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27 熊と共存できるか?

思い切った手は打てない

 昨日、いや一昨日、いやもしかすると今年ずっと、熊と人間の問題が日々報道されている。昨日など秋田県で1日に6件も熊による事故が起きた。事件ではなく事故とあえて記した。熊は、来るべき未来に都市にやってくる無人の自動運転による車両と似ている。責任の所在があいまいだ。
 今朝、なにげなくニュースショーを見ていたら、「どんぐりをヘリコプターで山へまく」といった話をしている人がいた。「もちろん、専門家じゃないので」と断っている。アイデアは無数にあるだろうが、どうすればベストなのかは恐らく専門家をまじえても結論は出ないだろう。どういう専門家を集めるかによって結論は変わるだろうし、それを政治的に行政的に了承できるかどうかは、また別の問題であり、そこから打ち出された施策を市民、国民がみな了承するかどうかも、また別問題だからだ。
 恐らく、誰もが思うような「思い切った手」は打てないだろう。そしてもし打てたとしても、半数近い世論は支持しない。
 そもそも、私たちは熊と共存できるのだろうか?
 あるいは鹿と。あるいは猪と。あるいはカラスと。あるいは……。とにかくいろいろ害をもたらすものたちと。
 だからってなにもしないわけにはいかないので、「いまできることをする」的な対策に落ち着くに違いなく、「いまできることをする」は少なくともいまこの問題に向き合っている人たちには納得しやすいからだ。
 しかし、自分のこととして考えてみれば、「いまできることをする」は、あまりいい策ではない。私自身、「いまできることをする」と割り切ってやっていたことの大多数は、結果的にいいものではなく、修正したり失敗したり別策を必要とした。
 一般的にはここで得られる納得は「しょうがない」である。「駆除されてもしょうがない」である。
 熊の餌付けの難しいことは、想像がつくはずだ。餌場は必ずしも国有地とは限らないので、私有地を使う場合は持ち主の許可がいる。餌場を作った段階で、熊は野生ではなくなる。つまり自治体あるいは政府で熊を飼育することになるので、そのためには法律が必要になる。熊保護法だ。では、何頭まで生存させられるのか。法律ではきっと、予算があるので、限界が示されるだろう。自治体の予算、国家予算ともに、逼迫していることは明らかだ。だとすれば「熊税」を設けるのか? 増税は一般的に誰もが真っ先に反対するだろう。
 そのほか、ありとあらゆるハードルが予見されるがもっとも最初にぶち当たるのは、「誰がこうした道筋をつけるのか」である。どの省庁の管轄か。新たなセクションをつくるのか、少子化対策のように?

対策って難しいよね

 昨日は、地方に住む義妹から米が届いた。
 なぜか米がいま、私たちに向かってやってくるのである。最初は実家だった。
「弁当を頼むようになったから、あんまり家で炊かないので米が余るのよ」と言われて母親から1キロぐらいの米を貰った。
「ちょうど買ったら、田舎から米が届いてしまったので、貰ってくれる?」と近隣の人から米を1キロぐらいいただいた。「それを使い終わったらまた言ってね、いくらでもあるから」と。いや、そんなこと言えないでしょう、普通。
 そして義妹である。「近隣から米がいっぱい届いてしまった」とのことで、わざわざ宅配便で送ってくれたのである。もっとも、我が家は昔から義妹そして義母からたくさんの食べ物をいただいてきた。私たちは都会に住んで貧乏だ、と知れているからである。
 米はありがたく頂戴する。すると、今回は10キロだった。
「どうしよう、仕舞うところがないわ」と妻は焦る。10キロは想定外だった。私たちが米を買うときも5キロ単位だから。それに米は原則、冷蔵庫で保管するので、スペースに限りがある。
「当分、野菜室はいっぱいだわ」
 なんとか入ったようだ。
 この米の我が家だけのバブルは、世の中としてはどうなのかわからない。もちろん、抜本的な対策はない。ひたすら米を食うのみだ。貧乏人は米を食うのである。

予定や予想が崩れるとき

 この米なのだが、宅配便では時間指定になっていて、2時から4時の間となっていた。ところが、荷物の状況をネットで見ても、ぜんぜん動かない。4時近くになってようやく近くのデポにあることがわかり、配達のために持ち出されたことが示された。
 しかし4時は過ぎてしまう。
 そして7時前に届いた。しかも配達員は、大手宅配便ながらもその制服を着た人ではなかった。ラストワンマイル問題である。物流においていま問題になっているのは、人手不足、労働時間短縮への対応で、その大きな要因は各戸への最終的な配達部分、ラストワンマイルである。置き配、宅配ロッカーなどさまざま工夫はされているが、それですべて対応できるわけではない。最後には車両と人にかかっている。
 これまでも、中元歳暮期、あるいは悪天候によって配達時間が遅れることはあったし、私はそもそも出版関係の仕事のスタートが物流関係の専門新聞社だったので、この点については寛容である。
 しかし、予定や予測は、あっけなく崩れてしまう。
 これは宅配便だけの問題ではない。いま私たちを取り巻く環境、そして世界情勢を見るにつけ、予定も予測もあっけなく崩れていくことに直面することが増えている。
 では、なにをどこまで許容するのか。あるいは絶対に譲れない部分はどこなのか。
 専門家を集めたところで、やはり熊問題同様に、決定的な対策は打てそうにない。AIにでも判断してもらうべきなのだろうか?
 
 
 

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