよ、鈍感な人!

ありさ(サイトからの投稿)
日曜日の23時、何者かの視線を感じる。毛布に潜っても机の下に隠れても、それは真っ直ぐ僕を見つめている。広い地球上のどこへも逃げられないぞと、その存在は言っている。眠れない。この不安の正体は何なのか。震えて過ごす1時間、日付を跨いだその瞬間にはっと気づく。月曜日が僕を見ている。

戸田なお @tarogorojp
列車は広州へ向かって走っている。牛が黒い大地を耕している。遥か彼方の地平線へ沈むおおきな夕陽をみた。乎、太陽はなんておおきくオレンジ色なんだろう。私は感動した。四人掛け席で前に座っていらっしゃるツアーで一緒の山國さんもにこやかに微笑まれている。時のながれはゆっくりで幸福を感じた。

戸田なお @tarogorojp
蟹食べ放題80分但馬バス旅行に母と出かけた。出石焼の店でお皿を二枚買った。田舎饅頭を載せるのによさげ。数軒店に立ち寄りとうとう大広間での蟹食べ放題80分。ひとついただく。塩っぱい。すごくがっかりする。やはり竹野の民宿にそれなりの値段をだしていかないと想ったような蟹にありつけない。

MEGANE @MEGANE80418606
その人は僕が遠い昔に落っことしてきた「広がり」を持っていました。あの頃はその意味を理解していなかったけれど、彼のような「広がり」を持つ人を本当の意味で「優しい」と言えるのでしょう。膝に縋り付いて、泣きたくなるような笑顔を最期まで浮かべる人でした。彼の心は灰にならず、僕の胸にいる。

エハガキ華(サイトからの投稿)
深夜の動物園に忍びこんで嘴広鸛を一羽盗みだした。青みがかった灰色の羽根の一枚一枚を手入れしてやり、えさの肺魚を探すために湿地をかけずりまわった。泥だらけになって帰宅し肺魚をさしだすと、その鳥は愛想をふりまくことなくえさを丸呑みにする、その光景を眺めながら私は母の担当医と電話した。

エハガキ華(サイトからの投稿)
「広所恐怖症なんです」と彼は言った。関東平野なんて名前を聞くだけで恐ろしいし、満天の星空なんか見た日には卒倒してしまう、と。何かの気晴らしになればと思って、たまたま持っていた文庫の小説を彼に貸した。翌朝、一畳きりの自室で彼はすっかり冷たくなっていた。彼の骨壺はとても小さかった。

長中ちすず(サイトからの投稿)
子供の手を引く父親の背中を見て、泣きそうになった。子の言葉に耳を傾けているその横顔、人間はこんなにも誰かを愛おしい思えるのか。前を歩くふたりは始終幸せそうで、後ろの私は、この広い世界に押しつぶされそうになっている私は、それでもまだ、誰かを悲しませたくはない。

昔懐かし怖いハナシ(サイトからの投稿)
暗い夜に私は走る、誰にも邪魔されない静かな場所へ向かって。寒々とした空気で胸が痛い。空に一番近いその場所で叫ぶ。それでも苦しい気持ちは晴れない。だから、私は凧を揚げた。高く高く優雅に上ってく凧は、好きだった人の想いと一緒に広くて綺麗な宇宙へ吸い込まれそう。子供の時みたいに。 

天海楓(サイトからの投稿)
極夜の北極に来ていた。どこまでも星空が広がっている。ここには雪と白熊と星しかない。星に見られているような気がしてきたね。足音が近づいたのでテントに入る。音がする。ドン、ドン、と。食糧が少ないから白熊を食べたい。もちろん無理だ。テントから出ると星空。星は見飽きた。太陽が見たい。

泉ふく @fuku_izumi
砂糖の様な夢を、目を輝かせて語る者がいた。『もしも世界中の人々が手をとり合い、方舟の様なモノができて、地球から遥か遠く広いソラに"夢"を乗せて行けるようになった時、世界の後ろ向きな争いは薄れるだろうか。地球人という括りで一つになれるだろうか。俺はその景色を観る。それが俺の夢だ』と。

193(サイトからの投稿)
平日の真っ昼間にリビングで寝転がる。だだっ広く真っ白だった天井に浮かぶ小さな染みをふと数えてみる。もういいかしら?と体を起こす。背中で圧縮した袋の中には貴方にもらったセーター。捨てるのは惜しいから染み抜きして出品したら高値で売れたわ。次は隣で伸びてる貴方の引き取り先を探さないと。

1月19日

金平糖みなみ @KonpeitouMinami
「それで、君はどうしたいの。」海のように透き通った目に、心の井戸の底まで見られている。私は、声が掠れる。頬は広く紅潮している。冷やすように風が強く靡く。私は、私は、貴方に、貴方だけの。「...貴方だけの、空気になりたい。」笑った君はより一層美しくて、返事は上手く聞き取れなかった。

蟻の背中 @dayandmore
人を呪う方法。まず、海苔をヒトガタに切ります。呪う相手の名前と生年月日を塩水で書きます。あとは刻むなり、揉むなり、千切るなりお好みの方法で食します。か、なるほど、じゃあひとつ呪ってみるとしますか。お、あれれ?海苔を広げたら手を繋いだ人がたくさん出来ちゃった、やだな職業病。

キミコ(サイトからの投稿)
星が綺麗と、焼け爛れた大地を踏み締め、広大な空を指さし少年が言った。
星が綺麗なことなど、随分と前から知っていたはずなのに忘れていた。いつから私は空を見上げることもしなくなったのだろう。
そうだねと言った私に、いつか星を君に贈ると笑ったこの子は、本当に心などない兵器なのだろうか。

天野砂月(サイトからの投稿)
地面を蹴り上げた瞬間、普段とは力のかかり方が異なることに気付いた。ふわり。身体はたちまち宙に投げ出され、視界一面真っ黒の空が広がった。
砂の上には四点の足跡。その先には直径数キロもあるクレーター。自分を狙う者がいない月という星で「愉快だ、愉快だ」と、兎は心赴くままに跳ね回った。

雫川サラ @sara_shizukawa
駅を下りてしばらく歩いた先に、それは広がっていた。見渡す限りの空、足元から続く緑は随分遠くまで続き、山の稜線に溶けている。視界いっぱいに、それしかない。風が、音をはらんで吹き抜けていく。僕は元素の集合体になり、境界線は解けて調和する。その時僕は確かに、透明だった。

雫川サラ @sara_shizukawa
冬の空はなぜ広く見えるんだろう。空気が澄んでいるからと人は言うけれど、それだけじゃない気がする。広くて、深くて、吸い込まれそうな何かがある。「たまにお前、そのままどこかにいっちゃいそうな顔してる時があって怖くなるよ」それもいいな、と思ったのは内緒にしておかないといけない気がした。

LR(サイトからの投稿)
穴は気持ち悪く伸びていた。小さな穴だけれども十分に進んでいくし、立ち止まることは無さそうであった。狭き道のりでもないけれどこんな穴に誰か住めるのかしら。物思いにふける女に対し「いよいよですね」と男は言った。女は安堵した。暖かみのある広さを知ったその女は広大な雫をしたためた。

三屋城衣智子 @Miyagiichiko
「ただいま」
玄関からリビングへと通じる扉を開く。スイッチをつけるとLEDライトが煌々とだだ広い板間を照らした。机の上には物がなく、まるでミニマリストの部屋のよう。昨日まで下げられていないお皿が無造作に重ねられていたり、床には新聞が落ちてもいた。空気が朝のまま、ヒヤリと頬をつついた。

たかはしまっく @ma0215_2024
堅物でちったあ名の通ったあっしですが、実は、一つ捕り物に片が付くと、必ず春画を買いに行っちまうんです。まあ広重さんのなんかは格別でして。あっしにもあんな春が来やしねえかなんて夢見るわけですが、所詮、下衆のしがねえ十手持ち、春画で心と体躍らせるくれえが、分相応ってなもんでしょね。

たかはしまっく @ma0215_2024
騙されたって気がついたときには、おらはカリフォルニアに着いとりました。アメリカはトイレが広え。母ちゃんのことは気がかりだけど、金がねえからもう帰れねえ。おらは言葉もわかんねえ一文無しのドラ息子。寝るしかねえから寝ることにしました。一人で寝るには公園のベンチが広々し過ぎとりました。

たかはしまっく @ma0215_2024
丘には2頭の山羊が住んでおりました。2頭はすれ違うときに挨拶をするだけの仲でした。たまたま同じ丘に山羊が2頭いただけです。丘には黄色がかった緑の芝が広がり、向こうには薄っすら青みがかった雪景色が見えます。2頭のヤギはそれぞれ丘でご飯を食べ、それぞれ景色を眺めて淡々と生きていきました。

出雲薫 @kaoru_83
いつからか、もう家族と呼べない冷たい関係になった。両親も兄も引きこもるようになり、全て私が世話する生活。ついに疲れ果ててしまった。
もう終わらせる、この手を汚してでも。広いダイニングに家族を集め、眠剤入りの食事で眠るのを確認する。炭を見つめ家族とのBBQの思い出を振り払い、決行した。

出雲薫 @kaoru_83
「愛してる」帰り際に消え入りそうな声で彼は俺に告げた翌日、自殺したという。
彼は社内でも優秀で、同期の俺は悔しい思いもするが誇らしくもあった。よく飲みに誘われることがあったが、今思えばその日の彼の様子はおかしかったかもしれない。俺は彼を追いかけるべきだったのか広い空を見て考える。

出雲薫 @kaoru_83
私は愛しの人を手にかけた。その人は何も言わず抵抗もせずされるがままだった。人だったものを細かくするのは大変だがやりきった。そして愛しの物と夜明けの海へと向かう。「さようなら」そう言って袋越しに抱き締めて、海原へ旅立つのを見送った。私は広い世界をあの人に知って欲しかったのだろうか。

1月18日

川原依子(サイトからの投稿)
怒りで電話を切った。母の死を忘れられたことに腹が立ったのだ。親友だと思っていたから。私は、彼女のことを大体は知ってる。なのに。寒空を見上げていると「大体知っている」が、何なのか分からなくなった。誰かのことを知ってると思った時点でおしまいね。さっきの広美の言葉が頭をコダマする。

川原依子(サイトからの投稿)
瞼がゆらゆらした何かを察知した。目をひらくと、見たことのない黄金の光が部屋に差し込んでいた。そのあまりの神々しさに、天に召すことを覚悟したほどだ。私は恐怖の隣でわずかに心躍らせ、息を呑み、膨らんだカーテンを両手で開け広げた。はっ!露わになった黄金を吸い込むと、色は日常に戻った。

真導(サイトからの投稿)
押し並べて美しかった。世界の果てで覗いた深淵は、広く僕の胸に突き刺さる。発射されるミサイルの軌道は、一千フィート先からはそれはそれは輝いている。目の前の生を見逃しているような、塞いだ想いを打ち上げて発破するあの光。それはまるであのひの様な、近づくと溶ける羽みたいだ。見逃した世界。

狐島風狸 @kojima_novel
いつも夜空へ向かって望遠鏡を覗いていた君。小さな小屋で二人きりで、宇宙のことを教えてもらったり、子供の頃の話をしたり、将来の夢を語ったりしたね。
いつか宇宙に行きたいは君の口癖。私は過去も未来もあるここの方がずっと広いと思った。
本当に君が宇宙へ行ってしまった今、小屋の狭さに驚く。

李都 @litolittlen
親父の背中は広かった。子供の俺がおぶさってもゆとりある背中が好きだった。スーツを着て朝家を出る背中が好きだった。大人になって見た親父の背中はあの頃より小さくなった気がする。俺の大好きだった背中いっぱいに孫を担いで穏やかに笑う。今じゃないとみれない丸まった背中の親父も誇らしかった。

篠崎マーティ @MartyShinozaki
鼻の奥でじわりと広がった熱にも似た痛みに息を止めた。涙が流れないように急いで目を閉じる。
今日、父の茶碗のサイズが一つ小さくなった。

篠崎マーティ @MartyShinozaki
「壊滅的」の看板を誇らしげに掲げられる有様の室内で立ち尽くしたまま、暫く荒い呼吸に身を委ねた。頭が働かない。「えーと」の三文字以外出てこない。喫煙者はこういう時煙草を吸って落ち着くのだろうが、自分は煙草はやらない。床に広がる血と同じ速度で、その場にしゃがみこんだ。

きり。 @kotonohanooto_
祈る。地面が揺れて、火事が起きて、燃え広がって、焼け野原になった、あのときのことを思い出して。祈る。テレビで見た津波のあとにショックを受けて、心療内科を訪れたあの日をふりかえって。祈る。また、火事で黒焦げになる景色を映像で見て、何もできなかった自分を少し虚しく感じて。ただ、祈る。

日下勿忘 @wasurenak
狭い店内は老若男女、犬猫その他諸々の生き物で賑わっていた。カウンターに目を向けるとマスターは目を瞑って空の珈琲ポットを回していた。ちょうど世界の変わり目だったようだ。空のサーバーから湯気が立ち始めた頃、店内は桜に包まれた。「次は日本か」誰かの声がする。世界一狭い店内は今日も広い。

篠崎マーティ @MartyShinozaki
広大なパンケーキの向こう側に君が座っている。甘い香りを放つふかふかの大地の先で微笑む君は、胸やけがする量のホイップクリームを満足するまで乗せていく。白いクリームの山の向こうに隠れた君の笑顔を想像しながら、もしかして僕はパンケーキが嫌いだと伝えそびれたのではと考えた。また。

ナゾリ @Naz0n0vel
「母さんの分はいいから」――それが母の口癖だった。
いつかそんなこと言わなくてもいいように、俺は必死に努力して、それから大人になって、ようやく母にタワマンの一室をプレゼントできた。
本当は母だって、心の底ではこういう生活を望んでいたはずだ。

だから俺に《高広》って名前を付けたんだろ?

いちいおと @oto_ichii
西陽に染まった窓辺には宵闇色の小鳥が降り立ち、いつものように囁いた。「外の世界は広すぎて危険がたくさん。明日の夕方までおやすみ」その晩は月が美しく、つい夜明かししてしまった。初めての朝は新鮮でまばゆく、すべてが希望に満ちていた。さよなら小鳥さん、とつぶやいて、私は扉を開けた。

時南 坊(サイトからの投稿)
廃墟のような集合住宅。
ドアポストに、チラシを挟むように入れていく。
コツ コツ
昼間なのに、広い闇のような空間にボクの足音が響いていた。
シュッ シュッ 背後から足音でない何かの音。
振り返った。すべてチラシがドアの中に消えていた。
目の前のポストから 手が。よこせぇぇ

如月恵 @kisaragi14kei
古い地図を広げると昭和の町があった。幼稚園の園長先生、厳しかったなぁ。小、中学校、高校と順に遠く、高校へは遅刻しそうで毎朝走った。四つもあった映画館、番台のある銭湯、木造教会の古い塔、初めての喫茶店、特別な日のレストラン、塀越しの吠え声、住んでいた家、地図を畳めば何処にもない。

松本玲佳 @reika_eternal
広い宇宙の片隅であなたと出逢った。小さな雀のようにあなたが歌う。あなたが喋る。あなたが笑う。しかし時は残酷にもあなたを終焉へと誘ってゆく。冥府からの手紙が手渡されるとそこに書かれていたのは一行のみ。「白骨化するまで側にいてやれ」私はやがて来るその瞬間を塵としてキャンバスに描く。

真央(サイトからの投稿)
ひしめき合う屋根の作った影は薄暗く、人気のないアーケードを思わせる。車通りから一脱した小路は静寂で満ちていた。妹の手を引く足は一瞬止まりかけたが、すぐにまた歩き出す。この路を抜ければ家の前へ近道できるのだ。屋根々々の隙間から見え広がった、夕空に二人の足音は消えていってしまった。

真央(サイトからの投稿)
敷き炬燵の上の古い新聞は隅に寄せ、新しい朝刊を机一杯に広げる。見出しから記事を目で追う最中、何やら横が騒がしい。見遣ると、小さい孫が剥き終わったミカンの皮で遊んでいた。[よしなさい]そう言い、寒そうに縮こまっている中の実を一つ口にした。仄酸っぱい甘さは冬の朝に、そぐわなかった。

1月17日

夢沢那智 @Nachi_Yumesawa
狭く薄暗い牢獄の底から、男は高窓を見上げた。切り取られた小さな空。
(ああ、広い空の下に行きたい)
そんな彼の願いが、ある日いきなり叶った。連れていかれたのは青空の下の広場。だが男の顔は蒼白だった。
「人殺し!」
「娘を返せ!!」
罵声を浴びせる群衆の真ん中で、絞首台が男を待っていた。

川原わこ(サイトからの投稿)
「広い」と聞いて、海が思い浮かぶのは子供の頃に聞いた歌の影響だろう。母と。そして友と口ずさんだ記憶。行ってみたかった場所は何処だったのだろう。波に揺られ、そこへ向かったのだろうか。コーヒーを片手に、自分の口元が優しく上がったのが分かった。広く大きな景色と出会ったあの人を想像して。

和泉(サイトからの投稿)
玄関を出て右に進むと、中学校の正門に突き当たる。その場でさらに右手を見ると、曲がりながら下へ下へと続く急な坂の向こうに、広い市街地が見渡せた。幼い頃からずっと見て来た、故郷の広さと美しさを感じる風景だ。今私は、愛しいその景色を、杖を持つ父と並んで眺めている。

青塚 薫 @ShunTodoroki
ばら撒かれたパン屑を喜んでついばみにいくと、大き過ぎてついばみ切れない時がある。そんな時はひどくがっかりする。なぜもう少し細かく千切ってくれないのかと腹が立つ。でもこの広い鳩の世界、何も君だけじゃない。他の鳩にとっても日常茶飯事さ。それでも僕らは、ついばまずにはいられないんだ。

イマムラ・コー @imamura_ko
「この広い世界で君と僕が出会うなんて奇跡だね」彼は言う。確かにそうだ。広い世界で偶然出会い結婚へと発展する。まさに奇跡だ。ただ少し離れてみるとよくわかる。世界は無限に広がっている。今いる場所がとても狭く感じた。私の心はどんどん彼から離れていく。本当の意味での広い世界を求めている。

蓬 詩のぶ @shinobu_yomogi
広報部長がまた何か言ってる。スローガンがイマイチ?あんたが変えたやつだろ。ゆるキャラ?今まで何体闇に葬ったと思ってるんだ。なあ、あんたの没企画の数知ってるか?百個だぞ?「じゃあ没になった経緯を集めた百物語を次の名物にする」…?残念、あんたのその狂気も含めて、これで百一物語だよ。

たらこ(サイトからの投稿)
うちの弟は勘違いしてる。何かにつけて末っ子だから!と騒ぐ彼。末っ子には末広がりなんて意味はないんだよ。みんながあんたに期待してるのは、あんたの名前が栄八だから。女だらけのこの家でようやく授かった男の子だから。ああ弟よ、未来に希望を持って生きなさい。姉さんたちのことなど気にせずに。

神谷怜来 @Reira_Kamiya21
長らく帰らなかった家へ、初めて子どもを連れて来た。もう少し広い玄関だと思っていたけれど、記憶より狭い。わ、すごい…と小さな指がさす方には、ひびの入った壁がある。29年前からそのままだ。私は子どもの両肩に手を添え、あの日の話を始める。おそらくはこの先もこのままであろう傷を眺めながら。

スミコ(サイトからの投稿)
雨が降る中、待っていた。とはいえ本当に現れるとは思わなかった。ここからだ。楽しませて頂く。私を敵に回せば恐ろしいと知るだろう。やはり容赦なく突き進んでくる。目を合わせたまま飛んだ。水溜りの跳ね返りを回避。昨日汚された背広は戦闘服となり動揺を与えたに違いない。今宵は美酒に酔う。  

ケムニマキコ @qeiV97pW0x5342
日々は積み上げたって、紙みたいに頼りない。足をつけた地だって揺れて、何もかも涙に流された。彼の方舟は、在りもしない楽園へ旅立った。残された人々は風を食べる生き物になり、僅かに残った浜辺で、海風を待つ。
静けさが広がっていく。
奪い合うものが無くなった世界で、僕らはようやく息をする。

1月16日

秋透清太(サイトからの投稿)
妹との約束を守るため、ぬかるんだ地面の上で丁寧に広葉を折りこんでゆく。上機嫌な妹は跳ねる泥も気にせず踊っている。完成した緑色の舟を水溜りに浮かべ片足を乗せたところで、大地が揺れた。急いで妹の手を取り近くの花に身を隠す。舟や花が影に飲み込まれる。やがて、表情の見えない巨人が現れた。

壱単位 @ichitan_i
拾って、集めて。私はつくる。凍えて街角に座る君の。焼けた野に立ち尽くす君の。壊れた故郷に膝を折る君の。なくしてはならないものを送り出した、君の。それでも消せない、瞳のひかり。忘れないで。あなたは、そのひかりから生まれた。私がつくった、この広い空の星々から。ぜんぶぜんぶの、満天の。

青塚 薫 @ShunTodoroki
じいちゃんは僕を外へ連れ出した。辺りは見渡す限りの田園と夜の闇がどこまでも広がっていた。「花火、上がるで」じいちゃんがそう言った直後、僕らの真上に大輪の花火が打ち上がった。僕は喜びと興奮で、もみくちゃになり目が覚めた。朝の四時半だった。そこにじいちゃんが居ないことが、寂しかった。

田代智美 @satomitashiro8
手が寂しくてスマホをスワイプする日々だ。ふと開いたインスタグラムに満天の星空が流れてきて思わずライクを押す。この世界は広すぎる。特に冬の寒さの中で、私は心まで凍えて小さく小さくなってしまう。小さな画面の中で、私は日常を生きている。けれど確かに私の中に、星空の欠片は残っているのだ。

田代智美 @satomitashiro8
寒波がきています、とラジオが告げる。暖房の効いたあたたかい部屋の中で、家庭用プラネタリウムにスイッチを入れる。仮想の星空の下で、流れ星に願いごとをする。広すぎない部屋でよかった。ここは擬似的な空間だけれど、私の身の丈に合ったお願いを、きっと流れ星が何度も見つけてくれるだろうから。

秦野優 @hatanoy0u
肺がちぎれそうなほど、空気が冷たい。
雪雲はつむじを擦りそうなほど空の天井を低くするのに、冬の星空は夏の空よりずっと遠く、広い。
吐き出した息がレンズを曇らせないように注意しながら、静かな高台で私はひとり、望遠鏡を覗き込む。広く遠い宇宙の光を、望遠鏡は私の瞳に一粒届けた。

松本玲佳 @reika_eternal
別れを告げる時がやってきた。この筆に、そしてまた胆汁に汚され、牛の顔をした人類に破壊された、すべての奇妙な救済事業に。宇宙は確かに広い。しかしわたしの魂を一瞬にして吸い込むブラックホールが残酷な顔で手招くのだ。抵抗するわたしはたちまち赤子に戻され聖母に抱かれてゆく。
夢ではない。

冨原睦菜 @kachirinfactory
手にベタッと塗った絵の具。広げた大きな模造紙を見て子どもたちは、クククと微笑む。さぁ、やってごらんの掛け声を言うが早いか、模造紙の中には可愛らしい花が咲く。こんなの初めてだね。うん、こんな楽しいことがあるなんて!地球っていいね!宇宙人の地球遠足。体験学習は満足してもらえたようだ。

松本玲佳 @reika_eternal
外側から薔薇を眺める。更には書斎一面に文献を広げ、なぜ彼に棘があるのかを熟考し始める。そこで浮き彫りとなったのは「弱さ」だった。泣きながら彼を抱き締めると、私の赤い手の平に、声にならない声と、繊細な心が伝わってきて、何度も何度も命の繋がりを教わったのである。或る寒い夜に。

SZ(サイトからの投稿)
この広い宇宙に何故宇宙人がいないのかが最近、人間の間で話題だ。当の本人(本宙?)である私、宇宙は勿論その訳を知っている。正解は「宇宙は実はそんなに広くないから」だ。私が見栄を張って自分を大きく見せたのだ。だが、人類の科学が発展しすぎてそろそろ誤魔化せなくなってきた。どうしよう。

と龍(サイトからの投稿)
「広く、受け入れる」それがユートピアのマニフェストだった。この永遠の冬が来てしまった世界で、僕らはそれだけを希望に歩いてきたのである。しかし門番は言った。「あなた方はその広いには入らなかった」と。でも僕らは諦めなかった。世界は広いんだ。彼らとはまた違う広いを求めて旅していこう。

蓬 詩のぶ @shinobu_yomogi
「彼女にフラれて…引越しして心機一転したいんです」「でしたら丁度良い物件がありますよ。広々としたリビング、清潔な寝床、お風呂。食事は勝手に用意されますし、片付けも全て住み込みの者が行います」「素晴らしい!住むのに何か特別な条件はありますか?」「お客様が犬になる必要があります」

lango(サイトからの投稿)
「広」という名前だけだ。私は「宙」。互いに伝えたのはこれだけだ。「逢いたいと思ったら?」。「君がそう思って、ぼくがそう思ったら、逢えるさ」。「そう」、言葉を返した。「逢いたいと思うときは訪れるだろうか?」。心の呟きを広の眼に伝えて別れた。炎は消えない。でも、その時は未だ来ない。

蓬 詩のぶ @shinobu_yomogi
「猫の額みたいな家って言われたの」帰ってきた君が呟く。「気にする事ないさ。宇宙から見たらこの星だって猫の額ほどの広さだ」それに本当に猫の額なら、住むのも存外悪くない。僕がごろんと横になり、君もそれに倣う。目を見つめてくすくす笑い合うと、星はまんざらでもなさそうにナァーと鳴いた。

むぎ(サイトからの投稿)
冬が嫌いだ。自分の大切な人を連れて行ってしまうような気持ちになる。
この広い広い世界の中で僕だけが独りぼっちであるとさえ思わせる。
そうだ、どうせこの世界は孤独だ。この白黒の世界に色を付けよう。
嗚呼なんて綺麗なんだろう。美しい。
僕はこんなにも真っ赤な情熱を持ってたんだな。

夜明けごとに透明になる @yorugaowaru1218
「私、カラコンやめたの!」とクリアレンズを身につけた友人が眩しく笑った。「どうして?」と聞き返す私。「真実の目で真実の世界を見たいの。そして、真実の目を愛してくれる人に出逢いたいの。」と言った友人は、閉ざされた扉をこじ開け、広い草原に立って青空を見るみたいに、研ぎ澄まされていた。

1月15日

兎野しっぽ @sippo_usagino
鳴り響く鐘の音に我に返る。そろそろ帰る時間だ。朝までに家を片付けないと、まずいことになる。振り返ると、大広間から出る途中に脱げてしまった靴を、彼が拾い上げていた。
次に会うときまで大事に取っておいてくださいね、王子様。あの家に強盗が入った時間、わたしがお城にいたアリバイの証明に。

茉亜 @hanatoko33
タクトが上がり私はヴァイオリンを構えた。誰かがオーケストラを一つの船と言ったのは上手い喩えだと思う。指揮者は灯台、夜空の北極星。譜面の地図に描かれた航路は凪いだ美しい蒼海も、猛り狂う嵐の海も渡る。私は振り落とされないように必死に弓を振るう。その先に広がる景色を皆と一緒に観るために

三上宥 @RANDAMHAJILE51
静謐の暗澹に輝く星屑達。その趣に惹かれ自然と腕を伸ばす。だが、清澄の硝子天井はこの玉響の如き逢瀬の邪魔をするのだ。「今から行くんだよ」広遠の君は幼子に聴かすように、長閑やかに囁くと私の手を握り締めた。湿って冷ややかで、悴む指先。霞みゆく冬空に伸ばした腕は、頓て力なく虚空を掬った。

狐島風狸 @kojima_novel
どこまでも広がる海。降り注ぐ陽の光。
ブルーに輝く波にプカプカ揺られていると、自身の悩みは大したことではない思えてくる。
南の島へバカンスに来られたことは良かった。会社の皆はどうしてるだろう。なんだか申し訳ないな。
隣で肩を寄せ合う妻が囁く。
「そろそろ、岸に戻る方法は思いついた?」

時正時雨 @Sakura_stella03
寂寥を孕むギターが私の耳に語り掛ける。
歩道橋の上でマフラーを掛け演奏している彼が、そこにいた。私を捨てた癖に、とか、こんな雪が振っている中で、とか言いたいことは沢山あったはずなのに彼のギターケースにお金を入れて「良かったよ」と呟いた。私の中の世界が、少し広がったような気がした。

ひづきゆら @hi_zu_ki
はいっ!「広」が付く駅名3つ答えて!

突然始まる駅名クイズ
慌てて広島!と答えた後が出てこない
まだたくさんあるはずなのに…
結局答えられたのは広島だけ
後から帯広や末広町とか思い出してももう遅い

そろそろ風呂掃除の当番をクイズで決めるのやめないか?

宮川ヌエ @mi8kawa
迷い込んだのは深い夜だった。空には大きな月が輝いて、雪原を照らしている。あまりに綺麗な光景だった。いっそのこと、ここに住んでしまおうか。いや、私には家族がいるし仕事だってある。早くここを抜け出して、パンにジャムを塗り広げる見慣れた朝まで行かなければ。私は七時に向かって走り出した。

いちいおと @oto_ichii
事あるごとに母からきつく叱られた。心のなかに広くて深い引き出しを作り、弱音はすべてそこにしまいこんだ。母の古い友人は「春風のように温かいひとだった」と言う。そのやさしさをひと欠片も感じたことがない私は、母の死を受け入れるため、遺品の整理より先に心の片付けに取りかかろうとしている。

糸遊羅船 @ark25BASALA
霜の原っぱ。天窓の外に見える世界。あの広いソラのもと、僕は今日も独りぼっち。干渉のない安堵と共に、血の気の引く薄ら寂しさ。冷めきった部屋を訪ねるのは、少しお節介な妖精だ。放たれた眩しい陽光に射貫かれる。猫舌だけど、朝の1杯は恋しくなる。布団を抜け出し、蒸気の竜の子の誕生を
待つ。

白山すもも(サイトからの投稿)
果てしない宇宙。広大な銀河。ぼくはとある惑星にたどり着いた。そこには雪が一面に広がっていた。近くに見たこともない生命体。それは徐々に人間の体になっていく。あなたは…その時太陽が昇り始めた。太陽は雪の結晶をキラキラと照らし出した。「好きだよ」目の前の推しからの告白。そんな夢だった。

保健委員 @vwJMTGNCVgUrtAO
ここは、こんなに狭かったのか。呆然とした。幼い頃、住んでいた付近を偶然通りがかって、当時「広場」と呼んでいた空地を三十年ぶりに眺めた時のことだった。あの頃はここが全てだった。近所に遊び相手が沢山いて、喧嘩と仲直りを繰り返す毎日だった。彼らは今どうしているのか。ふと知りたくなった。

万里 @Banrixx
君は冬の夜空を見上げながら嬉々としていう。「あの星とこれをつなげると、ほらオリオン座よ」有名だからあなただって知っているでしょうという君の指先を見つめて僕は思う。君の世界はきっと宇宙のように広いのだろうけれど、僕の世界は君がなぞる指先の広さだ。でもそれで十分なのは君が隣にいるから

阿部暁(サイトからの投稿)
僕は嫌な事があるといつも海に来る。春も夏も秋も冬も、海の姿は変わらない。今日の僕は無力だ。仕事中の不注意が、大きなミスに繋がった。このまま居なくなってしまおうか。そんな邪念を振り払うように、海は一定の間隔で波打つ。自分の悩みを忘れてしまうほどに、今日の海はあまりにも広かった。

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