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企画・編集…GENERATION TIMES 編著…矢守克也『被災地デイズ (時代QUEST)』

 「自宅で地震に遭遇。10分後に津波が来るという。近所には一人暮らしのおばあさんがいるが様子を見に行く? Yes or No」

(企画・編集…GENERATION TIMES 編著…矢守克也『被災地デイズ (時代QUEST)』 P22から引用)


 といった問いが載っている本。

 こういう問いに正解は無いと思います。

 それでも、自分なりに「Yes」や「No」を考えながら読むのがおすすめです。

 本当は他にも選択肢が欲しいですが、いざという時にはきっとどちらかしか選べないでしょう。

 決断する力を鍛えておくことが大切です。

 緊急時は、迷っている間にどんどん時間が過ぎ、あっという間に両方とも選べなくなってしまうでしょうから。

 さて、さきほどの問いについては、理性的に考えれば、10分後に津波が来るのならおばあさんを助ける時間は無いので自分だけでもすぐ避難すべきでしょうが、わたしなら…理性より感情を優先し、おばあさんを背負ってでも一緒に避難出来るよう何とか頑張る方を選んでしまいそうです。

 おばあさんを助けに行ったことで、自分もおばあさんも津波の犠牲になる可能性は高いけれど…、自分は生きのびたけれどおばあさんは亡くなった場合、一生心に傷が残りそう。

 勿論、色んな後悔を抱えながらでも生きていかなければならないのが人生だけれど…。

 また、この問いを読んで、ふと、わたしはある新聞記事のことを思い出しました。

 その記事は、東日本大地震で津波が襲いかかってきた時、おばあさんと孫娘とで逃げたけれど、おばあさんが疲れてもう走れなくなって孫娘だけを先に逃がし、おばあさんは津波にのまれ、その孫娘は自分だけ逃げたことをとても後悔している…という記事でした。

 逆に、おばあさんが生き残って孫娘が亡くなってしまっていたならば、おばあさんは悲嘆にくれていたでしょうし、むしろおばあさんは孫娘にだけでも助かって欲しいから孫娘だけ先に逃がしたのでしょうけれど、おばあさんのことを大好きであればあるほど孫娘は辛いでしょうね…。

 悪いのは津波であって、生き残った孫娘は何も悪くないのですから、孫娘のこれから先の人生にたくさん幸せなことが起こることをわたしは心から祈っています。

 また、他にもわたしはこの本の、

 「あなたは、救急隊員です。災害現場に駆けつけると、助かりそうな大人と、心肺停止の子どもの二人がいました。まず、子どもから運ぶ? Yes or No」

(企画・編集…GENERATION TIMES 編著…矢守克也『被災地デイズ (時代QUEST)』 P36~37から引用)


 という問いにも考えさせられました。

 救急隊員ならばトリアージに従うのかもしれませんが、どちらを選んでもきっと苦しいでしょうね…。

 なお、トリアージとは、多くの負傷者が同時に発生した時に救助する優先順位を決め、

 赤…急いで処置すれば命が助かる人
 黄…多少遅れて処置しても命の危険がない人
 緑…専門的な処置をしなくても大丈夫な人
 黒…既に死亡している人、もしくは処置をしても明らかに命を救えない人

 という風に色分けし、救える命を少しでも多く救えるようにするもののことです。

 大人に黒を付けるのも辛いでしょうが、子どもに黒を付けるのは尚更辛いでしょう…。

 何と言ったら良いか分からないですが、いつかわたしが被災して怪我を負い、黄や緑を付けられたとしても、赤を付けた人の処置に当たる専門職に対して「わたしを早く手当てして!わたしも怪我をしているのよ!」などと要求しない人になろうとこの本を読んで心に決めました。

 わたし自身は何の力も持たないけれど、せめて、救える命を身勝手に邪魔することだけはすまい、と誓います。



 〈こういう方におすすめ〉
 災害時の対応について改めて考えるきっかけが欲しい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間前後くらい。

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