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【奈良国立博物館】特別展「空海 KŪKAI─密教のルーツとマンダラ世界」の見どころを、仏像イラストレーターの田中ひろみさんが現地レポート!

奈良国立博物館 生誕1250年記念特別展「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」の内覧会に行ってきました。

空海の生誕1250年を記念して、「かつてない空海展になる!」と井上洋一館長が力説される奈良国立博物館の総力を挙げた展覧会は、国宝28点、重要文化財約59点*とお宝だらけ。わたしのスーパーヒーロー・空海や密教のことがよくわかる展示内容でした。

*前期(4/13~5/12)後期(5/14~6/9)で、一部展示入れ替えあり


5体が揃う最古の五智如来像

会場に入るとすぐに、京都・安祥寺あんしょうじの国宝「五智如来ごちにょらい坐像ざぞう」が、大日如来像を中心に並んでいます。5体が揃う最古の五智如来像。金剛界こんごうかい曼荼羅まんだらの真ん中の成身会じょうじんねの仏様の配列に合わせて、配置されています。

国宝「五智如来坐像」
木造 彩色 漆箔 平安時代(9世紀)
京都・安祥寺

その奥には、和歌山・金剛峯寺の重要文化財「両界りょうかい曼荼羅(血曼荼羅)*」も展示されていました。まさに、空海の伝えたマンダラ世界に入り込んだような感覚を味わえます!

*両界曼荼羅(血曼荼羅):平安時代(12世紀)、展示は前期のみ

インドネシアから初来日!
“海のシルクロード”を感じる46体

今回の展覧会は、陸のシルクロードだけでなく、海のシルクロードにも着目しています。密教の根本経典とされる『大日経だいにちきょう』と『金剛頂経こんごうちょうぎょう』。胎蔵界たいぞうかい曼荼羅はおもに『大日経』に、金剛界曼荼羅は『金剛頂経』に基づき描かれています。

『大日経』は陸路で唐に入った善無畏ぜんむいによって漢訳され、『金剛頂経』はインドネシアなど東南アジアの島々を経て海路で唐に入った金剛智こんごうちによって伝えられました。

海のシルクロードを感じる、日本初公開となるインドネシア国立中央博物館の「金剛界曼荼羅彫像群(ガンジュク出土)」が、曼荼羅のように立体的に並べて展示されています。金剛界曼荼羅彫像群の中心の「四面毘盧遮那びるしゃな如来」は、東西南北を向く四面にお顔がある、見たことのないお姿です。

「金剛界曼荼羅彫像群」
46軀 銅製 インドネシア・東部ジャワ期(10世紀)
インドネシア国立中央博物館

24歳の空海が記した“直筆”の書

空海は能筆家(書の達人)で、嵯峨天皇と橘逸勢たちばなのはやなりとともに「三筆」の一人とされます。その空海の直筆とされる国宝「聾瞽指帰ろうこしいき」も展示されています。空海の直筆を間近でじっくり見ることができるのは、感動です。

「聾瞽指帰」は、空海が24歳のときに記した出家宣言の書とされます。内容は、仏教・儒教・道教の三教について、架空の人物に語らせて比較し、仏教が最も優れていることを述べています。後に序文や末尾の詩文などを改定して書いたのが「三教指帰」といわれています。

国宝「聾瞽指帰」下巻
紙本墨書 平安時代(8~9世紀)
和歌山 金剛峯寺(前期のみ展示)

密教伝承者の証

空海は密教を学ぶため、留学僧として遣唐使の一行と唐に渡りました。そして、大日経と金剛頂経の2つの思想を融合させた中国密教のトップである恵果阿闍梨けいかあじゃりに出会い、短期間で密教の全てを伝授されます。

和歌山・金剛峯寺の国宝「諸尊仏龕しょそんぶつがん」は、密教代々の伝承者の証と言われています。釈迦三尊をはじめ、37尊もの御仏が彫られています。空海は寝るときも肌身離さず携えて礼拝したとされ、「枕本尊」とも呼ばれます。

国宝「諸尊仏龕 」
木造 素地 中国・唐(7~8世紀) 
和歌山・ 金剛峯寺

密教の真髄を伝える曼荼羅

こちらは空海が直接制作に関わった現存する唯一の両界曼荼羅で、高雄山たかおさん神護寺じんごじに伝わることから別名「高雄曼荼羅」とも呼ばれています。空海の密教の真髄を伝えるものです。

 国宝「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」
紫綾金銀泥 平安時代(9世紀) 京都・神護寺
(展示期間 胎蔵界:4月13日~5月12日、金剛界:5月14日~6月9日)

一見すると真っ黒に見えますが、赤紫色の綾地あやじ金銀泥きんぎんでいで描かれています。写真では見にくいのですが、間近で見ると、金銀で描かれた数多くの仏様の姿が浮かび上がってきます。しかも約4メートル四方もの大きさがあるので、圧倒されます。約230年ぶりに6年間にわたって行われた修復後、初となる一般公開です。

撮影スポットとグッズ販売

展示室内は撮影禁止ですが、西安碑林博物館の大理石製「文殊菩薩坐像」中国・唐(8世紀)のみ撮影可能です。この像は、空海が長安で見た可能性もあるとのこと。

売店では曼荼羅のアクリルスタンドやスカーフなど、インパクトのあるものがたくさん並んでいました。ちなみに私の著書仏像イラストレーターが作った 仏像ハンドブック(ウェッジ)も販売されています。

空海展は、他には巡回されず奈良国立博物館だけの展覧会です。ぜひ、お見逃しのないように。

特別展「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」
会場:奈良国立博物館 東・西新館(奈良市登大路町50番地)
会期:2024年4月13日(土)~6月9日(日)
前期:4月13日~5月12日 後期:5月14日~6月9日
開館時間:午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、5月7日(火)※ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館
観覧料:当日一般2000円/高大生1500円 中学生以下無料
電話番号:050-5542-8600(ハローダイヤル)

空海の生涯については、私の著書仏像イラストレーターが作った 仏像ハンドブック(ウェッジ)に掲載しています。是非こちらもご覧ください。

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