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「暑いから、納骨式を始めましょう」

世は、宗教アレルギーが慢性化しており
また、アレルギーが拗れている

わたしは、前職、住職さんに助けられた
社長のこだわりを住職さんが一蹴した

まだ疫病のない盆、あるご家族が納骨式をした
墓へ骨壷を入れるのが、社長
それ以外をわたしが担当することになった

うちの社長は、相手がお客様であれ「断る」
時に頼り甲斐があり、時に頑固

この納骨式でも、そうだった

故人の意向で、お骨には愛猫のお骨が混ざっていた
ご家族は長い闘病生活で他界した故人への供養と
誇らしくわたし達に語った

ところが、話を聞いた社長が
今、この場で、ブルーシートを敷き
わたしへ、人骨と猫骨を仕分けしろと言い出した
ご家族は「故人の遺言でうちの墓はそっとして」と
意思を伝えるが、社長が縦に首を振らない

ご家族と社長の真ん中にいたわたしは
炎天下、今やることじゃないと反対した

ご親族には高齢者もいらして
「熱中症が出たらどうすんだよ」と思っていた折
住職さんが予定より早く墓地に到着した
そして、すぐに揉めているのを察した

ご家族と社長の両者から話を聞いた住職さんは
「奥さんはみーちゃんと一緒ですか
それはお喜びでしょう」
サラッとご家族の味方になった

「暑いから、納骨式を始めましょう」

式が終了し、わたしは住職さんを見送りに出た

「宗派的に大丈夫?」
住職さんへ小声で訊ねると
「今は個を尊重よ、法律的には問題ないからさ」

これぐらいラフなら、宗教アレルギーは少ないかな
現代は、檀家離れを辿る中
この住職さんが独り勝ちする意味も分かる気がした