経営状況報告を免れていた「天下り外郭団体」の話
ようやく杉並区交流協会(天下り外郭団体)が法人化しました。
これまでは「法人格を持たない任意団体」だったのですよ。
その結果、補助金や定年退職職員(天下り職員)を継続的に送り込みながら、この杉並区交流協会については、議会への経営報告義務(質疑応答)を免れていたのです。
特に不思議な動きがあったのは、東京高円寺阿波おどり台湾公演の時でした(後述)。
あえて任意団体のままにしていた「真意」が透けて見えてきたのです。
天下り外郭団体を「法人格を持たない任意団体」にしていた理由
杉並区長は「天下り外郭団体」の経営状況を杉並区議会に報告する義務があります。
しかし、報告義務がある対象は、あくまで「法人」だけなのですよね(同法221条3項の定める自治体が出資している法人、自治体が債務保証をしている法人など)。
■地方自治法243条の3 第2項
普通地方公共団体の長は、第二百二十一条第三項の法人について、毎事業年度、政令で定めるその経営状況を説明する書類を作成し、これを次の議会に提出しなければならない。
つまり、法人格を持っていない任意団体の場合は、定年退職した職員(天下り職員)を継続的に送り込んでいたとしても、また収入のうち杉並区補助金が占める割合が限りなく100%に近かったとしても、杉並区議会に経営報告を行う義務がないわけです。
あえて「法人格を持たない任意団体」としておくことで、杉並区長は、議会に経営状況を報告せずに済ませていたわけです。
天下り外郭団体の改革
経理・会計処理において厳格なルールが法定されている自治体などと異なり、任意団体は自由度が高く、よくも悪くも柔軟です。
別の言い方をすると、それらの処理がルーズになっても、チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)が働かない危険性が高いということです。
この外郭団体を今後も存続させたいのであれば、まずはガバナンスの適正化・組織運営の透明化が不可欠というべきで、そのあり方を私は強く問題視してきました。
おかげさまで、今回の改革により、この外郭団体の経営状況は、ようやく議会への報告が「義務」になりました(地方自治法243条の3第2項)。
まだまだ課題は少なくないのですが、ガバナンスの適正化・組織運営の透明化に向けた第一歩となっています。
みなみ阿佐ヶ谷ビルの杉並区交流協会
しかし、予定されていた経営報告は突然中止に
議会に経営状況報告を行うことが義務となったことにより、この外郭団体についても、本年度ようやく定期報告が行われてきました。
堀部やすしは、さっそく経営報告に対して質疑を行う旨、議長に通告しました。
すると、予定されていた経営報告が急に中止となる(区長が急に報告を撤回する)珍事が発生したのです。
杉並区議会本会議6月3日のことでした。
予算決算上のミスが約4年間にわたって放置されていた事実が判明したのです。
長年にわたって「外部の目」が入っていなかった影響ですね。
それくらい任意団体時代は酷い状態が放置されていたのです。
報告を修正するにしても、外郭団体の内部で手続が必要であることから、当日中に経営報告をすることができなくなってしまったわけです。
仕切り直しで議会側に報告が行われたのは、それから2週間も後のことでした(杉並区議会本会議6月17日)。
組織の風通しを変えるためには
この外郭団体は「定款」や「組織体制」にも大きな問題があるのですよね。
ゆるゆるな予算決算が引き継がれたこと自体よりも、そのガバナンス面が旧態依然で事実上ノーチェック体制であることのほうが、はるかに問題というべきなのです。
もはや任意団体ではないのであって、その公共性を踏まえた組織体制に改めることが必要です。
これまでのような「馴れ合い」を排除するには、特に評議員の多様性確保と役割強化が不可欠というべきです。
この点は、この外郭団体の経営報告に対する質疑でもやや細かく指摘していますので、機会があれば、また紹介したいと思います。
イレギュラーに天下り外郭団体を経由させる「迂回補助金」
杉並区からこの天下り外郭団体への補助金が急に増加した年がありました(法人格を持たない任意団体の時代)。
「東京高円寺阿波おどり台湾公演」が開催された年です。
増加した補助金は、この杉並区交流協会(当時任意団体)を通じて、東京高円寺阿波おどり振興協会などに支出されていたことがわかっています。
しかし、毎年開催されている高円寺阿波おどりは、杉並区から振興協会にストレートに補助金が支給されているところです(収支報告は区に提出)。
なぜ、わざわざ「法人格を持たない任意団体」を経由させて(迂回させて)支払う必要があったのでしょうか。
風通しのよい風土を根付かせていくのは簡単なことではないけれど、このような問題こそ独立した無所属が担うべき役割と考えて取組を進めています。
最後まで読んでくださってありがとうございます。引き続き課題に取り組むことができるのは、みなさんの応援のおかげです。
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