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あらすじ

 皆さんは、三浦綾子の『塩狩峠』をご存知だろうか。

 私が本書の存在を知ったのは高校一年生のときで、実際に読むことになるのは大学二回生時である。
 知ってから読むまでに数年の時間を要したのは、単に私が『塩狩峠』に無関心だったからではない。私が明確な意思をもって、この本は読まない、と決め込んでしまったからである。

 『塩狩峠』を初めて知るのは、書店に置いてあるブックフェアの無料小冊子を通して。数十冊分の本のあらすじが列記されている中に、『塩狩峠』のそれもあった。
 タイトルだけではどんな話なのか分からなかったために、取り敢えずあらすじを読む。その結果、「この本を読むことはないな」と、意思を確定してしまう。
 あらすじが示すストーリーラインに、シンプルに興味が持てなかった。まあ、人間であれば、そういうこともある。ただここで問題になるのは、本当にそのあらすじが、『塩狩峠』の核をうまく表現できているかどうかだ。個人的な感想を言えば、あらすじと『塩狩峠』本体の間には、見逃せないズレがある。

 あらすじで中心的に描かれるストーリーは、本文440ページ中、ラスト30ページ分をまとめたものとなっている。その要約は正確になされているが、そこが全面的に押し出されることによって、『塩狩峠』のイメージが偏って未読者に伝わるのではないか、と考える。その結果、私自身がそうであったように、手に取らない選択をする人も出てくるだろう。

 ここまで文章を読んでくださった方の中には、「はやく実際のあらすじを紹介しろ」と思っている人もいるだろう。
 ただ、今回は考えがあって、あらすじを直接引用することはしない。
 ぜひ未読の方は、これを機会に、前情報無しに『塩狩峠』を読んでみてほしい。そうすれば、私がなぞに熱弁してきた主旨が(少しは)分かっていただけると思う。



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