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著…小林泰三『玩具修理者』

 こんばんは。

 奇妙なバッドトリップ感を味わってみたい方におすすめの本をご紹介します。

 短編『玩具修理者』と小長編『酔歩する男』を収録した文庫本です。

 表題作である『玩具修理者』は、いくら小説の中のこととは言え、猫や子どもが酷い目にあうのがかわいそうで、わたしには合いませんでしたが、生物と無生物の違いをめぐる議論の部分は興味深く読めました。

 わたしのおすすめは『酔歩する男』。

 読んでいると、読み手である自分が居るのが本当に自分の思う「現実」なのか不安になってくる特殊な作品だからです。

 登場人物たちは会話をし続けるのですが、大事なところで決定的にボタンをかけ違っています。

 当たり前のように流されていくその会話に潜む違和感がとても不気味。

 主人公の目の前に現れるのが「見知らぬ親友」であるというのもまた怖い。

 亡くなったはずの恋人の遺した「もう変わってしまっているかもしれませんけど」といった言葉も意味深。

 なんだか世界線がゆらゆらゆらゆらとエンドレスに揺れ動いてメビウスの輪のような形にグニャリと歪んで繋がっているかのような奇妙なストーリー展開です。

 わたしはこの作品を読んでいると船酔いのように嫌な感覚に襲われるのですが、その奇妙さが癖になり、時折読み返しています。

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