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#1一緒にととのいませんか?


僕はまた人知れずととのっていた。


ここは何処にでもある町中のThe銭湯。八坂温泉。
日々の疲れを癒すため、通う常連も多い。
お年寄りから小学生まで老若男女問わず気軽に通える。
入り口の大きく、渋い暖簾。その暖簾をくぐり、靴を入れ中へと進む。

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入り口を開けると、いつも元気と変わらない元気な声で
「いらっしゃ~い!」
おばちゃんほんとにいつもニコニコして元気だな。元気もらっちゃうよ。
ほせを  「サウナ空いてる?」
おばちゃん「空いてるよ~暇やねん!!」
ほせを  「じゃあ、サウナ付きで!」
おばちゃん「ほな、ぼくは440円と200円で640円ね!!」
僕は今年で27歳なんだけどな。おばちゃんから見るとまだまだ子供か。
ロッカーキーとサウナキー、バスタオルを受け取り中脱衣所へ男湯の暖簾をくぐる。

着替えをさっと済ませ、いざ浴場へ。
一面タイル、固定されているシャワー、寝湯や電気風呂。
これこそThe 銭湯である。
身体を清め、少し湯船で体を温める。
そうすることにより、1セット目のサウナで効率よく発汗できる。


さぁいよいよサウナへ。
銭湯のサウナは別料金にて有料の場合が多い。
そのため、サウナ室の入り口の扉には取っ手が無く、
小さな穴が開いており、そこに番台で受けっとったサウナキーをひっかけ開ける仕様になっている。
そして、サウナキーと共に受けとったバスタオルを腰に巻くのもマナーである。汗が床等へ垂れ流さないためだ。

サウナ室へ入ると先客がひとり。

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入れ墨の入った40代くらいのおじさんが。しかも読書してる。
こういった下町の銭湯はいい意味でルールが緩い。
入れ墨入ってたらいろんな銭湯行けないもんぁ。僕は絶対入れないぞ。
すこしおじさんと間隔をあけ座る。
テレビは世界遺産の紹介が流れている。
サウナの温度は90℃くらい。湿度もちょうどいいのか吸い込んでも気道が痛くない。
やっぱりサウナは気持ちがいいなぁ。
汗かくだけでなんかめっちゃ体に良いことしてる気分になるもんな。
僕はじっと時間と汗が流れるのを静かに待った。


4分くらい経った。
汗もいい感じに出てきた。
気持ちがいいなぁ。
なんて考えていると

入れ墨おじ「え!!いま何時!?」

うわ、話しかけられた。思わぬ展開。

ほせを  「え、ええっと。7時くらいです。」
入れ墨おじ「まじか!おれ5時から居んねん!!」

思わぬ展開に動揺しつつ、あ、この人もサウナ好きなんだなって思って嬉しくなった。
入れ墨おじさんも少し微笑み、サウナ室を出た。
サウナ入って水風呂入って休憩を繰り返していると、
びっくりするほど時間が経つのが早い。
さて、自分ももう少し。

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12分しっかり汗を流した。
うむ、鼓動も早くいい感じ。
サウナ室からでて水風呂へ。
桶で水を汲み、体に掛け汗を流す。
冷たいからと躊躇してるとせっかく温めた体がもったいない。
右肩、左肩、そして頭にかけ入水。

これもまた気持ちいいんだよな。
入って数秒は冷たいが、じっとしておくと体の表面に温度の膜ができる。
これをサウナーの間では『天使の羽衣』と呼ぶ。
こうなると無敵状態。不思議と冷たくななるのだ。
体育座りでじっとしておく。
僕のスタイルは耳まで浸かることが多い。
こうすることで頸動脈まで冷やすことができ、効率よく全身のクールダウンを加速できるのだ。
もう一つの目的は周りの音をシャットダウンすること。
自分の鼓動を聞くと気持ちがいい。とてもリラックスできる。

じっと、水風呂でも2分時間が経つのを待っていると、
水風呂で遊びたかったのか小学生が二人のぞきに来た。
そして僕を見るなり、にやにやしてその場を去っていった。
大の大人が、鼻から上だけ浸かってじっとしているのが面白かったのだろうな。
僕は動じることなく、じっと水風呂の中で体育座りを続けた。

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水風呂から出ると、体についた水滴を丁寧にふき取る。
体の急激な冷えを防ぐためである。
僕は銭湯では脱衣所で休憩することにしている。
脱衣所の中央の椅子に腰かけその時を待つ。
クーラーが効いてて気持ちがいいな。
目を瞑り、じっとする。

ゆっくり脈を打っていた心臓が徐々に早くなる。
全身の血管が広がり、一気に血液が全身に運ばれる。
脳へ酸素が流れる。

クラクラする。
僕の重心どこいった?
ぐわんぐわんする。



そして・・・

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「ととのったぁ~~」

ディープリラックス!
多幸感!
宇宙!

サウナーはこの瞬間を求めてみな同じ動作を繰り返すのだ。
僕もその一人。
これが合法だなんて。きまるぜ~。
なんで全国民がサウナしないのか。
まぁサウナが社会現象になり、混雑になるのはごめんだ。

にしても気持ちいいなぁ~。


ととのいに浸っていると、

「あら、見ない間に大きくなったねぇ~」

女風呂の脱衣所からアニメでありそうなやり取りだ。
こういうのも下町の銭湯って感じで良いよなぁ。



しっかりと3セットを終え、更衣を済ます
そしてもう一つの楽しみのドリンクへ。

オロナミンCとポカリスエットを購入。
サウナーの間ではこの二つを混ぜたものをオロポの愛称で親しまれている。

おばちゃん「ぼくは、120円と150円やから、270円な!」

僕、27歳なんだけどな~。まぁいっか(笑)
そんな思いをオロポと一緒に飲み込んだ。

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風が気持ちいい。
良い季節になったな。
これからもますます、サウナに行くことになりそうだ。


つづく。

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