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著…池澤夏樹『きみのためのバラ』

 美しい文体が心を打つ短編小説集。


 わたしのお気に入りは、この本に収録されている『連夜』。

 恐ろしい物語なのか、幻想的な物語なのかわからぬまま読んでいて、ふと、「わたしもこんな経験をしてみたい」と思ってしまいました。

 大昔に生きていた人の魂が、恋する人をただひたすらに追い求めて、現代を生きる人の肉体に宿る…。

 そんなロマンチックなイメージが浮かぶ物語なので。

 この物語の登場人物が、恋のためにその体を使われた女性に対して、こう言います。

その名までは知らないけれど、あんたは判るはずよ。

(著…池澤夏樹『きみのためのバラ』単行本版P78ページより引用)

 と。

 意味深な言葉ですよね。

 「判る」のは、きっと本当は知っているから。

 はっきりと思い出せないだけで。

 もしそうだとしたら、この物語はとても切ないのです。

 せっかく生まれ変わっても、同じ運命を繰り返して離れ離れになってしまうということですから…。

 けれど魂たちはそれでも、生まれ変わって再び出逢わずにはいられないのかもしれません。




 〈こういう方におすすめ〉
 美しい短編小説集をお探しの方。

 〈読書所要時間の目安〉
 3時間くらい。

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