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おすすめの書籍

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ウェッジから刊行された書籍の中から、ほんのひとときがおすすめする、旅や文化・歴史に関するものをご紹介していきます。
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#仏教

日本で仏教が広まったのは、誕生仏がかわいかったから?──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

もうずっと以前のことになるが、お釈迦さまの生誕地に行ったことがある。 ルンビニー。インドから国境を越え、ネパールに入ってすぐのところだ。国境のしるしに丸太が置かれていたのがなんともいい感じだった。 お釈迦さまが生まれたのは今からおよそ2500年前。 お母さんは、出産のため、実家に戻る途中、ルンビニーの園で休息した。そして、かぐわしい香りのお花を取ろうと右手を伸ばしたら、右脇から元気な男の子が誕生した。お釈迦さまである。 お釈迦さまは、すぐに立ち上がり、七歩あるき、右手

天竺に向かう途上で命を落とした真如親王の夢──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

斉衡2年(855)5月23日、東大寺の大仏の頭が落ちた。相次いだ地震のためと思われる。大仏復興は真如親王が担当することになった。 真如親王は平城天皇の第3皇子で、出家する前は高丘親王といった。 平城天皇が譲位し、弟の嵯峨天皇が即位すると、11歳で皇太子になった。しかし平城上皇が都を京都から奈良に戻そうとして騒動(「薬子の変」)が起きると、皇太子をやめさせられてしまう。 24歳で出家。東大寺に住み、道詮に師事して三論宗を学んだ。さらに空海の弟子にもなった。 大仏の復興に

唐招提寺の鑑真和上像に込められた弟子たちの想い──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

唐招提寺の忍基は、講堂の梁が折れる夢を見た。 眼が覚めた忍基は、これは鑑真和上が亡くなる知らせに違いないと考えた。 いやだ。師がいない世界で生きるのは耐えがたい。鑑真和上は、ほかのどこにもいない、最高の師だった。 弟子たちは、師が生きておられるうちに、肖像を造ることにした。師の姿をこの世に留めるために。 まず、土で師の姿を造る。その上に麻布を漆で何枚も貼り重ねていく。一番上には、師の衣をいただいて着せた。それが終わると、背中に窓を開け、中の土を取り出す。 麻布の上に

命とは、不思議なものだ。──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

今からおよそ2500年前の2月15日の夜、お釈迦さまはインドのクシナガラで亡くなった。見上げれば、天には満月が美しく輝いていた。 それから1500年ほどが過ぎて、平安時代の終わりに西行はこんな歌を詠んだ。  願はくは花の下にて春死なんその如月の望月のころ 如月の望月とは2月15日の満月のこと。お釈迦さまが亡くなった日に死にたい。 西行は文治6年(1190)2月16日に亡くなった。この年の2月は、16日が満月だったそうで、この上ない最高の亡くなり方だった。 旧暦の2月

お地蔵さまは地獄まで救いに来てくださる──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

お地蔵さま(地蔵菩薩)はもっとも身近な仏さまだ。 奈良時代には虚空蔵菩薩とセットで造られていた。虚空蔵菩薩は虚空、つまり天を蔵にしており、地蔵菩薩は大地を蔵にしている。そして平安時代には「抜苦与楽」の仏として信仰されるようになる。苦を抜き、楽を与えてくれる仏さま。 やがて、地獄に堕ちた衆生でも救ってくれるという信仰が強くなっていく。 私たちは、生前にどのようなおこないをしたかにより、6つの世界(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天)のどれかに生まれ変わるとされる。 前半の

2023年は親鸞聖人御誕生850年!劇的な生涯と思想を知る2選

2023年は親鸞聖人の御誕生850年という節目の年であり、2024年は浄土真宗立教開宗800年の節目の年でもあります。ここでは親鸞聖人の事績や思想を知るうえで、お薦めの書籍を2点ご紹介します。 図解 歎異抄 たよる まかせる おもいきる 齋藤 孝 著 「歎異抄」は、鎌倉時代後期に書かれた日本の仏教書として知られ、作者は親鸞に師事した唯円とされています。現代でも司馬遼太郎や吉本隆明、西田幾多郎、五木寛之などの知識人・作家にも多大な影響を与えたことで知られています。 鎌倉仏

なぜ、親鸞は越後へ流罪となったのか?──御誕生850年で振り返る「非僧非俗」の精神

山折哲雄 編 鎌倉時代には異端とされた「専修念仏」「南無阿弥陀仏」の「南無」というのは、サンスクリット語の「ナマス」の音写で、「私は帰依します」という意味です。阿弥陀仏(阿弥陀如来)は、サンスクリットの原名(アミターバ、アミターユス)にもとづけば、「無量の光と寿命をもつ仏」になります。 したがって、「南無阿弥陀仏」と称えることは、「無量の光と寿命をもつ仏」への絶対的な帰依と信仰を表明することであり、この御仏を称嘆することになります。しかも、その阿弥陀仏は、娑婆世界から西方

<彼岸の入り>仏の教えを知り、自らを見つめ直す書籍【7選】

皆さん、こんにちは。 9月23日は秋分の日。今日は「彼岸の入り」にあたります。 ところで、彼岸とは何でしょうか。 仏教では、6つの徳目(六波羅蜜)を修めることで、迷いの世界である此岸から悟りの境地である彼岸にたどり着くことができると言われています。 六波羅蜜とは、 の6つを指します。 つぎにご紹介するのは、仏教にまつわる7冊の書籍です。 仏の教えを学び、自らを見つめ直すことで、ちょっとだけ彼岸が近くに感じられるようになるかもしれません。 愛蔵版 心に響く101の言葉多

【最澄と空海】日本仏教の礎を築いた二人の先駆者、その軌跡をたどる2冊

2021年に最澄(伝教大師)は没後1200年を迎えました。また、2023年には空海(弘法大師)が生誕1250年、真言宗開宗1200年という節目の年を迎えます。 同じ遣唐使船で唐を目指したエリート層「最澄」と無名僧「空海」。その交流は当初、師匠と弟子という形で10年近く続きましたが、ある時を境に疎遠になります。 ひとつは、最澄が空海に『理趣釈経』という経典を貸して欲しいと申し出たのに対し、空海がそれを拒絶したこと。もうひとつは最澄の弟子の泰範が空海の元に修行に行き、そのまま

4月8日は、仏教の日。

4月8日は「仏教の日」です。 お釈迦様が旧暦の4月8日に生誕したという伝承に基づき、2014年に世界41カ国の仏教指導者が集った仏教サミットで定められました。6世紀に日本に伝わった仏教は、日本文化を語るうえでも欠かせない存在として、私たちの生活の至るところに影響を与えています。 ここでは、そんな仏教にまつわるおすすめの書籍7点をご紹介したいとおもいます。 仏像に会う  53の仏像の写真と物語 西山 厚 著 美しい仏像には、たくさんの願いが託されている。仏教美術史学者の

奈良が紡いできた物語に触れ、仏教を身近に感じる3冊

古都の情緒あふれる奈良は、日本人はもちろん海外から訪れる人々にも人気の土地。そんな奈良は仏教を育んだ地ともされ、今現在およそ70もの国宝仏を有し日本で一番です。そうした奈良の文化や歴史の魅力を伝える活動を幅広く重なっているのが、奈良国立博物館の名誉館員であり、半蔵門ミュージアム館長でもある西山厚さん。ラジオやテレビ等のメディアにも多く出演し、時にはお笑い芸人と絡んだりも。西山さんの著書は仏教史を交え、篤い専門知識に裏打ちされながらも、わかりやすく優しく、仏教に興味ある無しの枠

“般若心経”がよくわかるおすすめの6冊|齋藤孝「大人のための読書案内」(3)

弊社では過去の作品の電子書籍化に取り組んでいます。この度、今に通じる普遍的なテーマを掲げる本書『「何から読めばいいか」がわかる全方位読書案内』を電子書籍化しました。ここでは宣伝も兼ねて、その内容をちょっとずつご紹介していきます。3回目は、仏教の真髄となる教えが凝縮しているといわれる「般若心経」について。  仏教で、宗派や時代を超えて愛されているのが般若心経です。『空海「般若心経秘鍵」』(空海、加藤精一編、角川ソフィア文庫)は、空海が般若心経とは何かを語った本。訳から引用して

“仏教”と“禅”がよくわかるおすすめの5冊|齋藤孝「大人のための読書案内」(2)

弊社では過去の作品の電子書籍化に取り組んでいます。この度、今に通じる普遍的なテーマを掲げる本書『「何から読めばいいか」がわかる全方位読書案内』を電子書籍化しました。ここでは宣伝も兼ねて、その内容をちょっとずつご紹介していきます。2回目は、「仏教」と「禅」について。  仏教の本は山ほどあるのですが、とにかく大枠を知りたいときには『図解 ブッダの教え』(田上太秀監修、西東社)がおすすめです。ブッダの弟子の10人はどんな人だったかとか、ガウタマ・シッダールタがどう悟りを得たかとか