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著…新井俊邦『神主はつらいよ とある小さな神社のあまから業務日誌』

 宮司さんの悲喜こもごもを素直に綴ったエッセイ。

 「職業は宮司(神主)です」と聞くと、つい、神聖で近寄りがたいイメージを抱いてしまいがち。

 しかし、この本を読むと宮司さんの人間らしさが伝わってきて、親近感が湧きます。

 「滝に打たれる修行をした経験はありませんが、神社の草取りや掃除には精を出しています。一日の終わりの晩酌が大好きな、どこにでもいるオジサンです」
(P3〜4から引用)

 という著者の飾らない人柄に惹かれてグイグイ読めます。

 著者はサラリーマンをしていましたが、お父様(宮司)が倒れたのをきっかけにその跡を継ぎ、メインの神社1社と他の神社13社を兼務することになったのだそう。

 著者が宮司を務めるのは、地域の方々に愛されるタイプの神社。

 観光客も多く参拝する著名な神社の宮司とは収入も違いますし、特に繁忙期は一人で多くの仕事をこなさなければなりません。

 とんでもない重責だと思いますが、その激務について、

 「14のコンビニを経営する店長並みの忙しさです」
(P32から引用)
 「昔、〝ザ・ベストテン〟という生放送の歌番組があったのですが、秒刻みで動くアイドルたちが、歌い終わると、タクシーで移動するシーンをよく見たものでした。まさに、あのアイドルのような戦略を練ったのです」
(P35から引用)

 と笑いに変えられる、著者のユーモア溢れる文章センスが素敵。

 この本を読んでいると、著者のことが「歌ったり踊ったりはしないけれど、祝詞を詠めて神社を綺麗に保ってまるで大喜利のように面白いことを呟けるスーパーアイドル」のように思えてきます。

 また、著者が御朱印を書くために綺麗な字を猛特訓した時のエピソードを読み、わたしは「なんかごめん!」と謝りたくなりました。

 わたしも御朱印を頂くのが好きな人間の一人なので。

 汚い字で書いていただくよりも綺麗な字で書いていただいた方がご利益があるような気がしてしまうのですが、この本を読んで、書く方の苦労が伝わってきましたので、今後は味のある字で書いていただいた時もありがたく頂戴しようと思います。

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