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愛している君へ #1 【ミステリー小説】

*注意*
・残酷描写があります。苦手な方はご遠慮ください。
・タイトルは恋愛小説っぽいけど、恋愛小説じゃないです。

我儘で申し訳ありませんが、何卒、よろしくお願いします。




 前回の話。


10月24日


「おーい、聞いてるか?」

「ごめん。何だっけ」

「おい、お前……まぁいいさ。も一回言うぞ。最近、話題のこのニュース見たか?」



 そう言って、紘也が見せてきたのは、週刊Aだった。



「これ、お前どう思う? なんか、可哀そうだよなぁ…」


これは自殺か?それとも他殺か?警察「これは自殺です!」
 山に囲まれた歴史ある町、B丘市。そこでは、今月20日に観光名所として有名なB谷で田中杏さん(21)の死体が発見された。多方面で活躍していた田中さんを悼む声は大きい。死ぬ数時間前まで笑顔を周りに届けていた田中さん。数時間のうちに自殺まで何に追い込んだものとは?
________ 

週刊A 10月22日号



「この田中杏さんって人、結構な美人さんだよな。性格とかはわからんし、見た目だけで判断するのも良くないと思うけど、俺、杏さんを幸せにしてあげたかったな……」

「紘也、そんなこと思ってこの記事見てたのか?もっと、こう、親族の方、可哀そうだなとかを考えるんじゃないのか?」

「いや、まぁ、そういうのも考えるけどさ。俺、この人が本当はどう亡くなったのか、自分で調べたいんだ」


 でた。後藤紘也がなぜか誇る行動力。正直、僕からするといい迷惑だ。多分、コイツ以外誰もがそう思うだろう。



「やめとけ、やめとけ。お前みたいな高校生が事件に乱入したって、いいことないだろ。余計にその場が混乱するだけだ。それに、警察は自殺だって言ってるし、この人がまだ現実を受け止めたくないだけだよ」

「そうか……俺はただこの人たちの役に立ちたいんだけど……」

「それなら、なんか捜索隊みたいのに入ればいいんじゃないか? あ、いや、もう死体とかは見つかっているから、解散してるか……」

「それだ! まず、その人達に事件直後について聞けばいいんだ」

「おっ、おう……。よかったな」

「勿論、羅維都も手伝ってくれるよな!」

「え? いや、なんでだよ。僕、そんな暇じゃないし」

「じゃあ、捜索隊の人と連絡がついたら、お前に連絡するわ」



 走るようにして行ってしまった。おそらく、早く捜索隊の人と連絡をとりたいから、教室にスマホをいじりに行ったのだろう。

 それにしても、あまりにも強引すぎないか。まぁ、いいや。連絡が来たら、ちゃんと断ればいい話だ。

 そう思いながら、僕は一時間目の授業の準備をする。


________



 その後、紘也と会ったのは、今日の放課後だった。


「おーい」


 紘也は、玄関で僕のことを待っていた。

 なにやら、テンションが高そうに見えるから、きっと捜索隊の人と連絡が着いたのだろう。


「出だしは、上々だぞー。明日、1:30にB公園な!」

「えっ?」

「何だぁー。聞こえないぞー」

「僕、協力する気なかったんだけどー」


 そう言って、急いで紘也のもとに行く。


「僕、協力するなんて言ってないけど……」

「羅維都なら、手伝ってくれるよな!」


 なんで、そうなるんだ。


「今度、新しくできたパンケーキ屋さんに連れて行ってやるから、な?」

 最近できたパンケーキ屋さんは、駅前にあり、立地がいいことや、映える写真が撮れるとかでいつも混んでいる。無論、味は言うまでもなく美味しいとか。是非、一度は行ってみたいものである。
 しかし、残念ながら、僕のような男一人が行くのにはどうも抵抗がある。周りには、一人でくるような奴などいないだろう。紘也がついて行ってくれるなら、嬉しいが……。
 どうせ、このヒーロー気取りも直に終わるだろう。
 


「なら、いいよ。ちゃんと奢れよ」

「わかってるって。んじゃ、よろしくな! ところで、こういうのには、やっぱり名前がほしいよな」

「名前?」

「あぁ。○○探偵事務所みたいな」

「そんなのいらないよ」

「いや、必要だ。そうして、世界に名を広めるんだ」

「どうして、そうなるんだよ。本当に。頭のねじをドライバーでしめた方がいいんじゃないか?」

「なんで、そんな辛辣なんだよぉ」

「逆に、なんで世界に名を広める必要があるのさ?」

「カッコいいじゃん?」


 馬鹿だろ、コイツ。人の死を解明するのにカッコいいを求めるのか。
 そんなの、亡くなった人や親族に失礼じゃないのか。


「はぁ~」

「どうした?」

「先が思いやられるんだよ」

「まぁ、なんとかなるっしょ」

 そこが、ダメなんだ。多分。

「んで、名前はどうするの?」

「とりあえず、思いつかないから、明日ってことで。別に、今日、連絡してくれてもいいけどな」

「わかった。じゃあね」

「あぁ。明日、B公園な」

 帰り道、僕は馬鹿みたいな約束をしたことを後悔した。
  警察でもわからない事件を素人が解決する?
 なんで、こんな約束をしたんだろう。落ち着いて考えてパンケーキ屋さんという誘惑に打ち勝てばよかっただけなのに。


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