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[別府竹細工]古代日本に起源を遡ると伝わる(大分県別府市)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき2025年1月号より)

 竹は日本人にとって、とても身近で親しみ深い存在だ。大分県別府市では昔から良質な竹がたくさん採れたという。それを使ってつくられたザルやカゴなどの日用品は、同じくここに豊富に湧く温泉を目指してやってくる湯治客の必需品となり、また土産物にもなった。

 身も心も癒やすのに一役買っていた別府竹細工は1979(昭和54)年、国の伝統的工芸品に指定された。

「cotake」が扱う地元工芸家のカゴ(右はさとうみきこさん作)。かつて別府では湯カゴや、自炊する湯治客用のザルなどが多くつくられていた

 竹細工の工房兼ショップ「cotake」のオーナー・さとうみきこさんは、温泉旅館の娘として生まれた。客室に飾る花籠など、竹細工はいつも暮らしのなかにあったけれど、その素晴らしさに気づいたのは大人になってからだったそうだ。

cotake 光あふれる工房がさとうさんの仕事場

「『別府市竹細工伝統産業会館』に展示されている竹細工の作品に圧倒されたんです。その美しさ、繊細さ、正確さ。矢も盾もたまらずに作り方を習いに行きました」。

cotake 「光が差すとできる影もとてもきれいでしょう」とさとうさん。この繊細さと正確さに惚れ込んだ

 市内には竹工芸科を設置した国内唯一の職業能力開発校「大分県立竹工芸訓練センター」がある。卒業したさとうさんは自宅で店を開いた。自作のアクセサリーのほか、15人ほどの作家の作品を扱う。

cotake アクセサリーは細い竹を束ねて水引のように結ぶ
cotake イヤリング「赤心」。軽いから着けやすく、使い込めば飴色に変化する

「竹細工は高価だけれど、アクセサリーなら買ってもらいやすい。ぜひ、その良さを知ってほしい」。

地元工芸家の作品「がまぐちかごポーチ」。ころんとした手のひらサイズ

 竹細工専門店「bamboo bamboo」の扉を開けると、竹の清々しい香りに包まれる。

bamboo bamboo 街歩きの途中に立ち寄ると楽しい。地元の人も県外へのプレゼントを買いにくるそう

「日本の風土で育った竹を日本人が編んだものだから、私たちの生活と相性がいいはず。もっと使ってもらえるよう提案をしていきたい」と語る店主の中村さん。

bamboo bamboo  「現代の生活でどんなものが必要とされているのか。その半歩先を探すのが役目だと思っています」と中村さん
bamboo bamboo 革の持ち手付き「やたら編みかごバッグ」は伝統工芸士・高江雅人さんの作品

 一時は安価なプラスチック製品に押され、生産量が激減した竹細工。それでも時代に合わせた新しい製品が生まれ、しなやかに生き残ってきた。竹は強い風雨に撓んでも、やがて陽光のなかでまっすぐに背を伸ばしていく。ひとの暮らしと知恵から生まれた竹細工も、それはきっと同じなのだ。

文=瀬戸内みなみ
写真=佐々木実佳

ご当地INFORMATION
別府市のプロフィール
大分県中部、瀬戸内海に面する別府市。三方を山に囲まれた景観も美しい。「別府八湯」と呼ばれる8つの温泉地を有し、国内有数の源泉数・湧出量を誇る。年間約700万人の観光客が訪れるほか、市内の大学に留学生約3,000人が在学する、訪問者に温かい街だ。

問い合わせ先
cotake ☎0977-51-4396
http://www.cotake-beppu.com/
bamboo bamboo ☎0977-22-5610
https://bamboobamboo.net/

出典:ひととき2025年1月号

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