愛している君へ #1 【ミステリー小説】
前回の話。
10月24日
「おーい、聞いてるか?」
「ごめん。何だっけ」
「おい、お前……まぁいいさ。も一回言うぞ。最近、話題のこのニュース見たか?」
そう言って、紘也が見せてきたのは、週刊Aだった。
「これ、お前どう思う? なんか、可哀そうだよなぁ…」
「この田中杏さんって人、結構な美人さんだよな。性格とかはわからんし、見た目だけで判断するのも良くないと思うけど、俺、杏さんを幸せにしてあげたかったな……」
「紘也、そんなこと思ってこの記事見てたのか?もっと、こう、親族の方、可哀そうだなとかを考えるんじゃないのか?」
「いや、まぁ、そういうのも考えるけどさ。俺、この人が本当はどう亡くなったのか、自分で調べたいんだ」
でた。後藤紘也がなぜか誇る行動力。正直、僕からするといい迷惑だ。多分、コイツ以外誰もがそう思うだろう。
「やめとけ、やめとけ。お前みたいな高校生が事件に乱入したって、いいことないだろ。余計にその場が混乱するだけだ。それに、警察は自殺だって言ってるし、この人がまだ現実を受け止めたくないだけだよ」
「そうか……俺はただこの人たちの役に立ちたいんだけど……」
「それなら、なんか捜索隊みたいのに入ればいいんじゃないか? あ、いや、もう死体とかは見つかっているから、解散してるか……」
「それだ! まず、その人達に事件直後について聞けばいいんだ」
「おっ、おう……。よかったな」
「勿論、羅維都も手伝ってくれるよな!」
「え? いや、なんでだよ。僕、そんな暇じゃないし」
「じゃあ、捜索隊の人と連絡がついたら、お前に連絡するわ」
走るようにして行ってしまった。おそらく、早く捜索隊の人と連絡をとりたいから、教室にスマホをいじりに行ったのだろう。
それにしても、あまりにも強引すぎないか。まぁ、いいや。連絡が来たら、ちゃんと断ればいい話だ。
そう思いながら、僕は一時間目の授業の準備をする。
________
その後、紘也と会ったのは、今日の放課後だった。
「おーい」
紘也は、玄関で僕のことを待っていた。
なにやら、テンションが高そうに見えるから、きっと捜索隊の人と連絡が着いたのだろう。
「出だしは、上々だぞー。明日、1:30にB公園な!」
「えっ?」
「何だぁー。聞こえないぞー」
「僕、協力する気なかったんだけどー」
そう言って、急いで紘也のもとに行く。
「僕、協力するなんて言ってないけど……」
「羅維都なら、手伝ってくれるよな!」
なんで、そうなるんだ。
「今度、新しくできたパンケーキ屋さんに連れて行ってやるから、な?」
最近できたパンケーキ屋さんは、駅前にあり、立地がいいことや、映える写真が撮れるとかでいつも混んでいる。無論、味は言うまでもなく美味しいとか。是非、一度は行ってみたいものである。
しかし、残念ながら、僕のような男一人が行くのにはどうも抵抗がある。周りには、一人でくるような奴などいないだろう。紘也がついて行ってくれるなら、嬉しいが……。
どうせ、このヒーロー気取りも直に終わるだろう。
「なら、いいよ。ちゃんと奢れよ」
「わかってるって。んじゃ、よろしくな! ところで、こういうのには、やっぱり名前がほしいよな」
「名前?」
「あぁ。○○探偵事務所みたいな」
「そんなのいらないよ」
「いや、必要だ。そうして、世界に名を広めるんだ」
「どうして、そうなるんだよ。本当に。頭のねじをドライバーでしめた方がいいんじゃないか?」
「なんで、そんな辛辣なんだよぉ」
「逆に、なんで世界に名を広める必要があるのさ?」
「カッコいいじゃん?」
馬鹿だろ、コイツ。人の死を解明するのにカッコいいを求めるのか。
そんなの、亡くなった人や親族に失礼じゃないのか。
「はぁ~」
「どうした?」
「先が思いやられるんだよ」
「まぁ、なんとかなるっしょ」
そこが、ダメなんだ。多分。
「んで、名前はどうするの?」
「とりあえず、思いつかないから、明日ってことで。別に、今日、連絡してくれてもいいけどな」
「わかった。じゃあね」
「あぁ。明日、B公園な」
帰り道、僕は馬鹿みたいな約束をしたことを後悔した。
警察でもわからない事件を素人が解決する?
なんで、こんな約束をしたんだろう。落ち着いて考えてパンケーキ屋さんという誘惑に打ち勝てばよかっただけなのに。
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