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相次ぐ「ばらまき経済政策」に反対する/2022プレミアム商品券(紙商品券)は予算計上の約半分が発行事務経費

ばらまき型の経済政策が続いています。表面的には「お得」にみえます。

しかし、合理的でないバラマキ経済政策を選択すると、間接経費が激しく積み上がるのです。費用対効果なども考慮し、今後は再考が必要です。

●ガソリン税を集め、それを石油元売りへの補助金にそのまま戻すのなら、単に制度を複雑にしている(間接経費が膨らむ)だけなのです。

●原油高騰への対応なら、石油元売りへの補助金ではなく、ガソリン税の一部をシンプルに減税(税率調整)したほうが余計な間接コストがかからないはずなのですよね。

●その場しのぎで「ばらまき」を続けていても将来展望はなく、むしろ取組の遅れているDX(デジタルトランスフォーメーション)を着実に前に進めること、さらにニーズの高い成長産業への投資・労働移転を後押ししていくことが必要です。

●2022杉並区プレミアム付商品券(紙商品券)も、予算計上の約半分が発行事務経費となっています。ワンショットのばらまきを繰り返すのではなく、将来投資につながる展開へと転換していくことが不可欠です。


2022プレミアム商品券(紙商品券)は予算計上の約半分が発行事務経費


例えば、杉並区で一般会計補正予算(第4号)に計上された「プレミアム付商品券(紙)の発行」予算2億2889万円の内訳は「プレミアム還元1億2千万円」+「発行事務経費1億8百万円余」でした。

杉並区一般会計補正予算(第4号)に計上された紙商品券の経費内訳


なんと約半分が間接経費なのです。

今回の紙商品券は、2023年1月に申込受付を開始し、2月に販売、以降5月までを使用可能期間として実施されることになっています。

この紙商品券は、区の単独事業(国都支出金のない区全額負担)で実施するにもかかわらず、これほどの大盤振る舞いが行われるのは、おそらく2023年4月の統一地方選挙(杉並区議選)を意識したものだからなのでしょう。

合理的でないバラマキ経済政策を選択すると、間接経費が激しく積み上がることがわかる事例の一つです。

ちなみに、都内各地で実施の「キャッシュレス決済へのポイント還元」については、金券(紙商品券)を介在させないため低コストで、区内でも12月に実施される予定です。こちらは区の事業費用負担はなく、中小事業者のDXを後押しする趣旨から事業経費の全額が国都支出金で賄われます。


非課税世帯・均等割のみ世帯(多くが高齢者)には別途追加の現金給付がある


なぜ、デジタルだけでなく、紙商品券を発行するのか。その理由を確認すると、デジタル弱者への配慮と説明されています。一見もっともらしい理由です。

なるほど、昨年度の実施結果(年齢別申込割合)からも、紙商品券は高齢者の皆さんが希望されていることがよくわかります。

2021杉並区プレミアム付商品券/年齢別申込割合
2021杉並区プレミアム付商品券の実施結果から


しかし、住民税非課税・均等割のみ課税となっている世帯に対しては、別途追加5万円の現金給付が実施される予定になっているのです(同じ杉並区一般会計補正予算第4号)。

その対象の多くは高齢者世帯です。

「住民税非課税」「均等割のみ課税」というと一律に貧困であるかのように思われるかもしれませんが、高齢者の場合は安定した年金収入のほか一定の資産をお持ちの方も少なくありません。特に株式配当などは分離課税を選択することで総合課税(累進課税)を免れることも可能です。

このように一定の資産をお持ちの方に対しても臨時の現金給付が予定されていることを踏まえると、このような二重三重のばらまきが必要なのか、どのような政策選択も最終的には納税者負担となって跳ね返ってくることを踏まえて冷静に考え直す必要がある局面というべきでしょう。


働く貧困層(ワーキングプア)などへの対策は、完全に無視された


参考までに、働く貧困層(課税されているワーキングプア層)に対しては、今回「対策なし」「給付なし」となりました。

これは資産なく貧しいがゆえに日々働かなければならない個人への対策が完全に無視されたということです。

ここは非常に大事なところで、単に住民税非課税だけに注目して給付を行うと、歪んだ再分配に陥る可能性が否定できないのです。

働く貧困層の中には、非正規雇用・ほぼ無資産の中で可処分所得も減少し、エンゲル係数も上昇していることから特に外食ができなくなったとの切実な声も伺っています。

その所得水準を考えれば、今回の紙商品券についても(主要スーパーなどで使えなくなった影響などもあって)複数セットを買うことは困難でしょう。


杉並区プレミアム付商品券の業種別参加店舗数
プレミアム付商品券・業種別参加店舗/2021杉並区プレミアム付商品券の実施結果から


紙商品券は「1セット5,000円」が販売単位(販売価格)です。

販売単位をもっと細切れにする方法もありますが、細切れにすれば、さらに事務作業が煩雑になり、さらに間接コストが嵩むことになるでしょう。

事業経費の原資が現役のワーキングプア層を含む納税者負担であることを思うと、現状は深く考えさせられるのです。


不合理な間接経費をかけた「ばらまき」が続くのは、そこに既得権益があるから


ガソリンへの補助金(燃料油価格激変緩和補助金)も、生活者を支援するというよりも選挙でお世話になった業界団体を支援する色合いが強く、不合理なばらまき政策となっています。

原油高騰への対応というなら、石油元売りへの補助金ではなく、ガソリン税の一部をシンプルに減税/税率調整したほうが間接コストがかからないはずなのです。

ガソリン税を集め、それを石油元売りへの補助金にそのまま戻すのなら、単に制度を複雑にしているだけというべきです。

このような屋上屋を架す仕組みこそ先に改めないと、DX(デジタルトランスフォーメーション)は程遠いと言わざるを得ないでしょう。

仮にトリガー条項の凍結解除(ガソリン税を一時引下げ)すると、国地方全体で年約1.57兆円、東京都税では約190億円の減税に相当します。

結局のところ、シンプルに減税(税率調整)とならないのは「石油業界への天下り」などを意識しているのです。


緊急事態宣言の解除から1年以上が経過した今、メリハリのある対策に転換を


特措法の規定に基づく「緊急事態宣言」は、2021年9月30日を最後に解除されています。未知の感染症であった時期も経過し、概ねの対応策もわかるようになりました。

従来のような「ばらまき型」の継続は副作用も大きく、それが最終的に納税者負担となって将来世代の負担に跳ね返っていくことにも、そろそろ思いを馳せていかなければなりません。

2021年の企業倒産件数は、57年ぶりの最少値となりました。これは無利子・無担保のゼロゼロ融資など「ばらまき型」の成果といえるものでしょう。

しかし、同年9月下旬まで繰り返し緊急事態宣言が続いていたことを考えると、これは相当に不自然な結果で、もはや返済できない水準まで貸し込んでいる可能性(過剰債務となっている可能性)は否定できないのです。

区レベルにおいても、中小企業資金融資における区の利子補給や助成金などが実施されていますので、これは他人事ではありません。

通常であれば社会の変化とともに役割を終えているはずの企業がそのまま生き残っていることで社会の活性化や産業構造の転換を阻害している可能性も否定できないのです。

日本は財政ファイナンスなどで課題の先送りを続けてきましたが、通貨価値の毀損(下落が続く実質実効為替レート)によって、そのテクニックにも限界が見えてきました。企業倒産や自己破産はこれから顕著になるとみるべきで、むしろ真の危機は今後やってくるとみなければなりません。

ばらまき型の経済政策は実施中こそ得になった気になるものですが、人口の高齢化、社会インフラの老朽化、気候変動(気温上昇や風水害の多発)などが進んでいる日本において持続可能性があるとは言えないものです。

その場しのぎで将来にツケを回す「ばらまき」を続けていても将来展望はなく、むしろ取組の遅れているDXを着実に前に進め、よりニーズの高い成長産業への投資・労働移転を後押ししていくことが必要というべきなのです。

ばらまきは最終的に納税者負担となって全て跳ね返ってくるものです。

このことを自覚したうえで、今後はメリハリのある対策を図っていかなければなりません。

堀部やすしは、初当選から一貫して無所属。これまで政党だけでなく業界団体・労働組合などの支援も受けてこなかったことから、不合理な政策施策の推進にはとりわけ厳しく対応してきました。

これからも将来負担を見据え、増税一辺倒となる前に必要な合理化・活性化を推進することで役割を果たしていきたいと思っています。

引き続き課題に取り組むことができるのは、みなさんの応援のおかげです。今回も最後まで読んでくださりありがとうございます。


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