[別府竹細工]古代日本に起源を遡ると伝わる(大分県別府市)
竹は日本人にとって、とても身近で親しみ深い存在だ。大分県別府市では昔から良質な竹がたくさん採れたという。それを使ってつくられたザルやカゴなどの日用品は、同じくここに豊富に湧く温泉を目指してやってくる湯治客の必需品となり、また土産物にもなった。
身も心も癒やすのに一役買っていた別府竹細工は1979(昭和54)年、国の伝統的工芸品に指定された。
竹細工の工房兼ショップ「cotake」のオーナー・さとうみきこさんは、温泉旅館の娘として生まれた。客室に飾る花籠など、竹細工はいつも暮らしのなかにあったけれど、その素晴らしさに気づいたのは大人になってからだったそうだ。
「『別府市竹細工伝統産業会館』に展示されている竹細工の作品に圧倒されたんです。その美しさ、繊細さ、正確さ。矢も盾もたまらずに作り方を習いに行きました」。
市内には竹工芸科を設置した国内唯一の職業能力開発校「大分県立竹工芸訓練センター」がある。卒業したさとうさんは自宅で店を開いた。自作のアクセサリーのほか、15人ほどの作家の作品を扱う。
「竹細工は高価だけれど、アクセサリーなら買ってもらいやすい。ぜひ、その良さを知ってほしい」。
竹細工専門店「bamboo bamboo」の扉を開けると、竹の清々しい香りに包まれる。
「日本の風土で育った竹を日本人が編んだものだから、私たちの生活と相性がいいはず。もっと使ってもらえるよう提案をしていきたい」と語る店主の中村さん。
一時は安価なプラスチック製品に押され、生産量が激減した竹細工。それでも時代に合わせた新しい製品が生まれ、しなやかに生き残ってきた。竹は強い風雨に撓んでも、やがて陽光のなかでまっすぐに背を伸ばしていく。ひとの暮らしと知恵から生まれた竹細工も、それはきっと同じなのだ。
文=瀬戸内みなみ
写真=佐々木実佳
出典:ひととき2025年1月号
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