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著…桂歌丸『歌丸ばなし』

 歌丸師匠の落語への情熱が伝わってくる本。

 「井戸の茶碗」「おすわどん」「鍋草履」「紙入れ」「壺算」「つる」「竹の水仙」「紺屋高尾」といった噺の他に、『笑点』のエピソードも収録されています。

 文章を読んでいるだけで、師匠の生き生きとした声の調子・表情・仕草がイメージ出来るから不思議!

 まるで自分も他のお客さんと一緒にアッハッハと笑っているかのような気持ちで読めます。

 枕を読むだけでも自然と笑えてくるから不思議。

 「これはあたくしの言う洒落じゃないです。黄色いラーメン屋が言う洒落です」
(P11から引用)
 「お前の先祖は小遊三か? その顔で表を歩くのか」
(P27から引用)
 「昔からあたしは、化け物と円楽が大嫌いな性分でございまして」
(P66から引用)

 といった風に、『笑点』と絡めたネタも噺の中に仕込まれています。

 初めて落語を聞くようなお客さんにも常連のお客さんにも、いかに笑ってもらうか工夫されていたことが伝わってきます。

 奥さんの冨士子さんの話題もちょくちょく登場。

 「頭の毛でも毟られたらえらいことになりますから」なんて自虐的な冗談も飛び出してきて面白いです。

 まさか本当に毟られてはいなかったでしょうけれど…。

 …ですよね?

 この本の第二弾も出版されているそうなので、読んでみたいです。

 また、わたしが特に感銘を受けたのは、

 「ネタ帳を見ながら、あたくしは思います。まだ工夫が足りない。こんな風にしたらお客さんが笑ってくれるんじゃないかしら。若手にも、そんな気持ちで芸を受け継いでもらいたいですね」
(P244から引用)

 という言葉。

 道を極めるとはこういうことなのでしょうね。

 本当に素敵な人。

 わたしも実際に歌丸師匠の噺を聞いてみたかったです。

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