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由来を知って、食す

私がまだ実家暮らしをしていたとき、「ヨーグルト」は冷蔵庫にあってあたりまえのものだった。
小腹が空くと、誰に断ることもなく冷蔵庫から一つ取り出して、ペラっとカラにした。
十分に味わっていたかもあやしい。

一方、京都で一人暮らしをはじめると、この状況は一変した。
冷蔵庫にあってあたりまえだったものが、意識して購入しないかぎり、食べることのないものに変わってしまった。

ある日、この現実に気づいた私は、定期的に食べる習慣をつくるため、意識してヨーグルトを買っていくことに決める。
実家暮らしの頃、あれだけヨーグルトを食べた記憶があるのに、具体的に何という名前のヨーグルトを食べていたか思い出せなかったこともあり、今後はきちんと商品名を把握して食べようと、無意味な目標もたてた。

私が最初に購入したのは、「明治ブルガリアヨーグルトである。定番中の定番、なんのひねりもない。
食べる前に気になったのが、この商品名にある「ブルガリア」の意味である。色々と書籍にあたってみると、ジューン・ハーシュ著、富原まさ江訳『ヨーグルトの歴史』(原書房)というド直球なタイトルの本に、その答えがあった。以下に、引用してみる。

「ブルガリアはブルガリアヨーグルトの特許を有しており、ほかの国はその名を冠した菌株を使用する際には許諾を得なければならない。つまり、「ブルガリアヨーグルト」という名で販売するためにはブルガリアで製造された菌株を購入して種菌にする必要があるということだ。」(『ヨーグルトの歴史』原書房、P103)

世の「明治ブルガリアヨーグルト」ユーザーは、このことを知った上で食べているのだろうか。気になるところである。
『ヨーグルトの歴史』(原書房)には、「明治ブルガリアヨーグルト」そのものの歴史についても記述があった。ついでなので、この記述も引用しておきたい。

「日本はヨーグルト市場に本格的に参入したのは、大手の明治乳業(現在の株式会社明治)が1971年に初めてプレーンタイプのヨーグルトを発売したことを契機とする。中国とブルガリアの関係と同様に、明治もブルガリアとつながりを持つことで売り上げを伸ばしたいと考え、1973年にブルガリア政府から国名使用許可を得て「明治ブルガリアヨーグルト」を発売する。さらに1996年には特定保健用食品の表示許可を取得するなどの革新的な取り組みを続け、売り上げ増につなげている。」(『ヨーグルトの歴史』原書房、P109)

哲学者のバートランド・ラッセルは、著書『怠惰への讃歌』(平凡社、P48)の中で、桃や杏の由来について詳しく調べたところ、より果実を美味しく味わえるようになった、と述べている。
私も今回、ラッセルに倣って(?)ヨーグルトについて色々と調べたのだが、まだ味に変化は感じられていない。
まだまだ勉強不足のようだ。


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