マガジンのカバー画像

おすすめの書籍

36
ウェッジから刊行された書籍の中から、ほんのひとときがおすすめする、旅や文化・歴史に関するものをご紹介していきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

“台湾の旅”がもっと楽しくなる4冊

4月3日の台湾地震で被害を受けられた方々に、心よりお見舞いを申し上げます。 このたび、台湾観光庁が「台湾安全宣言」という動画を公開し、台湾各地への観光を呼び掛けておりますので、きょうは台湾の旅が楽しくなる4冊をご紹介いたします。 ─── No.1 ───増補版 台北・歴史建築探訪日本が遺した建築遺産を歩く 1895~1945 片倉佳史(文・写真) 台湾在住作家である片倉佳史氏が、台北市内に残る日本統治時代の建築物を20年ほどかけて取材・撮影してきた渾身作で、豊富なカラ

いま、この時代に『古事記』を読むことの意味

 本居宣長は明和元年(1764)、35歳のときに『古事記』の注釈に着手し、35年間をついやして、寛政十年(1798)六月十三日に、『古事記伝』全44巻を完成させた。宣長69歳のときである。この前人未踏の精確な注釈書は、近世のみならず、現代においても高い評価を得ている。そこではじめに、宣長が『古事記』に興味を持ち、その注釈を決意したきっかけを簡単に述べておきたいと思う。  宝暦七年(1757)、京都遊学を終えた宣長は、松坂(三重県松阪市)に帰り、魚町で町医者を開業していた。そ

傘がなくても自分の足で走る人を探して|山脇りこ『旅する台湾・屏東』より

「無傘的囡仔 要比別人跑卡緊」。直訳すれば、「傘を持っていない子供は、誰よりも速く走るしかない」。 2022年まで屏東県長だった潘孟安氏が自身の8年の任期を振り返るムービー(YouTube)を見ていて、雨の中を走る少年の映像にのせて語られるこの言葉が、とても気になった。 屏東県の南、東港出身の友人に聞いてみると、彼女は「これは屏東のことだと思う。台北から一番遠い県で、貧しいし、資源もない。注目もされず、国の支援も後回しにされがち。となると、自分たちで自分たちの価値を見出す

もっとも“熱い”台湾の地へ|一青妙『旅する台湾・屏東』より

さあ、屏東へ台湾の最南端にある屏東は、「台湾尾」の通称で呼ばれている。 なるほど、サツマイモの形をしている台湾の、下端のキュッとなったところで、尻尾に見えなくもない。 歴史を遡ると、あたり一帯は平埔族阿猴社の人々が暮らした場所で、AkauwまたはAck−auwと発音されていた。漢字表記として、最初は音が近い「阿猴」の文字が当てられていたが、1903年に「阿緱」となった。1920年になると、各地で語呂が悪いものや何と呼んでよいか判りにくい地名を適当な名称に変更する動きがあり

『自省録』は私たちの人生の錨となってくれる一冊|齋藤孝『図解 自省録』より

いまの時代は、毎日の生活を送るにも、ストレスが増えています。気候変動の影響も大きくなり、各地で戦争が起き、また生成AIも出てくるなど、世の中もどんどん変化していく。「どこか生きにくい、自分の心が保ちにくい」と感じている方も多いのではと思います。 そうしたとき、マルクス・アウレリウス・アントニヌス(以下マルクスと略)の『自省録』は、ちょうど船の「錨」にあたるものとなります。激しい風が吹いたり波が荒れたりしても、錨を下していれば、船は漂わずに一定の位置に停泊できます。現代の私た

『君たちはどの主義で生きるか ~バカバカしい例え話でめぐる世の中の主義・思想』の刊行に寄せて|さくら剛(作家)

最近のゲームって……、超ムズくないですか? はっきり言って、バイオハザードとかファイナルファンタジーとかウマ娘とか、新作を自力だけでクリアするのはほぼ無理です。 マニアの方は違うのでしょうが、一般ゲーマーは情報なしではあっさり取り残される難易度。攻略本を見なければどんな分岐があるかもわからないし、ましてベストエンディングなんて到底辿り着けません。 実は、人生も最近、そうなっているんです。人生も、攻略本がないとすぐに道を見失う時代なんですよ。今って。 もはや令和時代の人

2023年は親鸞聖人御誕生850年!劇的な生涯と思想を知る2選

2023年は親鸞聖人の御誕生850年という節目の年であり、2024年は浄土真宗立教開宗800年の節目の年でもあります。ここでは親鸞聖人の事績や思想を知るうえで、お薦めの書籍を2点ご紹介します。 図解 歎異抄 たよる まかせる おもいきる 齋藤 孝 著 「歎異抄」は、鎌倉時代後期に書かれた日本の仏教書として知られ、作者は親鸞に師事した唯円とされています。現代でも司馬遼太郎や吉本隆明、西田幾多郎、五木寛之などの知識人・作家にも多大な影響を与えたことで知られています。 鎌倉仏

なぜ、親鸞は越後へ流罪となったのか?──御誕生850年で振り返る「非僧非俗」の精神

山折哲雄 編 鎌倉時代には異端とされた「専修念仏」「南無阿弥陀仏」の「南無」というのは、サンスクリット語の「ナマス」の音写で、「私は帰依します」という意味です。阿弥陀仏(阿弥陀如来)は、サンスクリットの原名(アミターバ、アミターユス)にもとづけば、「無量の光と寿命をもつ仏」になります。 したがって、「南無阿弥陀仏」と称えることは、「無量の光と寿命をもつ仏」への絶対的な帰依と信仰を表明することであり、この御仏を称嘆することになります。しかも、その阿弥陀仏は、娑婆世界から西方

なぜ今年の大河ドラマは家康なのか?

文=城島明彦(作家) 「不断桜」に重なる徳川家康の生き様「戦国の三英傑」を桜に喩えると、織田信長は「しだれ桜」、豊臣秀吉は「八重桜」、徳川家康は「不断桜」ではないかと考えます。不断桜というのは、三重県鈴鹿市の子安観音寺の境内にある「白子不断桜」のことで、四季を問わず花をつける不思議な桜の呼称です。 観音寺から家康最大の危機を救った白子港までは、そう遠くはありません。家康は信長と軍事同盟を結んでいたために、「本能寺の変」で明智光秀に命を狙われ、滞在先の堺から決死の「伊賀越え

2023年大河ドラマ「どうする家康」天下人に至る激動の生涯を知る2冊

2023年大河ドラマの主人公は徳川家康。主演が松本潤ということもあり、放送前から話題を呼んでいます。三河の弱小大名から天下人まで上り詰めた家康の激動の生涯をどのように描かれるか大変注目されます。ここでは家康の事績や人となりを知るうえで、お薦めの書籍を2点ご紹介します。 家康の決断 天下取りに隠された7つの布石城島 明彦 著 三河の弱小大名の家に生まれ、幼少期は人質を体験し、のちに天下人となった徳川家康。多くの日本人には「天下人」「成功者」のイメージが強いことでしょう。だが

<彼岸の入り>仏の教えを知り、自らを見つめ直す書籍【7選】

皆さん、こんにちは。 9月23日は秋分の日。今日は「彼岸の入り」にあたります。 ところで、彼岸とは何でしょうか。 仏教では、6つの徳目(六波羅蜜)を修めることで、迷いの世界である此岸から悟りの境地である彼岸にたどり着くことができると言われています。 六波羅蜜とは、 の6つを指します。 つぎにご紹介するのは、仏教にまつわる7冊の書籍です。 仏の教えを学び、自らを見つめ直すことで、ちょっとだけ彼岸が近くに感じられるようになるかもしれません。 愛蔵版 心に響く101の言葉多

【最澄と空海】日本仏教の礎を築いた二人の先駆者、その軌跡をたどる2冊

2021年に最澄(伝教大師)は没後1200年を迎えました。また、2023年には空海(弘法大師)が生誕1250年、真言宗開宗1200年という節目の年を迎えます。 同じ遣唐使船で唐を目指したエリート層「最澄」と無名僧「空海」。その交流は当初、師匠と弟子という形で10年近く続きましたが、ある時を境に疎遠になります。 ひとつは、最澄が空海に『理趣釈経』という経典を貸して欲しいと申し出たのに対し、空海がそれを拒絶したこと。もうひとつは最澄の弟子の泰範が空海の元に修行に行き、そのまま

混迷の時代を生きる私たちの必読古典!一気に読める現代語訳シリーズ3選

人生につまずいたとき、現代より厳しい時代を生きた先人の姿に勇気づけられることがあります。次の一手に迷ったとき、新しい時代を切り開いた賢人の知恵にヒントが得られることがあります。だからこそいつの世でも通じる普遍的な事柄が求められるのです。 「古典」と聞けば難解で、頁も膨大で読みづらいイメージがあります。読んでみたものの内容がよくわからなかったということもあります。そんな理由で古典の叡智に接する機会を逸している人が多いというのは実にもったいない話です。 ウェッジブックスが刊行

4月8日は、仏教の日。

4月8日は「仏教の日」です。 お釈迦様が旧暦の4月8日に生誕したという伝承に基づき、2014年に世界41カ国の仏教指導者が集った仏教サミットで定められました。6世紀に日本に伝わった仏教は、日本文化を語るうえでも欠かせない存在として、私たちの生活の至るところに影響を与えています。 ここでは、そんな仏教にまつわるおすすめの書籍7点をご紹介したいとおもいます。 仏像に会う 53の仏像の写真と物語 西山 厚 著 美しい仏像には、たくさんの願いが託されている。仏教美術史学者の