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在野研究一歩前(41)「読書論の系譜(第二十三回):内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』(山縣圖書舘、1900)④」

 今回も前回同様、内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』(山縣圖書舘、1900)内で紹介されている、「偉人」の「読書」論を取り上げ、簡単な解説を加えたいと思う。

マキアベリ(マキャベッリ)
「夜來れば余は余の家に歸りて余の書齋に入る、……………余は古人の古風の殿に入り其處に彼等の慈愛に富める歓迎を受け、余に適し余が余の生涯の目的として追窮する糧を以て自ら養ふ、此數時間に人生の悲惨はもはや余を惱まさず、余は凡ての苦悶を忘れ;余は貧を恐れず;何となれば余は余の身を余が今語りつヽある人に托したればなり」(P13)

ニッコロ・マキャヴェッリは、イタリア、ルネサンス期の政治思想家で、フィレンツェ共和国の外交官。主著『君主論』はあまりにも有名である。
 マキャベッリは語る。
 夜になれば、私は自身の書斎に入る。
 私は書籍を通じて、先達から慈愛のある歓迎を受け、自身の人生をよりよくするための「糧」を手にし、自らを成長させる。読書の時間においては、私は人生における悲惨・苦悶から解放されて、貧しさへの恐れもなくなっている。それは、自分の身を、書籍に托しているからだろう。


ジョン・リリー
「汝の書齋を充たすに書籍を以てするは、汝の財布を充たすに金を以てするよりも、汝に取りては遙に似合はしき事なり」(P15)

ジョン・リリーはエリザベス朝イギリスの作家、戯曲家、大学才人の最年長者(大学才人とは、エリザベス朝期のイギリスで活躍した大学出身の劇作家たちのこと)。主著は『ユーフュイーズ』『ガラシーア』で、ウィリアム・シェイクスピアの作品に影響を与えた。
 ジョン・リリーは言う。
 私が自分の書斎を書籍で充たすのは、私が自分の財布をお金で充たすよりも、はるかに自分に似合っている行為である。
 ―「金」より「書籍」。ジョン・リリーの書斎を一度でいいから拝んでみたいものだ。

ベーコン
「辯難攻擊の爲め、或は輕信假定の爲め、若しくは談話議論の種を得ん爲めにせずして、熟慮考察の爲めに讀書すべし、讀書は圓滿の人を作り、討議は實用の人を作り、著述は正確の人を作る
 讀書に從事する時、人其心に定めし問題の何たるに關せず、彼は其爲めに特別の時間を設くべきなり」(P15)

フランシス・ベーコンは、イギリス古典経験論の創始者と呼ばれる哲学者。「知識は力なり」との言葉や、「イドラ」の概念の提唱で知られる。主著は『ノヴム・オルガヌム』。
 ベーコンは語る。
 読書は、ある相手への弁論攻撃や、手っ取り早い理解、話のネタ探しなどのためにするべきではない。熟慮考察のために読書をするべきである。読書は、不満や争いの少ない人間をつくり、討議は実用性の高い人材をつくり、著述は正確性をもつ人間をつくる。
 読書は、それに向き合っている個々人がどのような問題関心を持っているかに関係なく、きちんと時間を割いてなされるべきものである。


 以上で、「在野研究一歩前(41)「読書論の系譜(第二十三回):内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』(山縣圖書舘、1900)④」」を終ります。次回も是非お読みください。



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