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短編映画「玄関から」〜家族の「いま」と「これから」を想像させること〜

久々に育児日記を書いた。
それに付随して、最近観た短編映画「玄関から」のことをポストしてみようと思う。

縁があり、三連休に開催されていた東京ウィメンズプラザでの上映会に出向くことができた。あらすじは以下をご覧ください。

都内で暮らす専業主婦の浩子(35)は、夫(41)の靴磨きをするのが日課。暮らしを大事にしながら、二人の子育てをする一見絵に描いたような幸せな日々を過ごしているが、唯一気になるのは夫の上から目線。ある日、夫の女性を見下した態度を、息子が真似している場面にでくわし、危機感を感じて働き始めることを友人に相談するが、浩子が見下されるのは収入の問題ではなく、気持ちの持ちようの問題ではないかと言われてしまう。そんな折、娘が突然「東大を目指す」と言いだし、娘の東大合格を応援する教育ママに変身。東大に合格させるためのノウハウをあれこれと実践する中、いつものように浩子が慎一の靴を磨いていると、霞が靴磨きを止めに入り…(Peatixのイベントページより

「靴磨き」が象徴的しているもの

僕はビジネスパーソンとして都内で働いているが、現職は殆ど私服で通勤することが多い。革靴を履く機会も限られているが、前職ではスーツ着用が義務付けられていたこともあり革靴を履いていた。
なので「靴磨き」はやらなくちゃいけない行為の一つ。僕は革靴が好きではなかったので(蒸れるので)、靴を磨くのは苦痛でしかなかった。一般のサラリーマンはどうなんだろうか。

僕の友人は「自分の家での役割の一つに、夫のシャツのアイロン掛けがある」と言っていた。それを聴いて衝撃だった。友人は二児の母で、かつ普通に企業勤めもこなすビジネスパーソンだからだ。彼女のFacebookを見る限り、海外出張も含めて、本当に忙しなく動いている印象がある。その合間を縫って、夫のシャツのアイロン掛けを担っているという事実に、衝撃であり驚愕だった。(ちなみに、友人の夫のことも良く知っています。超いいやつです。笑)

なお、僕はアイロン掛けは結構好きだ。
週末に溜まっている分のシャツ(Tシャツを含む)をがさっと目の前に置いて、音楽を聴きながら(あるいはYouTubeを観ながら)シワを伸ばしていくのはなかなか楽しい。アイロンから放たれるシューシューという蒸気の音も、余裕があれば気持ち良い。

だけど多分、忙しい現代人にとって、靴磨きやアイロン掛けといったタスクはなるべく避けたいというのがマジョリティだろう。
他人のものを手掛けるなんて、以ての外だと思う。それがたとえ夫婦のものであったとしても。

短編映画「玄関から」にとって、靴磨きは主従関係の象徴のように描かれている。働きに出て稼ぎを得る夫と、家で家事全般をこなす専業主婦の妻。毎朝律儀に靴を磨き、「いってらっしゃい」と声を掛けるも、生返事しか返さない夫。「お前の取り柄は料理だけだ」とさも小馬鹿にするような発言は、演技だと分かっていても不快だった

一言で表すなら「嬉しい作品」

ネタバレにならないように気をつけたいが、前半は主従関係の象徴だった靴磨きが、終盤はGIVE & TAKEの象徴のように描かれるようになるのは面白かった。主演の黒澤リカさんが演じる浩子が、コミカルに立ち回りを変えていくのは爽快で、短編映画ならではの急展開でも共感を離さなかった

「男女」
生物学的にはたった2種類しかない、この違い。
健全にあゆむことができれば、お互いの違いも認め合って、強みと弱みを補完し合えるしなやかな関係にもなれるはずだ。
だけど、積み重ねていく価値観が歪めば(敢えて「歪む」という表現を使いたい)、歪んだままの関係を「普通」だと思うようになってしまう。人間の身体のように、日々の小さな歪みはあんまり感知されないものだから、「歪んでしまった」という状態になる頃には手遅れになってしまう。

本作では、歪んでしまったところからのスタートだった。
エンディングでの黒澤さんの笑顔に誰もが救われる。そんな「嬉しい作品」だったなあと思うのです。(同時上映された「仮面夫婦」も夫婦や家族、社会を描いた作品で見応えがありました)

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