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思春期は、なかったことにした

思春期、今よりもっとアホな
自意識過剰で、情緒不安定な日があり
今よりは健全で、風呂場で歌を唄い
逆らえない感情に甘んじていた

何が理由だったか忘れたが、母の言葉で拗ね
ハンガーストライキは何度かあった
思春期は体躯が細ければ細いほど、価値がある
早朝5:30からランニングに出かけ
夜はストレッチや肌の手入れは怠らない

よって、母と口を利かず食事も取らないのは
一石二鳥と考えていた

食事をしないので、便秘になる
便秘が原因で、部活中に倒れた経験もある
正真正銘のアホだ


おしゃれが好きで、前髪を常に気にして
不要な毛が生えてくると、徹底的に抜いた

目を集中させていると、眼精疲労が起きる
近所の薬局で、除毛クリームを買い
抜くより早く脇の下が綺麗になった、明け方

刺すような痛みで目が覚め、鏡で脇を覗くと
真っ赤に腫れ上がる惨めな肌
触ると熱を持ち、朝に近づくにつれ
脇の下を閉じると涙が滲むほど痛かった

服が脇に触れると針が刺す痛み
お手洗いの鏡で前髪を直したくても
脇にブラウスが張り
二度と除毛クリームは使わないと誓った

ハンガーストライキをすると不便なのは
わたし1人では、髪に編み込みができないので
どうしても母に甘えなければいけない

「ごめん、髪、やって」櫛を渡すと
母は椅子にわたしを座らせて、器用に髪をいじる
「今日はこのリボンにしようね」
毎度ある、母からのセリフ

左右の編み込みを頭の後ろで1つに束ね
母の気分のリボンを結んでくれた

鏡の中に映る母は、口角が上がっていた
今現在の母も口角はしっかり上がっている

今になると思春期で言うことを聞かないわたしを
あんなに愛してくれて
到底、わたしは母親になれない

ご飯を食べない、口も利かない、でも身勝手に甘え
擦り寄って行くわたしは、単純に頭がおかしい

大人になり、何かの機会で思春期の話が出た
母から
「あの程度なら思春期と言わない」
人様の思春期をわたしは知らない、比較がない

それからは
わたしの中で思春期はなかったことにした