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おもろい高校がないように、おもろいスナックもない

2011年に芸能界を引退した島田紳助さんは、とことん「発信」する側の人間だった。

お笑い芸人やテレビ番組のMCを担う他に、サイドビジネスに精を出していたことは有名だ。「お金儲けに敏い人」と書くと誤解を招きそうだけど、自らのアイデアを、漫才なり話芸なり、商売の形なりに「発信」するのが好きだったのだろう。

2007年に刊行された紳助さんの著書『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する』は、彼の経営哲学が余すところなく記されている。一般的なビジネス書と一線を画すのは、プロとして「面白さ」を突き詰めた紳助さんだからこその説得力を宿している点だ。

──

僕が好きなのは、紳助さんの「おもろい」に関する考え方だ。

話はちょっと脱線するけれど、僕は夜中に友達と遊ぶとき、銀座のクラブみたいな、横に女の人が座る店にはめったに行かない。変な言い方だが、あれは向こうがこっちを楽しませようとする場所だから、僕には面白くもなんともない。役に立たないなあと思う。
(中略)バーとか居酒屋で、友達と話していた方がよっぽど面白い。もちろん若い頃は友達や後輩と飲んで騒いだけれど、そういうときはよくスナックに行っていた。
あの頃、僕が作った名言がある。
おもろい高校がないように、おもろいスナックもない
僕の高校時代の教室はいつも大爆笑だったけれど、それは高校そのものが面白かったわけじゃない。自分たちでバカをやって、面白くしていたのだ。同じように街のスナックに行って、ただ座って飲んでるだけじゃ面白くもなんともない。そこで爆笑して帰るには、自分たちで何かを考えなきゃいけない

(島田紳助(2007)『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する』幻冬舎新書、P81〜82より引用、太字は私)

この本が刊行された2007年は、僕がちょうど社会人になったときだ。

仕事で悩むことが多かった僕が学んだのは、『プロならば、『面白い』は自分自身で作らなければならない」という矜持だ。

それ以来、極上のエンターテイメント施設に足を運んでも、素晴らしい映画を観ても、どこか他人事のような気持ちを抱くようになった。より正確に言うならば、「この『面白い』を認めたくない」という嫉妬にも似た感情である。おれなら、もっと面白いものを生み出せるはずだと、仕事をする上での原動力になった。

おもろい高校はないし、おもろいスナックもない。

同じように、プロが心の底からおもろいと感じるエンタメなんてないはずだ。プロならば、自分で「おもろい」を生み出さなければいけないのだから。

年度末に、久しぶりに本書を再読できて良かった。世間的には新年度、紳助さんの矜持を頭の片隅に留めながら、また明日から「おもろい」仕事に打ち込んでいきたい。

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