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著…山田宗樹『百年法(上)』

 「老けたくない!」と願う人にとっては夢のような世界を描いた小説です。

 ※注意
 以下の文には、結末までは明かしませんがネタバレを含みます!


 この世界には不思議な技術があります。

 もし20歳で不老処置「HAVI(ハヴィ)」を受けた場合、その人はその後何十年経っても、20歳よりも老けることはないのです。

 なんだか羨ましくなりますが、この世界ではある恐ろしい法律が制定されました。

 それは、「不老処置を受けてから100年経った者は必ず死ななければならない」という法律。

 それが生存制限法すなわち百年法

 古い世代が居なくなることでどんな効果が見込めるかというと、まず、就職難の解消。

 古い世代がいつまでも現役で仕事を続けるので、若い世代は職にありつけません。

 けれど、古い世代が居なくなれば、その分ポストが空き、街の失業者が減って、治安も改善に向かいます。

 また、肉体は若いままでも、人の心は老いていきます。

 心が老いた人間は新しいものを生み出せないので、様々な分野の技術革新がストップし、日本が他国から遅れを取ることになってしまいます。

 だから、若い世代に活躍の場を与える必要があります。

 皮肉なことに、国民が老化しなくなったと思ったら、国が老い衰えてしまったので、百年法によって日本を蘇らせようという狙いがあるのです。

 百年法の適用を拒否した者は犯罪者として摘発され、強制的に安楽死させられます…。

 自分ならどうするだろうか?

 まず不老処置を受けるだろうか?

 受けないだろうか?

 わたしなら百年法の施行に賛成するだろうか?

 反対するだろうか?

 と考えながらわたしはこの小説を読みました。

 ●既に百年も生きたのに尚「生き延びたい」と葛藤する人
 ●生存年数が百年に達しておらずまだ生きられたのに自殺した人
 ●百年を待たずして病気になり余命わずかな人
 ●最初から不老処置を受けずに老衰で死んだ人

 といった人たちのエピソードを読んでいると、「一人一人に合ったちょうどいい人生」って難しいんだな…と考えさせられました。

 「何かを成し遂げたい」と志している人には百年は短すぎるでしょうし、「世の中に絶望している」という人には百年は長すぎるでしょうし…。



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