あいつの挑戦

"あの人"の言葉を、うけて

「挑戦の勇気はどこから湧きますか?」

その問いに答えがあるのか、僕にはよく分からない。

ただただ、人の役に立ちたくてそのために挑戦が必要だった。
このままの生活を続けていくとヤバい…そう思って現状を変えようと思った。

動機は他にもたくさんあるんだろうなと思う。
確実なのは、ただ一つの答えがあるんじゃない。
人それぞれに、挑戦への自分なりの心掛けがあるのだということだ。

僕には、どんなこだわりがあるんだろうか。



『メジャー』というアニメが好きだ。

並外れた身体能力と泥臭さを持つ、野球バカ(尊敬の念を持った意味で)の茂野吾郎が主人公の野球漫画。

ちょうど大谷翔平選手が有名になりつつあったとき、しばしば"リアル茂野吾郎"と称されていた。
まさにその通りのとてつもない野球センスの持ち主だ。
実際は大谷選手の方がマンガ級の活躍をされているのだけど。

何はともあれ、茂野吾郎はすごい。
だけど、本当にすごいのは彼の”人間としてのたくましさ”だと思う。
それは僕が何より好きな、彼の個性でもある。




失せろ、最後まで闘う意志のない奴に用はねえ

高校最後の夏の大会、1回戦。
コールド負け寸前の中、彼だけは諦めず前を向いていた。
どうせ負ける、と諦めムードのチームメイトを押しのけ、吐き捨てるようにそんな言葉を浴びせた。

どうやら闘志はチームメイトに伝染するようで、試合には逆転勝利した。

だけど、小学生の僕には綺麗ごとのように思えた。

吾郎はすごいけど、どうせマンガの世界の話でしょ?

どこかひねくれた思いを抱えていた。


最近、『メジャー』を改めて見直した。
どういうわけか、吾郎の言葉、一つ一つに重みを感じるようになっていた。

あの場面もそうだ。
最後まで諦めなかったら、なんとかなるかもしれない。
まさにその通りだ。

ストーリーの続きにも見入った。
吾郎のチームは苦戦しながらも勝ち上がり、準決勝。
『海堂学園』という超強豪と対戦することになった。

天候はあいにくの雨。

途中、4点を追う場面で土砂降りになり、再試合もありえた。
そのシーンで、再びハッとする言葉に出会えた。

4点差くらいで諦めるような俺たちなら、再試合したっておんなじだぜ。

また後日、再試合でやり直せばいいか。

そんな気持ちが1mmでもあるなら、再試合したって勝てやしない。
少しの油断や緩みが命取りになるんだ。

誰よりも真剣に"野球"というものに向き合ってきた彼。
発せられる言葉には、そういった意味深さが込められている気がした。

そして、"俺たち"という言葉に、何よりも胸を打たれた。

1回戦で”諦めた者たち”の烙印を押された彼らはもういない。

どんなに苦しくても、諦めなければ希望が見える。
胸に刻んだその想いが、どんな達者な言葉よりも、強烈に伝わってきた。

その後雨は上がり、海堂学園らしからぬプレーが絡み、1点差まで詰め寄った。

1点差となるホームを踏んだ吾郎は、海堂学園のキャッチャーに向かい、不敵な笑みを浮かべながらこんな言葉を放った。

わりぃな、棚ぼたで。

諦めなければ、なんとかなる。
本当に棚ぼただと思っているのか、彼に聞いてみたかった。



僕には、吾郎ほどのたくましさは無い。
だからこそ彼に憧れるのだ。

自分に無いものを持っている人はかっこいい。
かっこいいと思うから、憧れて、近づこうとする。

”お前、それでいいのか?”

何かを諦めようとしたり、勇気が出ないとき、そんな言葉が頭の中に響く。
それでもやっぱりできないこともある。
情けない気持ちになった。

でも、それをバネにして、強くなっていけばいいことも知っている。
いつか、頭の中に同じ言葉が響いたとき、僕がどうなっているか。

それは、茂野吾郎への挑戦でもあるのだ。




自分で挑戦できるのなら、それが一番いい。

ただ、そんなに上手くいかないこともある。
背中を押してほしい時だってあるし、勇気が出ないときだってある。

そんなとき、誰かの言葉が自分を助けてくれる。
僕にとって、それが"茂野吾郎"だった。


あなたにも、"あの人" の言葉に感化されたこと、ありますか?








(余談だけど、『メジャー』と大谷選手を並列で語ることが多い。)


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