見出し画像

北海道の図書館訪問、100館達成しました!+おすすめ10館紹介

かつて、大阪で育ち社会人時代東京でも暮らしていたことがある僕にとって、北海道は縁遠い土地でした。

約20年前に青森市に引っ越してきたのですが、しばらくはほんとうに貧乏だったので、それはそれでまた北海道旅行は縁遠いものでした。

そんな僕が偶然公共図書館員になり、街歩きを兼ねてその土地の図書館を訪ねてまわる「図書館ウォーカー」をライフワークにしはじめてから、とりわけ力を入れて旅した土地が北海道だったのは、やはり憧れの気持ちがあったからなのでしょう。

図書館員を辞めてフリーのライターになってからも北海道への図書館ウォーカー旅を数多く重ね、気がつくと道内図書館100館超えを果たしていました!

とは言え、僕の旅の目的は「図書館そのもの」ではありません。バタバタと図書館だけ見てその街を去るような「ポイントクリア」的な訪問は僕のやりたいことではありませんし、それは図書館ウォーカーという趣味のコンセプトから大きく離れたやり方です。
(図書館ウォーカーについては書籍を絶賛発売中ですので、ぜひそちらをごらんになってください)

僕にとって、100館訪ねたということは、100の街を歩いた、自分の目と心で(たとえ束の間であっても)その街を見た、感じたのと同じです。

もちろん、その時々のプランによって街歩きにも濃淡、長短がありました。それでも、駅やバス停を降りてから歩いて図書館という「ふだん使いの施設」を訪ねることで、できるだけその土地の日常に触れ「この街で生まれ育ったら/に移住したら、どんな暮らしなんだろうなあ」などと想像することが何よりも楽しかったのです。

また北海道は、表面的な意味でも(特にデザイン面)、サーヴィスや蔵書などの内面的な意味でも面白い/興味深い図書館が多いような気がします。たとえば郷土資料としてのアイヌ関係資料はどの館に行っても多少の差はあれ置いてありますし、「海が見える図書館」がものすごく多いのも道の特徴です。

近年JR北海道の廃線問題がニュースでとりあげられることが増えているように(飛び火?して今度は東日本や西日本でものっぴきならないところが報道されています)、鉄道を含めた公共交通は運行本数が少ない地域が多く、運転免許を持たない僕は四苦八苦して訪問プランを作ったり、結果として何時間かをその街で過ごしたりしたのも思い出深いです。

それもまた、北海道の図書館訪問を彩る「ならでは」な記憶のありかたなのだと思います。

個人的には北海道を図書館ウォーカーするのはとても楽しいので、ちょっと変わった旅がしてみたい、ガイドのおすすめをなぞるのではなくて、もう少し日常に思いを馳せるプランにしたいという方には強く推します。

また、北海道内のほとんどすべての自治体の図書館から「我が館の一冊」的な資料を答えてもらって紹介したこんな本も出ています。蔵書だけではなく、本とはまた違う部分での図書館サーヴィスにフォーカスしたコラム、インタビューなどもあり、北海道のことにも図書館のことにも興味が生まれる良書だと思います。

おすすめ10館

これまで北海道の100以上の図書館を訪ね、同じ数だけその館のある街を歩いてきましたが、オマケとして個人的に印象深かったおすすめ館を写真付きで10館挙げておきます。ダブってもつまらないので、書籍「図書館ウォーカー」でご紹介したものは候補からはずしました。

繰り返しますが、この「おすすめ」は専門的な観点から見て評価が高い図書館という意味ではありません。旅そのものが楽しかった、記憶に残ったということであり、建物のデザインが面白かった、印象深い時間が過ごせたなどの表面的、総合的、個人的な感想です。また、ここに挙がっていない館や街がつまらなかったという意味でもありません。

図書館ウォーカーは、図書館を訪ねることで旅そのものをより楽しくする、という趣味です。新聞連載の旅エッセイを収録した書籍ともども、図書館評論ではないことをご理解いただいたうえで楽しんでいただければさいわいです。ここに挙げた10館を見て気になった、という方はぜひその街に出かけてゆっくり図書館のまわりを散歩してみてください。
(それぞれ、館名→説明テキスト→写真3枚の順に載せています)


豊富町定住支援センターふらっときた図書室

何度か訪ねている街です。すごーく街の規模は小さいですが、オープンスペース形式の図書室はとても充実しています。センター自体が広々としてきれいなので本を読んでくつろいだり単に休憩したりと過ごしやすい。
最初に行った時に入ってみた地元スーパーのフードインタイムリーイトウの道産お肉や魚の品ぞろえのすばらしさ、今のところ日本一おいしいと思った町特産牛乳を使ったソフトクリーム、そして豊富温泉。のーんびり街歩きも楽しかったです。
本数は少ないものの羽幌や留萌には沿岸バスで、稚内や旭川方面にはJR宗谷本線でアクセスできます。個人的には稚内との間にもう少し公共交通が行き来していたらなとは思うのですが、移住するならここもいいなあとひそかに思っている街です。

図書室のある定住支援センターふらっときた
中は広々、とてもきれいです
郊外の雄大な景色

興部町沙留公民館図書室

ここはたまたま立ち寄った図書室です。「さるる」と読むかわいい地名に惹かれ、路線バスを途中下車して小一時間歩いてみました。シーズンが終わって誰もいない沙留海水浴場のカラカラ鳴る石浜も良かったです。
図書室はとてもミニマムサイズでしたが、驚いたのがこの公民館にはWi-Fiが飛んでて、ロビーにはくつろげるソファと数種の雑誌(それも道内観光関係のものが大半)が置いてあったことです。自販機で冷たい飲み物を買って雑誌を読んで少し休憩させてもらいました。
ちなみに図書館本館がある興部中心部もいい感じで図書館のデザインもなかなかカッコいいです。新しめの住宅が多くてアップデートされた感じの街並みが特徴的でした。

図書室のある沙留公民館
沙留海水浴場
沙留の街並み。左側の公営住宅がなんかいい

根室市図書館

大学時代、道北出身の友人に「鉄道路線の端っこの街ってあこがれるよ、根室とか。何があるんだろうって」と言ったら「根室なんて何もないよ」と返され、逆に気になっていました。その子(女性です)の出身地も規模的には大差ない街のはずなんですが……(笑)
大学卒業から20年以上経ち、実際に行ったら根室は坂の街でした。駅から海に向かって坂が下りているため、駅がけっこう海から離れているのに水平線が見えて、まずそれが驚きでした。もう一つ驚いたのが、街のあちこちにある「返せ北方領土」の看板。当事者意識ということについて考えさせられます。そういうのを知るのも図書館ウォーカーの醍醐味です。
とは言え、根室の図書館はいちおう「日本最東」館です。海に向かう坂の途中にあるため、図書館敷地内から海が見えます。建っている角度的に館内からはちょこっとしか見えないですが。
僕はここで市出身の飯田三郎(作曲家)&高橋掬太郎(作詞家)のことを知りました。名物のオランダせんべいやエスカロップもおいしいです。泊まった宿の朝食のザンギはなぜか道内のどのホテルよりもおいしかったし。

根室市図書館
坂の街、根室
アートと化した案内図

幕別町図書館忠類分館

幕別町は帯広市のすぐ東側というイメージがありましたが、実際はとても南北に長い自治体で、中札内村や更別村よりも南側にも町内エリアがあるのです。その一つが忠類。ナウマンゾウの化石が発掘されたことで有名で、街自体もそこを推しています。
図書館は複合施設の忠類ふれあいセンター福寿の中にあります。デイサービスセンターや学童保育所などが併設なのは図書館としてはちょっと変わっているかもしれません。幕別町の図書館はホームページを見てもとても工夫して頑張っている印象があって、この忠類分館も小さいながらそんなところが垣間見れました。ベビーベッドとかもあるのが特に印象に残っています。
最寄りの建物はホテルやレストランも併設されたナウマン温泉。こちらの泉質のぬるぬる具合、湯の花の多さは最高でした。僕はそれほど温泉の質とかにこだわりはないのですが、ここはまた入りたい。

図書館忠類分館があるふれあいセンター福寿
こちらは温泉やホテル、レストランがある施設
忠類にアクセスするには十勝バスで

浦幌町図書館

次に乗る列車までけっこう時間があったのでかなりゆっくり街歩きしたところ。とても小さな街だと思うのですが、観光情報を調べた時には若い人たちが頑張って盛り上げようとしているのが伝わってきて、気になっていました。
タイミング的に入れなかったのですが、喫茶店やカフェ、食堂なんかも街の規模のわりに充実しているようですし、ちょっと足をのばせば徒歩圏内に道の駅もあるようです
ここの図書館は浦幌町教育文化センターらぽろ21という複合文化施設の1階にあり、併設の町立博物館(無料で入場可)もとても充実した内容でした。図書館も広くて蔵書も質量ともに立派で、僕の好きな郷土資料コーナーもしっかりしていました。この街の規模でこれだけの館があったら、きっと日常が楽しいと思います。
あと、本数が多いとは言えないですが電車で帯広にも釧路にも出られるロケーションなのも良いです。惜しむらくは公衆浴場の「健康湯」が今年の3月末で運営終了しちゃったことですね。番台のおばさんとの会話、今も忘れられません。

図書館のある教育文化センターらぽろ21
充実の町立博物館
浦幌駅前から見た街並み

新ひだか町図書館

町の中心部、静内にあります。ここは北海道行脚を本格的にはじめた最初のころに訪ねた街で、その時の好印象がのちの活発な道内めぐりに向かわせたような気もしています。
僕が訪ねた時はすでにJR日高本線の鵡川以南は運休になっていて、とうとう乗車はかないませんでした。ただ近隣の街や苫小牧とのアクセスは意外としやすいですし、街も大型ショッピングモールなどもあり、いろいろ「ちょうどよい」感じがしました。
図書館は住宅街と幹線道路の間にある静かなエリアに建っていて、新しく広く採光も充分にあって、ここをふだん使いするのは楽しいだろうなと思いました。ホワイトが基調の内装も「こもった」感がしなくて良かったです。今度行った時は併設の町博物館もちゃんと見たいですね。
中高生含め、街に若い人の姿がけっこう多いのも好印象でした。ここもまた移住するならアリかな、という街です。海や温泉もあるし。

新ひだか町図書館
ホテルから見た静内の街並み
鉄橋が架かる静内川河口。5月下旬なのに白鳥がいます

遠軽町生田原図書館

ここは僕の分類だと「駅図書館プレミアム」にあたります。つまり駅舎と一体化した図書館ですね。遠軽町を含むJR石北本線は駅図書館プレミアム銀座で、ここ以外に2館あります。
この図書館については「HO」という北海道ご当地雑誌で知りました。2階にオホーツク文学館があって、1階の図書館カウンターで入場料を支払ってから階段を上がって行くシステム。次に乗る列車まで2時間近くあったので、街歩きをしてもだいぶ時間が余り、この文学館と図書館の蔵書でけっこう有意義に暇つぶしさせていただきました。
すぐ近くにホテルを併設した生田原温泉があって、そちらもオススメ。レストランもおいしいらしいのですが今回はスルーでした。次この辺を訪ねる時はこのホテルに泊まるのもいいな、なんて考えています。

生田原図書館のある生田原駅。大きいです
生田原川
神社に続く階段。上りませんでした(笑)

泊村公民館図書室

ここはオラシオ的には行くのにいちばん苦労した館です。と言っても、ほんとうなら路線バスで楽に行けます。10キロほど南側にある後志地方海沿いエリア最大の自治体、岩内町(こちらもいい街です)で借りたレンタサイクルで行こうとしたところ、車輪が小さい自転車だわ道のアップダウンが激しいわで体力も時間も大幅に消費しちゃいました。
しかし苦労した甲斐はありました。公民館は海ぎわの高台に建っていてものすごく景色がいいのです。公民館自体はとてもきれいな建物で、図書室も同様でした。小さいけれどくつろげそうな感じでした。ともかく、敷地内からの絶景を見に行くだけでも価値があります。次回はバスで訪ねて(笑)、村内をゆっくり散策したいなと思っています。

図書室のある泊村公民館
見よ、この絶景
岩内町から泊村へ続く道

鹿部中央公民館図書室

ほんの時々、公共交通のインターネット上に載っている情報と実際の運行状況が違うという事態が生じます。鹿部町でもそういうことがありました。
鹿部を最初に訪れたのは真冬でした。前の日の夜にお世話になっている方のお家に呼ばれてしこたま飲んで、ホテルのバスルームの床で酔いつぶれたまま寝て、二日酔いの体をバスの座席にあずけて道の駅しかべ間歇泉公園にたどり着いたのでした。食堂の名物定食がおいしく、美しい海の景色と冷たい空気に体調がよみがえり、それが嬉しくて再訪を誓ったのでした。
鉄道駅が街のはずれの森の中にあったのも印象的で、ここの街をちゃんと歩きたいと思ったのも再訪したい理由になりました。
再訪したのは何年か後の晩秋で、街をてくてき歩いて子どもやその親御さんでにぎわう公民館を訊ねたら近くのバス停から駅近くのホテルに向かうはずが乗るはずの便はなく、1時間半くらい待たないといけなくなりました。
海辺の街をぶらぶら歩きながら港でカモメたちと一緒に夕暮れ時の北海道駒ケ岳を眺めたのがとても良い思い出です。また、ホテルの温泉も良かった。

図書室のある公民館。壁がいい
鳥と一緒に海と山を眺めました
森の中にある鹿部駅

美唄市立図書館

100館の大台を達成した館。美唄は前から気になっていた街なのですが、つい先日ふとした縁で知り合った方が主催するクラシックのピアノ・リサイタルがあったので聴きに行きがてら街をじっくり歩いてみました。
2階にある一般図書室の入口近くに写真集の書架(それも北海道関連のもの多し)や郷土資料コーナーがあり、カウンターには観光パンフレットも設置。何よりかつて美唄にもあった炭鉱から来ているのか、床が少し光沢のある黒炭色だったのに萌え~でした。
近くの郷土資料館も大充実!駅の西口に新しいホテルができていて、用事があって寄った1階のカフェもいい感じだったので、今度泊まってみたいなと思いました。

美唄市立図書館
美唄の街並み
郊外の観光スポット「アルテピアッツァ美唄」



この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

フリーランスのため、みなさまのサポートは取材や執筆活動の貴重な経費とさせていただいております。また、サポートいただくとものすごく励みになります。最高のエネルギーです。よろしくお願いします。