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短編: 雑食女子の巻き込まれ事故

歪な三角関係は、巻き込まれると厄介で
第三者目線だと優位で優越感に包まれる
『ムカつく女=わたし・莉子』だと思う

学生時代の友達、葵ちゃんは橘さんが好きだと
相談があった日から
何かあれば、葵ちゃんからわたしは呼び出しを受け
まだ見ぬ橘さんの人物像と交流を耳にしていた

葵ちゃんの喜怒哀楽は橘さんに左右され
わたしから見れば
「たったそれだけで?」
葵ちゃんが泣いて、わたしは慰める

2ヶ月ぐらい、そんな日が続き
「今度、莉子に橘さんを会わせたい」
葵ちゃんの浮かれ具合に閉口していた

葵ちゃんのバイト先の取引先の人が、橘さん

橘さんの職場へ橘さんが残業しているのか
こんなストーカーちっくな行動も付き合っていた夜

「橘さんと話してきていい?」
葵ちゃんは残業している橘さんの姿が見え
橘さんの事務所にお邪魔すると言い出した

わたしは外で待っているからご自由に
葵ちゃんを送り出したと思ったら
「橘さんが莉子を見てみたいって」
葵ちゃんに呼び出され
わたしが事務所に入ったのが運の尽き

事務所でタバコを吸う橘さんは
顔立ちやスタイルが反町隆史に似て
一瞬で「この人、モテる人」
葵ちゃんが夢中になるのも分かるオーラ

葵ちゃんが橘さんへ健気に話題を振っている
感高い声と邪気のない笑い声
1人が喋り、1人で笑っている

でも橘さんは沈黙し、わたしの目を見ていた
獲物を捕らえる動物のように瞬きしない眼

ここからは、秋の地獄まつり

翌日、橘さんは葵ちゃんへ連絡し
莉子に会いたいと催促してきたらしい
「じゃ、橘さんが休みの日に3人で遊園地へ
行こう!」

わたしが断っても、葵ちゃんは数回打診してきた
葵ちゃんはまだ気づいてなかった
橘さんと遊園地に行ける喜びで
自らの提案が自らの首を絞めるのを

橘さんも甘かった
いや、故意だったのかもしれない
遊園地で葵ちゃんが見てないと思い
わたしの髪を触り、手を握ってきたこと

遊園地に行った後日
「橘さん、莉子が好きなんだって
葵ね、橘さんが幸せになるのが嬉しいから
橘さんと付き合ってあげて」
葵ちゃんが号泣しながら、わたしへ頭を下げる

わたしは過去にも
友達が好きな人はわたしで、恨まれてきた

わたしには不可抗力としか言いようがない
言葉を交わしたことがない相手の想いを先走り
「わたしのことを好きならやめてね」
とんだおめでたい女で
気づかないものへ言える訳がない

正式に橘さんから交際の申し出があり
その10日後
橘さんの親や親戚、友達の家へ
『私中引き回しの刑』
見世物じゃないんだから…祭囃子は続いていた

#肉食と草食の物語
#山根あきらさん