コソドロの現実逃避

おれは盗人。

飼い猫のくーちんが死にそうだ
綺麗な茶と黒の三毛猫
その模様の中に吸い込まれそうなほど、
わたしはくーちんそのものとなっていた

くーちんには食べ物が必要だ
ビー玉みたいなまあるい目で
わたしをみる雌猫
うねる尻尾がまるで蛇のようで、
長いものにはまかれたいと思う程に
愛していた

満月の夜中、
盗んだものたちと共に、
唐草模様のふろしきに包まれるくーちん
盗人の背中にもたれ、
さみしく息絶えるのか
それとも満月の優しい光りを浴びて、
なんとか生き延びるのだろうか

駆け抜けるスピードは速く、
わたしの息こそ絶えてしまいそうに
なるほどであった

そんなわたしのことを見ているのは
唯ひとり、
きいろい無口な月
月光のスピードは
駆けていくわたしの速さよりも
今日だけは遅い

せめてその月さえ 
くーちんの息絶えるそのときを
教えてはくれないのであろうか

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