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【前区長の置き土産】岸本聡子杉並区長の本気度が試される試金石【まずは情報公開の徹底を】

杉並区長選挙の直前、落選した前区長は、翌年度以降に大きな影響を及ぼす債務負担行為の設定(複数年にわたる後年度負担の設定)や協定等の締結を次々に行っていきました。

7月に任期満了を迎える者が、その直前の初春から初夏にかけて「次の時代の区政」を拘束する選択を次々に進めていったわけです。

杉並区長が交代しても、すでに締結済みの契約・協定などはそのまま引き継ぐことになります。これに伴う債務も当然に引き継ぎます。

前区長を破って当選した岸本聡子区長といえども、これらはそう簡単に反故にできるものではありません。

それだけに岸本区長の選挙公約でもある「まずは情報公開の徹底」が不可欠です。これは杉並区政の歴史を正確に残す作業の一つでもあります。


【1】選挙直前に駆け込み締結された「浜田山駅南口(地下連絡通路)整備事業」に関する基本協定


例えば、落選した前区長は、杉並区長選挙の直前に「浜田山駅南口(地下連絡通路)整備事業」を進めるための基本協定を駆け込み締結しました。

区が賃借し駅南口を整備するとされている建物は、地権者が3月に着工
(2022年3月4日撮影)


この公共事業の概要は、

  1. 浜田山駅南口の整備に要する設計費・工事費は、京王電鉄ではなく、杉並区が負担する

  2. 駅南口となる建築物/地元の地権者が新たに建築する建物は、京王電鉄ではなく、杉並区が賃借して南口を整備する(地下1階・地上1階の賃借料を杉並区が支払う)

  3. 南口と駅舎をつなぐ地下連絡通路(新たに線路の地下を掘るわけですね)も同様に杉並区の負担で建設し整備する

となっています。

この公共事業の主たる関係者は「京王電鉄」「地権者」「杉並区」の3者なのですが、その経費負担が杉並区に偏っているのが特徴です。


なぜ? 京王電鉄(受益者)の経費負担はゼロ


注目すべき点は、京王電鉄の駅南口・地下連絡通路を整備するという話であるにもかかわらず、京王電鉄(受益者)の経費負担がゼロである点です。

平素は何かと一般区民に「受益者負担」を求める一方で、なぜ京王電鉄に対しては受益者負担ゼロでサービスするのか、およそ合理的に説明することができないのです。

地権者が建設中の浜田山駅南口となる建物
(2022年9月26日撮影)


総事業費・維持管理費の見通しは?


総事業費、さらには今後の維持管理費の見通しを明確に示さないまま既成事実を積み重ねていったことにも疑問があります。

地下連絡通路は、線路の真下を通して駅舎につなぐことから、そう単純な工事ではありません。

さらに土地建物を杉並区が賃借して駅南口と地下連絡通路を建設するということは、半永久的に杉並区が賃借料を支払い続けるということです。

地権者との間で締結される賃貸借契約の内容はどうなるのか、これも無視できない課題となります。

新規の建設投資事業は、将来負担の見通しを無視して検討することはできないものですが、前区長はそれらを明確に示すことなく、あろうことか選挙直前に次々と既成事実を積み重ね「置き土産」としていったのです。

浜田山駅


【2】岸本聡子区長は情報公開を決定したものの、利害関係者の申立てにより、この公開手続は執行停止に


疑問が拭えなかったことから、私は前区政時代より情報公開請求を行っていましたが、必要な情報は全く得られませんでした。

その後、前区長は落選し、新区政が立ち上がりました(7月)。

おかげさまで、岸本聡子杉並区長名で、ある程度の情報公開が決定されるところとなりました(8月)。

しかしながら、決定はあったものの公開前に横槍が入り、現在この公開手続は「執行停止」となっています。審査待ちの状態です(9月)。


それは「公共事業に関する情報」が公開されることを不服とする珍しい申立てだった


まず、岸本聡子杉並区長名による公開決定に先立ち、情報公開に反対の意見書が利害関係者から提出されたのです。

この公共事業に関係を有する方(利害関係者)が牽制してきたわけですね。

しかし、公共事業である以上、本来は原則公開としなければならないものです。もちろん、区長の公開決定が覆ることもありませんでした。

この結果を受け、利害関係者から行審法に基づく第三者審査の求めがあったため、公開手続は一時的に執行停止となったわけです。


しかし、この「時間稼ぎ」が奏功し、課題は放置される可能性も


今後は、審査会(区長の附属機関)において、公開・非公開の可否が客観的に審査されることになります。

過去の審査請求は、情報が公開されなかった場合に提起されるケースがほとんどでした。そこに、今回、情報が公開されることを不服とする珍しい審査請求が提起されたわけです。

公共事業に関する情報であることを踏まえると、非公開とされる可能性は低く、公開時期の引き延ばし(単なる時間稼ぎ)に過ぎませんが、この時間稼ぎは実際に功を奏する可能性もあるのです。

なぜなら、前区長が行った数々の非公開決定に対して、過去に数多くの審査請求が提起されており、それらの審査案件が長期滞留している(審査庁の審査が滞っている)ためです。


「時間稼ぎ」を許すか否か、岸本区長の本気度が試されている


前区長時代は、黒塗り非公開の連発であったことから、非公開であることを疑問視する審査請求が多発しました。

審査案件の多発により、杉並区では、審査請求から審査終了(裁決)まで4年以上もの時間がかかる事件が続出する始末でした。

しかも、前区長は、この審査手続について標準審理期間を全く設定することなく放置していました。

標準審理期間(審査請求から裁決までに通常要すべき標準的な審理期間)の設定は法定されていることから、他の行政処分の審査においては区でも3ヵ月と設定されています。しかし、情報公開・非公開処分については全く設定することなく、前区長は課題を放置していたのです。

情報公開を阻止するため、あえて放置していたのではないか、そう受け止められても仕方がない状態だったのです。

審査が終わらなければ、現状が変わることもありません。その結果、情報の非公開を争点とする審査案件が膨大に積み上がることになりました。

本来の「執行停止」は、審査中のごく一時的な措置ですが、杉並区においては、このように前区長時代に放置されていた過去の審査案件が滞留していることから、引き続き長く公開されない状態が続くおそれがあるのです。

前区長は、このことをよく知っています。

しかし、杉並区長(前任者)は、すでに京王電鉄と本事業に関する協定を締結済みです。さらには地権者も(区が賃貸借する予定とされている建物の)建築工事を進めています。

すでに利害関係者間で話がついて実際に事業が動き出しているにもかかわらず、情報公開を拒むこと自体が不自然です。

まずは審査・審理を正常化できるか否か、岸本区長の本気度が試されています。「時間稼ぎ」を許すことなく、行審法の立法趣旨である簡易迅速な審査の実現を期待しています。


【3】セシオン杉並についても「来年度以降の業者」を駆け込み選定した前区長


改修中のセシオン杉並/高円寺地域区民センター・社会教育センターも、杉並区長選挙の直前に(リニューアルオープンの1年も前に)施設運営を担う新たな指定管理者を選んでいました。


区長選挙直前に来年度以降の指定管理者を早々に選んで提案してしまうのは、おそらく応援を受けている利害関係者への配慮だったのでしょうね。

過去の事例/西荻地域区民センター・勤労福祉会館(ホール含む)の大規模改修の際と比較しても、これは速い動きでした。

でも、こんなに急ぐ必要は、どこにもなかったのですよ。

案の定、セシオン杉並のリニューアル工事は予定どおりに進みませんでした。

9月15日、杉並区公式ページは、セシオン杉並(ホール・展示室)施設利用受付の延期をお知らせする次の告知を掲載しています。


セシオン杉並(ホール・展示室)施設利用受付の延期をお知らせする杉並区公式ページ


遅延の原因は、半導体不足などの影響です。空調設備部品の納期が約4カ月遅延する可能性があるとの説明でした。

しかし、パンデミックや戦争などの影響で世界経済は激変し、このような「納品遅れ」による影響が相次いで発生していたことは、早くから広く話題となっていたことです。

セシオン杉並のリニューアル開館が実際に可能となる時期は、当初の計画よりも先の話となると(当時でも)相当程度確実に把握できたのです。

大急ぎで次の業者を選定し、次期区政を拘束する必要がどこにあったのか、選挙直前における前区長(とその取り巻き)の判断は極めて不合理なものでした。

このように横暴な前任者の「置き土産」が数々ある中で、今後どのように杉並区政を正常化させていくか、新区政は大きな課題を抱えています。

【4】「まずは情報公開の徹底」は、岸本区長の選挙公約


「まずは情報公開の徹底」とは、岸本聡子区長の選挙公報の記載です。

さまざま制約(置き土産)を抱えている中、短期間に岸本区長が大きな政策を実現していくことは難しいと言わざるを得ませんが、情報公開を徹底し、区政の透明化を図ることは、比較的早く実現できるはずです。

岸本区長は、その所信表明演説においても「情報公開度ナンバーワン、透明度ナンバーワンの区政を目指してまいります」と高らかに宣言しました(9月12日)。ここは頑張ってほしいところです。

何事も最初が肝心ですからね。私も改善に向け取組を前に進めていきます。

前区長時代に歪められてしまった審査・審理手続を正常化できるか、それとも時間稼ぎをさらに許してしまうか、これは岸本区政の本気度が試される「試金石」です。

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