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愛や哀しみ、つながりを示すもの

風の色合いを思い浮かべると、
毎年花粉の時期に訪れる黄色の濃淡が目に浮かぶ。

2月になると森を囲むようにその色が帯となり、
自然がわたし達に警告を発しているかのようだ。

天気予報を見れば、眼球は刺すような痛みが募り、
「ゴールデンウィークまで続くのか」
不安がよぎる。
今では一年中、花粉症に取り憑かれ、
風が吹くたびに気管支へ色合いを感じる。

強風が吹く日、
雨が同じ方向へ流れる様子を眺めるのは、
子どもの頃から好きだった。


戸籍上、2歳だった。
叔母が膵臓がんで亡くなった日は残っている。

火葬の間、大人たちはお昼ご飯を食べていた。

叔父がいないことに気づき、外へ出ると、
まだ学生だった叔父が砂利の敷かれた更地にしゃがみ込んでいた。
叔父の奥さんが叔母だったからだ。

「あれがみっちゃんだよ」
叔父は指を指し、煙突から昇る煙は右へ流れ、
叔母は病院へいるのに風の中へ消えていった。

どんより曇った空に浮かび上がる叔母の色が、
今でも忘れられない。
叔父と叔母、わたしの手を重ねて握りながら、
「青春時代」と歌っていた光景。

ロペというシャム猫がわたしへ寄り添うようになり、今思えば学生をやっている叔父よりも、
ロペにとっての家族はわたしだった。

生涯忘れることのない風の色合い。
40年経っても、何が本物で何がどうであるかは、
さほど重要ではない。

風の中に漂う思い出は、私の大切な存在があり、
今もなお心に息づいている。

風の色合いはただの色ではなく、
愛や哀しみ、つながりを示すもの。

#シロクマ文芸部
#小牧幸助さん

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