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復元の意志 - The Restoration Will -
東京都写真美術館に足を運び、企画展「あしたのひかり 日本の新進作家 vol.17」を鑑賞した。
コロナ禍だが、東京都内では多くの企画展が再開されるようになっている。入り口での検温や入場制限など感染防止対策がしっかり行なわれている。アートに関わる人たちの想いや日々の努力には頭があがらない。
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そんなタイミングに合わせたかのように、それぞれの写真家が「あしたのひかり=希望」を示している。新進作家の企画展という触れ込みだが、2018年度に木村伊兵衛写真賞を受賞した岩根愛さんをはじめ、既に第一線で活躍している方も多く、ズシンと身に染みる質の高い作品ばかりだった。
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その中で圧倒的に心を打たれたのは、鈴木麻弓さんだった。
彼女は東日本大震災で両親を亡くしている。宮城県女川町で写真館を営んでいた父が使用していた暗室が奇跡的に残り、泥にまみれたカメラとレンズを取り出して撮影したのだという。
カメラは光量の多い日中には正常に動作せず、日が沈んだ夕方以降に撮影が可能になるという。撮影当時の空気感や、出来上がった薄暗い写真のことを「犠牲になった人々との対話」と鈴木さんは表現している。
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鈴木さんが持ち合わせて「しまった」物語は重い。
彼女に限らず、当時の震災を(その影響の多寡はさておき)経験した人にとって、東日本大震災と関わる作品には特別な感情が移ってしまう。
彼女が出版した『THE RESTORATION WILL』という写真集(アーティストブック)には、姉とのやり取りが記されている。
姉:町はものすごかったよ。何もないんだもん。
私:どういう意味?
姉:全部の避難所に行ってみたんだけどさ。
私:それで?
姉:ふたりとも見つからなかった
(中略)
姉:あんたも壊滅した町を見たらわかるよ。残念だけど、私はふたりがもう生きているとは思えない。
(鈴木麻弓 写真集 『THE RESTORATION WILL』より引用)
大切な肉親の行方が分からなくなったとき、どんな手段を講じても「見つけ出したい」と思うのが普通だろう。
しかし彼女の姉は「ふたりが生きているとは思えない」と早々に判断している。それほど被害が大きかったのだろう。そのとき、間近で見つめた壊滅の様相を、僕はきっといつまでもイメージできないだろう。
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「あしたのひかり」は希望だ。それは鈴木さんも例外ではない。
彼女はきっと「あの日」を悲観的にだけ捉えていない。「復元の意志」という希望と共に、彼女が大切にしようとする / 大切にすべきものの在り処を示唆しているのではないか。当事者として、彼女はその責務を進んで受け入れている。
その強さに、きっと多くの人が普遍的価値を感じるはずだ。
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多かれ少なかれ、コロナ禍で日常の「何か」は失われてしまった / 止まってしまった。その事実に背を向けて、未来のことばかりに目を向けて「ニューノーマル」「ウィズコロナ」などと語るのは時期尚早ではないだろうか。
まずは痛みを受け止めて、ゆっくりと意志が生じるのを待ちたい。鈴木さんの「復元の意志」は、時間というモノサシがいかに代替し得ないかを感じさせてくれた。ぜひあなたにも感じてほしい。
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なお、東京都写真美術館では企画展「森山大道の東京 ongoing」も開催されています。森山大道さんは齢80を超えてなお、毎日のように東京で写真を撮り続けているそうです。
何でもない日常が力強くフォーカスされ、日常と非日常の境目が曖昧になります。その刹那を切り取れる稀有な表現者の「いま」も、併せて体感いただくことを強くお勧めします。
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