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著…上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』

 短歌って、なんだか敷居が高くて素人は手を出しにくいイメージがありませんか?

 しかし、この本に載っている短歌はどれも、わたしが抱いてきた短歌のイメージを覆しました。

 どれも、まるで光の矢みたいにまっすぐ心に突き刺さります。

 どれも、心の奥に刺さってちっとも抜けません。

 この本は、「短歌って、こんなに自由なんだ。こんなに自分の気持ちを赤裸々に詠んでいいものなんだ…。わたしも詠んでみたいな」と思わせてくれました。


 わたしがこの本の中で特に好きな歌を敢えて三つに絞るならば、

 「サザエさんはパーを出してる来週が来ない人にも来るわたしにも」

(著…上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』P11から引用)

 「やりたいことやった結果として生まれてい
るわたしのやりたいことは」

(著…上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』P44から引用)

 「バトロワに世界がなっても誰ひとり殺すことなく花になる人」

(著…上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』P114から引用)


 の三つです。

 なぜわたしがこの三つにこんなにも惹かれるのか?

 それを言葉ではうまく説明出来ません。

 短歌は言葉で出来ているのに。

 なんだかとても不思議な感覚です。

 もしかしたら、どうしようもない自分がただぽつんとこの世に存在していて、いつの間にか静かに去っていく、そんな感じに共鳴するのかも…?

 また、『あとがき』に書かれている、自分の中には「ひろゆき」や「和民」という人格がいるのだが友達にはなりたくない…という著者の話も面白いです。

 「ひろゆき」はさも正論っぽいことを言い、「和民」はやたらと根性論を強要してノルマを課してくるのだそう。

 「いつか老人ホームに入るころには、わたしの中の全てのわたしから、死ぬほどモテたい」

(著…上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』P141から引用)


 と著者は言います。

 わたしはその頃も著者の心の中で「ひろゆき」と「和民」が生き残っているのか気になります。

 著者と「ひろゆき」と「和民」。

 いずれは三人で煎茶を飲みながら仲良くひなたぼっこをしたりするのでしょうか?





 〈こういう方におすすめ〉
 短歌を詠んでいる、又は詠んでみたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 30分〜1時間くらい。

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