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Remixed by 甘野充さん

桜梅桃李、私は今日からまた歩く 
Remixed by 甘野充

 私は底しれない深いふちから這い上がり、夜の街をさまよいながらあなたの心が砕けた音に思いを巡らす。  

 止めどもなくだくだくと流れるあなたの血は温かくて、それはきっとあなたの誠実さからくるものなのでしょう。  

 あなたのくやしい気持ちは、誰にも見えない。  
あなたの喉につかえた言葉は、私が爪ですくいあげて、そらに解き放してあげる。  

 きらびやかな街の灯りや花火の光が輝く夜景を眺めながら、あなたを慰める言葉を見つけようとするけれど、私の言葉は宙に浮くばかりでどこかに消えてしまう。  

 あなたは何かをつぶやいたけれど、その声は私には届かなかった。  

 あなたの唇が「きれい事ばかり」と動いたことを、私は気づいてしまったけれど。  

 まだ少し肌寒いけれど、ゆるやかな春の兆しを感じた。その優しさが、痛みを忘れさせるように、幻影の世界を思わせる。  
春の風が桜の花びらを舞い上げる光景が見えたような気がした。  

 あなたは泣いていた。  
そんなあなたの顔を、私は覗き込んだ。  
あなたから放たれた輝きを、私は決して忘れない。 だから私は人差し指に髪を絡ませて、頬杖をつく。  
 あなたの心の中につかえた悲しみを、
私はどう表現したら良いのでしょうか。  
私は理屈の合わないことが受け入れられないから、あなたを傷つけることはない。  
私の背中にある羽根は、たとえ折れても治せるけれど、あなたの心は治らない。  

 あなたは傷つかないで。  

 あなたの眼から溢れた涙の雫を、私の手のひらで受けとめて、陽のあたるところに解き放ちます。  

 ほら、見てごらん。  
たくさんの人たちに、あなたの心が届いてる。  
 ほら、見てごらん。  
あなたの涙が、虹に変わった。  
それは、あなたから放たれた七つの輝く色彩。  
さあ、顔を上げて私の眼を見て。

「みんな忘れて、笑いなさい」 

 冷たい風が吹く氷原で、私は月を見あげる。  
人との距離が測れなくて、私はまたひとり。  
桜梅桃李、私は今日からまた歩く。

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 【作品より抜粋
こんにちは、甘野充です。

 メンバーシップ企画をずっと考えていたんだけど、そもそも僕は人に合わせるというのが苦手で、お題とかリレー小説とかはやっぱり無理だと断念。
 そしてふと思ったのは、僕が編集者になってみなさんが書いた小説をプロデュースしてみたらどうかということ。
 だけど僕が口を出したら、それはもう僕の世界そのものになっちゃうよね、と思った。
 こりゃあかんわ、と思う反面、それも面白いのでは、と思ったんです。

 つまり、インスパイアされてぜんぜん違う作品になってもいいのかな、と思ったのです。
 オリジナルがあって、僕のプロデュースしたものがある。その違いを楽しむのもありかな、と思ったんです。
 僕はこれを「小説リミックス」と名付けました。

 これは音楽のリミックスのイメージです。
 オリジナル作品があって、僕がアレンジしてリミックス版を作成する。

 この企画に参加するには僕のメンバーシップのスタンダードプランに加入が必要です。
 メンバーシップ掲示板でやりとりをしながら作品を完成し、オリジナルの作者がその作品を気に入ったら作者のnoteで「Remixed by 甘野充」のクレジットで公開してもらおうかと思います。
 作品が増えたらマガジンを作ります。

 あまり長いとできないので、ショートショートに限らせてもらいます。
 すでに公開済みの作品でもいいですし、未完成のものでも良いです。
 ビートルズのジョンとポールがお互いに足りないところを補って曲を完成させたように、僕が作品を完成させます。

 僕が監修した僕っぽい作品を作ってみませんか?

イシノアサミさんに描いていただいた絵画を私が
詩にしたものを
甘野充さんに「小説ミックス」していただきました

皆さまもご自分が書いた作品を
「小説ミックス」してもらいませんか?

甘野さん、甘野さんの色と味わいが前面に出て
とても素敵で感動いたしました
ありがとうございます!

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