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著…角皆尚宏『日本木造校舎大全』

 「懐かしい…」と目を潤ませる方が多そうな本。

 すり減った木目の廊下。

 固くて小さな机と椅子。

 冷たい風が吹き込む渡り廊下。

 人体模型や二宮金次郎像。

 旧型のストーブやテレビ。

 軋む階段。

 上履きをはいて駆け回る小学生たちの笑い声が今にも聴こえてきそう。

 なのに、時間が止まっている…。

 静かな空間に木枠の窓からあたたかな光がさす情景が、郷愁を誘います。

 この本の著者は五歳の頃に木造校舎と出会い、それからその魅力に夢中になってきたそう。

 しかし、著者自身は小学四年生から不登校。

 ほとんど学校に通わなかったらしいです。

 けれども、ずっと全国を巡っては、木造校舎の調査や撮影を続けてきたそう…。

 …だからこそなのでしょうか?

 「学校」という世界への強い憧れが、この本からひしひしと伝わってきます。

 きっと、著者が通っていた小学校がこの本で紹介されているような木造校舎だったら不登校にならなかったなんて単純な理由ではなく、そこには複雑な思いがあるのでしょう。

 著者の胸中ははかりかねますが、写真も文章も美しくて、この本を読んでいると、赤いランドセルを背負っていた頃の自分にかえったような気持ちになります。







 〈こういう方におすすめ〉
 木造の校舎に憧れがある方。
 レトロな建築物が好きな方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間くらい。

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