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堂々と4年間も時間稼ぎする杉並区長の話【骨抜きにされた行審法】

情報公開に応じない杉並区長に対し、行政救済法の一つである行政不服審査法(行審法)を根拠に審査請求を行っていました。

この審査請求は、裁決/審査結果が出るまで4年もかかりました(2021年12月28日裁決)。

きょうは簡易・迅速な行政救済(審査)を趣旨としている行審法を杉並区長が骨抜きにしている実態を紹介しましょう。

審査請求/行政不服審査4年間の歩み

■2017年(平成29年)10月
 杉並区長に情報公開請求
■2017年(平成29年)11月~12月
 杉並区長、一部非公開を決定
2017年(平成29年)12月22日
 行政不服審査(審査請求)を提起
■2020年(令和2年)
9月1日
 3年後、杉並区長がようやく第三者機関(審査会)に諮問

■2021年(令和3年)9月24日
 審査会答申
2021年(令和3年)12月28日
 やっと審査結果が出る(審査庁杉並区長裁決)

ポイントは、審査請求が提起されてから審査会(第三者機関)に諮問するまでに3年近くの時間をかけている点です。

誤解のないように言っておくと、審査に4年かかっているわけではないのですよね。

審査にあたる弁護士などの先生方は、それでも1年程度で結果を出してくださいます。

要は、杉並区長が審査会(第三者機関)に審査をお願いするまでの間に長い長い時間をかけているのです。

「遅滞なく」諮問しない杉並区長(条例上の義務違反)


杉並区の情報公開条例14条は、次のように定めています。

(審査会への諮問)
 第14条 この条例の規定による処分についての審査請求があつた場合は、次に掲げる場合を除き、遅滞なく、杉並区情報公開・個人情報保護審査会に諮問し、その審議を経て、当該審査請求について裁決をしなければならない。
 (1) 審査請求が不適法であり、却下する場合
 (2) 公開決定等(公開請求に係る情報の全部を公開する旨の決定を除く。以下この号及び第16条において同じ。)を取り消し、又は変更し、当該審査請求に係る情報の全部を公開することとする場合(ただし、当該公開決定等について第三者から反対意見書が提出されている場合を除く。)

遅滞なく」とは、即時性までは求められないものの、滞ることが許されないケースに使用される法令用語です。

請求された審査を何年も諮問せず放置することは条例違反ということですね。

下級審の裁判例で違法不当に言及されている事例はありますが、被害者に賠償金を支払うほどではないとされ、その結果、杉並区長にとっては痛くも痒くもない状態が続いています(係争中)。

区長を交代させないと変わらないということなのでしょう。

なぜ時間稼ぎをするのか


情報にも「旬」がありますよね。

必要な時に必要な情報を入手できず、何年も経過した後になって公開されても意味がありません。情報が既に古くなり、役に立たないことが少なくないためです。

杉並区長の姿勢は、審査会への諮問を先送りすることで時間稼ぎし、求めた情報の陳腐化を狙ったものと受け止められても仕方ないのです。

もちろん、このような事態となっているのは、私が求めた審査案件だけではありません。

ここで紹介した事例は、過去に私が請求した勤労者福祉事業や建築審査会に関する非公開に係る審査案件でしたが(その一部は別途訴訟中に明らかになった内容もあります)、裁決までに4年もかかる実害は他の事例にも出ているのです。

審査案件が多数発生し長期滞留していることから、これまた決して安いとは言えない訴訟費用等を用意し、手間をかけて東京地裁に提訴される事例が発生しているのです。

行政不服審査は、訴訟を提起せずに課題解決できるよう、簡易・迅速な救済(審査)を実現することを趣旨として法制化されたものでした。

しかし、杉並区長は法の趣旨を著しく骨抜きにし、救済手続を形骸化させているのです。

なぜ、このようなことになっているのでしょうか。

区長車(公用車)の問題や補助金不正などを受け、情報公開請求や審査請求が増加した杉並区


公開請求・審査請求の増加は、そもそも杉並区が公表している情報が少ないことが原因でもあります。

例えば、区長車(公用車)についての情報公開請求が毎日毎日提出されていることが確認されています。

マスコミ報道で話題となった区長の態度への疑問が払拭されていないからでしょう。

公用車を使って内外の選挙応援に出かけていたり、深夜遅くまで頻繁に新宿歌舞伎町に出かけていたり、緊急事態宣言中に入札契約手続きに参加している業者と一緒に軽井沢で酒食・宿泊していたりと、過去に公用車を乗り回してメチャクチャなことをしていた者が杉並区長では監視を怠るわけにはいかないということでしょう。


このような状況を踏まえ、第三者機関(審査会)への諮問が滞っている状況については、過去にも繰り返し議会でも取り上げ、関係者と課題共有を図ってきました。

これは区長本人から姿勢を改めてもらわなければ解決できない課題だったからです。

◆堀部やすし 委員  情報公開・個人情報保護審査会について伺います。
 設置の趣旨は。

◎情報政策課長 情報公開・個人情報保護審査会でございますが、公正な情報公開の実施に向けての設置でございます。

◆堀部やすし 委員  区の情報が公開されなかった場合に不服申し立てを扱うわけですが、あえて行政不服審査会などと別建てで設置している趣旨は何ですか。

◎情報政策課長 情報公開及び個人情報保護に特化した審査会でございまして、その内容について適切な専門家による審査を行うためと考えてございます。

◆堀部やすし 委員  実績、審査会の開催状況、過去3年どうですか。

◎情報政策課長 28年度、29年度はゼロ回、30年度は1回でございます。

◆堀部やすし 委員  なぜ長く開催されていないのか。

◎情報政策課長 請求件数が急増してございまして、24年から27年まではゼロ件から2件でございましたが、28年度9件、29年度9件、30年度9件ということで、急激に増加してございます。

◆堀部やすし 委員  たくさん来ているのならたくさん開催しないとおかしいですが、どうですか。

◎情報政策課長 あわせて情報公開請求の急激な増加がございまして、26年度が89件に対しまして、27年度106件、28年度186件、29年度243件、30年度、1月末ですけれども514件ということで5倍以上にふえた。そういうことで、並行して処理してございまして、情報公開の対応に追われているということでございます。

◆堀部やすし 委員  標準審理期間はどれぐらいで設定しているのか。

◎情報政策課長 標準審理期間でございますが、こちらにつきましては、先ほどの行政不服審査法とはまた別でございまして、情報公開については定めてございません。

◆堀部やすし 委員  行政不服審査法の第16条などには、定めるように努力義務がありますが、いかがお考えですか。

◎情報政策課長 努力義務としては定めるべきと考えてございますが、この間、情報公開請求が大量に増加するような状況もありまして、標準的な処理期間を定める状況にないことから、現在定めていない状況でございます。

◆堀部やすし 委員  平成28年7月7日に出された審査請求を初めて審査したのは、つい先日の2月21日。2年半も放置しているんですよ。どういうことですか。

◎情報政策課長 審査請求をされた方に対しましては、非常に申しわけないと考えてございます。鋭意努力してございまして、この間初めて、改正後、28年度以降の処理案件でございまして、また運営方法等も検討して固めてまいりましたので、今後はなるべく迅速に処理していくように努めてまいりたいと考えてございます。

◆堀部やすし 委員  平成29年度以降に出されたものは非常にたくさんありますが、全く審理されていない。これはいつ審理するんでしょうか。

◎情報政策課長 情報公開の件数の推移もございまして、具体的な日程というのは難しいんですけれども、この間、予算要求等もしてございまして、なるべく回数をふやしながら迅速に進めてまいりたいと考えております。
 また、今回、3件併合でやってございますし、今後ともそういう併合処理も活用しながら、また組織的な対応を含めて対応しながら進めてまいりたいと考えてございます。

◆堀部やすし 委員  行政不服審査法の趣旨は簡易迅速ですけれども、全く、裁判以上に遅いというのは大変問題です。見解を求めます。

◎情報政策課長 今申し上げましたように、大変滞留しているという現状につきましては、特に審査請求をされた方に対しては大変申しわけないと考えております。組織として前向きに対応しまして、今後ともなるべく迅速に進めてまいりたいと考えております。

◆堀部やすし 委員  かつて総務部長が、職員にはコンプライアンスがビルトインされているという答弁をされたことがありましたけれども、内部統制体制上、こういうのはどういうふうに統制していくのか。誰も牽制する人が内部にいないということなんですかね。

◎総務部長 そういうことではございません。この件については、業務の遂行上の課題なんかもございましたけれども、これから適切にそうした会議の開催等も、今所管課長がお話ししましたようにやっていきますので、その推移をどうぞ見てください。

◆堀部やすし 委員  情報というのは、そのとき、旬のときが大事なんですよね。2年も3年もたったら、こんな情報要らないと、こういうことですよね。だから、意図的にこれは開催しないということをしていたんじゃないかと思いますが、見解を求めます。

◎総務部長 法の趣旨からすると、これは迅速に、審査会も設けられていますから、対処をしていくということは、今回の改正法の趣旨というのはもともとの行政不服審査法の趣旨でございますから、それに即した対応を今後も努めてまいりたいというふうに考えております。
杉並区議会2019年3月7日予算特別委員会会議録


2019年3月には「これから適切にそうした会議の開催等も、今所管課長がお話ししましたようにやっていきますので、その推移をどうぞ見てください」などと運用改善の決意が語られていました。

しかし、その後も運用に変化はなく、審査結果/裁決が出るまでに4年もかかっている現状です(2022年1月現在)。

今後は、あるべきDX推進とともに、このような旧態依然としたコンプライアンス無視も是正していかなければなりません。


情報公開、オープンデータ推進、その先へ


区長車(公用車)の運行日誌などは、それこそ公開請求を待つまでもなく平素から自動的に公表を進めていれば、毎日のように情報公開請求を受けることもないはずなのです。

隠し立てをすればするほど、請求が次々に増える悪循環に陥っています。

公益性が極めて高く、それこそ毎日のように反復継続して公開請求されている情報については、請求を待たず公表する指針を徹底させることが不可欠です。

ひいてはそれが公開請求・審査請求を減らすことにもつながるのです。

公開請求・審査請求の増加は、公表情報があまりにも少ないことが原因なのであって、これは区長本人の姿勢と無関係の話ではないのです。


さて、2022年(令和4年)は、平成34年ではなく、ましてや昭和97年でもないですよね。

このまま杉並区長が旧態依然とした「昭和脳」であり続けたとしても、急速に変化する世界はそれを許さないはずです。

例えば、杉並区が隠していた情報の一部が文化庁から公開されました


区の情報公開についての行政不服審査は骨抜きにされていますが、現在、議会活動を通じた取組とともに、他の機関から情報を入手するなど取組の範囲を拡大させており、おかげさまで一定の成果を上げているところです。

2022年(令和4年)が、昭和97年や平成34年に後戻りすることのないように、このようなコンプライアンス無視には、さらに強力な対応を図っていきます。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。堀部やすしに叱咤激励をお寄せください

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