監督…ダニエル・コーエン『シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜』
空腹時に観ると危険な映画です。
観ると必ずお腹が空くからです。
たとえば、「レモン風味の海の幸のコンカッセ」、「春野菜のいかだに虹のソース」、「ヒメジと栗かぼちゃのスープ」…。
メニュー名を聴いただけでヨダレが出そうなこれらのお料理を作ったのは、ジャッキーという名前の男性。
このジャッキーは、お料理を一口食べればどんな食材がどう調理されたか瞬時に言い当てられる繊細な味覚、有名シェフたちの数百ものレシピを丸暗記する記憶力、それらのレシピを忠実に再現する驚異の調理能力を持っています。
こう書くと、「ジャッキーってきっと社会的にかなり成功しているんだろうなあ」という印象ですが、全然そんなことはありません。
ジャッキーはお料理をうまく作れるけれど、人間関係をうまく築くことは苦手中の苦手。
今それ言ったらダメだよってことを言ってしまうし、逆に今それ言わないとダメだよってことを言えずにいるし…。
内縁の妻のお腹が大きいのに、ジャッキーは無職。
この無名の天才シェフ・ジャッキーは、縁あって憧れの有名シェフ・アレクサンドルにせっかく雇ってもらったのですが、しょっぱなから喧嘩ばかり!
普通、いい歳をした大人が喧嘩をするシーンって見苦しいものですが、どういうわけかジャッキーとアレクサンドルの喧嘩は微笑ましいです。
やいのやいの言い合っていた2人が、本音をぶつけ合ううちに、いつの間にか仲良くなっていて。
ちなみに、アレクサンドルを演じるのはジャン・レノ。
アレクサンドルが料理中にミスをすると、ジャッキーが容赦なく叱りつけるので、子どもの頃に映画『レオン』を観てジャン・レノの渋さに夢中になったわたしとしては「おお…!ジャン・レノがめちゃくちゃ叱られている…!」と衝撃を受け、「アレクサンドル頑張れ!」と無性に応援したくなります。
筋が通らないことをするならたとえ相手が著名な人であってもしっかり諌めるジャッキーと、えーっ俺雇い主なのに…と戸惑いながらも聞く耳をちゃんと持っているアレクサンドル、このコンビが「お料理を作るのが楽しい」「大事な人に喜んでもらえて嬉しい」という原点に立ち返っていくのが素敵。
ジャッキーにもアレクサンドルにも好感が持てますし、他の登場人物たちのほとんどが良い意味でとぼけた人たちばかりなので、この映画を観ていると肩の力が抜けてリラックス出来ます。
また、わたしはこの映画の中でとびきり好きなシーンがあります。
それは、老人ホームのお年寄りたちが、ジャッキーの作ったお料理を食べる前は「何なんだこれは?こんなもの食べないぞ」と嫌がっていたのに、食べた後はすっかり虜になって「ジャッキーのお料理を出して!」と騒ぐシーン。
食べる前は皆さんあまり活気が無かったのです。
ところが何ということでしょう。
食べた後はまるで「生きがいを見つけた!」と言わんばかりに皆さん輝いているではありませんか。
BeforeとAfterでこの違い!
美味しいお料理が持つ力って凄いですね。
生命力が明らかに強くなっている…!
もしかしたら皆さん、「レストランまでお出かけしてジャッキーのお店でごちそうを食べませんか?」と誘ったら、張り切ってリハビリをするかもしれませんね。
それで元気になって、老人ホームの外に出て、街を行き交う人たちの様子や草花の風情に季節のうつろいを感じて、脳に色んな刺激を受け、ごちそうを食べることで栄養状態が良くなり、「もっと食べたい」とリハビリに励む…というポジティブな循環が生まれて、更に元気になるかも!
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