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何かを偏愛できることの尊さ

一つ前のエントリで野球愛(中日ドラゴンズへの愛)を語ってしまったが、実は気軽な想いで発信できたわけではない。それなりの躊躇があり、何度も筆を置こうとした。

「誰にでも共感してもらうことなどできない」「一部の人にしか届かない価値もある」と、もっともらしく綴ってはみた。だけど僕にだって人並みに承認欲求がある。周囲の人に伝わらない野球の話を延々してしまうようなオジサンよりは、米津玄師さんの『Lemon』を歌えるようなnice guyでありたい(最大公約数で受け入れられる例として『Lemon』を挙げたが、今もなお『Lemon』が巷で支持されているかは知らない)。

中日ドラゴンズのことを語るのは、カミングアウトのようなもの。少し大袈裟かもしれないけれど、何となく気恥ずかしい部分もある。

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だけど最所あさみさん、虫明麻衣さんが企画された #BaseBallTalk のイベントに参加して、それがいかに一面的な見方であると思い知らされた。「偏愛」は素晴らしい、尊いもの。参加者の皆さんに勇気をもらった気がする。

イベント会場は外苑前のピースオブケイクさんのオフィス。カバー写真にある通り、野球フリークな皆さんが贔屓のチームのユニフォームを来て集う。それだけでも十分ワクワクしていたが、主催者の皆さんの至れり尽くせりのおもてなしに感動してしまった。チームカラーを表現したウェルカムドリンク、ユニフォームコーデポートレート撮影の準備、プロ野球12球団+メジャーリーグユニフォームコーナーの設置など。まさに気分上々↑↑、カマせDJ、針落とせ音鳴らせパーリナイである。

最所さん / 虫明さんのオープニングトークから始まり、LT枠9名の野球プレゼン、懇親会という流れの中で、誰一人として「嫌い」な方向に話を持っていかなかったのが印象的だった。「「嫌い」なことに時間を費やすなんてもったいない!」とばかりに、贔屓のチームへの愛を語っていく。

僕は不覚にも、何度も声を出して笑ってしまった。
誰しも、偏愛へのアプローチが似通っていたから。

強いチームであれ、弱いチームであれ、どのチームも何らかの弱点を持っている。その弱点は裏を返せば愛すべきポイントなわけで。

例えば2018シーズンでセ・リーグ二位の成績を収めたスワローズは、2019シーズンで59勝82敗2分、五位のドラゴンズとゲーム差9という「ぶっちぎり」の最下位に転落してしまう。だけどファンの皆さんは「来年は新加入の選手で計35勝できる」「とにかくシャイなてっぱち(山田哲人さん)が愛おしい」「16連敗した辺りで、選手がめげずに球場に足を運んでくれるのが素晴らしいと感じた」などなど、愛に溢れた言葉のオンパレード。自虐の側面もあろうが、野球愛の真理を突いているような気さえする。野球の話をしに来たのに、哲学談義をしているみたいだった。(←ちょっと後付け)

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僕はプレゼンの中で「実は最近、昔ほど熱心に野球を観れていない。プレミア12に選出された周東さんのこと良く分かっていない」と話した。すると懇親会(懇親会後のSNSも含めて)で、周東さんのことを熱心に教えてくれた方がいた。そんなにも「偏愛」のエネルギーをいただけたならばチェックしてみるしかない。そう思って動画を覗いてみると……

なんですか!この人は!

中学時代に僅かながら野球を齧っていた身としては、三盗はおろか二盗だって難しいと知っている。ピッチャーとキャッチャーが警戒するのはもちろん、守備陣もしっかりランナーにプレッシャーを与えてくる。足が速い選手なら尚更だ。執拗に牽制球を放られれば当然疲れる。世間では「足が速い=ピッチャーにプレッシャーを与える」がポピュラーな見方だが、そんなに単純なものではない。山田哲人さんの盗塁成功率が「.917」と取り上げられたこともあるけれど、2019シーズンで最もチーム盗塁数が多かったライオンズでさえ年間の盗塁成功数は「134」と試合数よりも少ないのだ。牽制が苦手なピッチャー(外国人投手に多い)がいたり、どうしても送球が間に合わないケース(変化球を投げた、キャッチャーの送球がズレた、ベースカバーが遅れた等)があったりとを鑑みると、盗塁とは決して走者有利ではないと分かってもらえると思う。なのに……

なんですか!この人は!

本日のプレミア12の中でも、周東さんの「足」が勝利に結びついたのは明白だ。世界が注目する舞台で、二盗、三盗をいとも簡単に決め、スクイズでしっかりとホームに到達する姿に、心を掴まれない野球ファンがいるだろうか。

そんな周東さんのことを、いち早く教えてくださった方々には、本当に感謝しかないです。周東さんのことを前もって注目していたおかげで、周東さんの活躍を(にわかですが)とても嬉しく思えたし、何なら周東さんをご存知ない方にも「周東さんっていうのはね、東農大から育成契約でホークスに入団して、2019年に支配下登録されて一気に日本代表に選出されるようになった人なんだよ」って紹介できる / したいほどになっている。

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偏って愛する=偏愛。

考えてみれば、僕らは無条件で何かを愛することは少なくなっている。年齢を重ねるにつれて色んなことを知るからだ。

僕が大学生のときに夢中になったロックは、実はOasisやRed Hot Chili Peppers、The Prodigy、Guns N’ Roses、Redioheadなど1990年代のロックに影響を受けている。彼らとて旧くはThe Beatles、Queen、The Beach Boysなどの音楽に影響を受けた(直接的に、そして間接的に)。

唯一無二のオリジナリティなんて滅多になく、先人の足跡を辿りながら現在に至っている。それ自体は悪いことではない(むしろ、あるべき姿だ)。だけど大学生のときに夢中になったロックは、僕がそれまで聴いていた音楽とは一線を画したものばかりで、何というか、無条件に愛せたものばかりだった。それは「知らなかった」ことが由来していたんだと思う。

知ることはとても大事な武器だが、知らないことは原動力になる。だからこそ何かを偏愛できることは、尊いと思うのだ。

偏愛できる物事、あるいは、偏愛するという姿勢。

それらをなるべく隠して生きようとする(表に出さないよう抑制する)ことは、大人のささやかな処世術であることは認める。認めざるを得ない。

だけど真剣に思うのだけど、そんなささやかな処世術を携えて生きるだけの人生は面白くないはずで。偏愛できることが尊いと感じるのであれば、そして偏愛している物事が手近にあるのであれば、それを思いのままに伝聞していった方が良い。

#BaseBallTalk は、きっと偏愛主義者の集まりで、だからこそとても幸福な空間だったのだ。そして最所さんのnoteに書かれていたように、

こうして見るともはや私はどこファンなんや…という感じが否めませんが、球団の垣根を超えて推し選手をもつのもまた野球の楽しみ方のひとつ!

2020年もまた、好きな人たちの背中にパワーをもらいながら、がんばっていきたいと思います。(最所あさみさんnote「2019年、今年も野球は私たちの生きる糧だった #BaseballTalk 」より引用)

そう。
偏愛とは尊いものだし、日々を生きる糧になるものなんだ。

一喜一憂もするだろうけれど、日々を生き抜き、なんだかんだ楽しんでしまえる人生になることが重要なわけで。これからも「偏愛」というスイッチを大切にしていきたい。今後とも僕の「偏愛」にお付き合いいただけると嬉しいです。

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↑(まさかの根尾昂さん被り)↑

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#BaseBallTalk のマガジンも興味あれば、ぜひご覧ください。「偏愛」が尊いかどうかは別にして、想いの熱量は相当だと保証いたします!

『気分上々↑↑』と書いて懐かしくなって動画検索してみたら、H ZETTRIOがとてもHappyな気分にさせてくれる楽曲をリリースしていた。これもあなたの偏愛に響くのなら最高だ。


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