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Photo by
hidemaro2005
ショート: 優しさと暴力
呼び出しを食らった私は、
目の前で自分の悪口を聞かされている。
雑で、理解力がなくて、大嫌いなんだって
聞かされている。
「優しい人が沢山いる世界は、君みたいな外道はいないんだ」
小春日和は窓からカップに影を作り、
余った光が蜃気楼のように揺れていた。
眼に浮かぶ魚眼レンズで、徹くんを正視できない。
穴の中の君に贈る、私からの言葉を飲み込む。
徹くんは「互いに理解できるはず」という前提で
私と接して、結局は理解し合えず幻滅し、
次第に敵意へ変わった。
「自分と異なる考え方をする人が存在する」
単純にそのまま受け入れ、互いに理解し合う必要はない。
世界には色んな人がいるのが当然、ただそれだけ。
相互理解を優しさと思っている徹くんは、
きっと「自分の考えを相手に理解してもらいたい」という方向でしか、考えていないのではないか。
それって、ただの暴力だよ。
魚眼レンズは水になり、頬からセーターへ落ちた。