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『真夜中の五分前』~ルオランか、ルーメイか

春馬くんのお誕生日に、ドリパスで『真夜中の五分前』を見た。

行定勲監督のその世界観の中で、この上ない美しさで佇む春馬くんを大きなスクリーンで見て、深く陶酔する。その時のことを書いた。

本記事では、映画の核心に触れる、最後に残ったのは姉妹のどちらか、という点について、私なりの見解を綴りたい。これから見る方は、見終わってからこちらに戻ってきていただきたい。

双子のルオランとルーメイ

双子というのは、同じものを好きになったり、離れていてもお互いの気持ちがテレパシーでわかったり、同じような体験をしたり、とシンクロニシティが起こると言われることが多い。私自身双子ではないし、双子の友達もいないので本当のところはよくわからないが、特に一卵性双生児の場合、姿かたちは激似で生まれたタイミング、環境も同じ故、とかく比較されるだろうし、それ故に一番違いを意識する他人なのだと思う。それでも当然個々の魂は個々として存在するわけで、自分にとってとてもデリケートな相手なのかもしれない。

本作品のルオランとルーメイについても、それぞれに劣等感や羨望の想いが見え隠れする。
ルオランはルーメイに対して、その奔放さや大胆さ、華やかさに。ルーメイはルオランに対して、その聡明さ思慮深さ、才能に。

そして、ルオランとルーメイは小さい頃から、外見上自分たちの見分けがつかない世の中に対しての揶揄だったり挑発だったりを込めて、いたずらで時々入れ替わったりしていたのだろう。

大人になっても入れ替わったりしていたのだろうか。
ゴルフの後、ルオラン、ルーメイ、良、ティエルンでお酒を飲んでいるとき、ルーメイがルオランに「どちらの人生も楽しめばいいじゃない」と言うから、時折入れ替わったりしていたのかもしれない。でも、恋愛のパートナーに対しては入れ替わっていなかったのではないかと思う。それが、映画館のところで、ルーメイと間違われてファンに囲まれるルオランをティエルンが助け出した時、自分をルーメイと信じて疑わなかったティエルンに対してルオランは思ったのではないか。何故私じゃなかったの?と。

生き残ったのはルオランか、ルーメイか


生まれた時から一心同体のように一緒で、いろんなことに共鳴しあい一番の理解者でもあった姉妹。おそらくお互い一番大事な人だったのだと思う。だけど、もともと、ティエルンに恋をしたのも、女優になりたかったのもルオラン。それをルーメイは横から奪ってしまう。愛する人も夢も。
ルオランへの羨望と嫉妬心からルーメイは意図的に奪っていったのではないかと思う。愛情と羨望と嫉妬と憎悪と、いろんな感情が複雑に絡み合う双子の姉妹の心情。

良に出会い救いを求め、癒されていくルオランだが、良もまた過去の恋を捨てきれず、ルオランにプレゼントしたのは五分遅れた時計。今は亡き恋人が五分遅れた人生を生きていたという。またしてもルオランは自分の人生ではなく、その元恋人の人生を生きているような気がしたのではないか。


姉妹で出かけたモーリシャスの教会で、ルオランはそこに置いてあったロザリオと引き換えに良からもらった時計を置き去りにする。それは、もう誰かの人生ではなく自分の人生を生きるというルオランの意思。

そして起こったモーリシャスでの事故。

生き残ったのは、姉のルオランか妹のルーメイか。


私は、今回スクリーンで見てはっきりと浮かんだ。ルオランだ。

運命のいたずらでルーメイが亡くなり、それを機にルオランは、もともと自分の望んでいた奪われた人生を、ルーメイになりかわり生き直そうとする。ティエルンの愛を得、女優の座を得る。
だけど、奪われたと思っていた人生は、やはり自分のものではなかった。やはりそれは妹ルーメイの人生だったのだ。
ルオランはもう一度モーリシャスのあの教会を訪ねる。あの時計を取り戻すため。それは、本当の自分の人生を生き直すため。

良は、どの時点で気づいていたのか。
モーリシャスの病院で、目を開けた彼女が真っ先にティエルンを見つめ手を伸ばした時から?
ティエルンに頼まれて、彼女に会いに行った時から?
ティエルンに去られ傷つく彼女を受け入れ、キスをした時から?
再びモーリシャスから戻った彼女がひっそりと返しにきた時計が正確な時刻を指しているのを見たときから?

おそらく、最初からルオランだと気付いていたのではないか。ティエルンを選びルーメイの人生を選んだルオランだと。
ティエルンに頼まれて彼女に会いに行った後、ティエルンに激昂して「じゃあ、どうして(あなたが選んだのは)ルオランじゃなかったんですか?」というようなことを叫ぶ。人生をかけて、ルオランはティエルンを選んだ。その想いを踏みにじるティエルンに憤って。
そしてどこまでもルーメイであろうとするルオランに寄り添って、ルーメイとして扱おうとした良。
ルオランは再び思ったのではないか。良にも、自分を生きて欲しいと。偽りのない本当の自分で。

ルオランのモーリシャスへの再びの旅は、自分へ戻る旅。ルオランも、良も。

そっと返された時計を見つけルオランを追いかけようと外へ出た良。でも、その時計が正確な時刻を示していることが、「私は私を生きる。あなたもあなたを生きて。」というルオランの強いメッセージだと確信する。そのあと二人は・・・?

結ばれなかったんじゃないかな、と思う。そして、それぞれ新たな人生を生きる。

・・・と、今回スクリーンで見ることによってやってきた私の見解。
いかがでしょう?

もしかしたら、次に見たら違うかもしれないけど。

異なる見解をお持ちの方、コメントいただけると嬉しいです。

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見れば見るほど好きになる映画『真夜中の五分前』。
こんな素敵な作品を残してくれた春馬くん、改めてありがとう。




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