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光と魔法のダンス

光と魔法のダンス

拝啓
ロイ・フラーとワシリー・カディンスキーへ

Dear.
Marie Louise Fuller & Wassily Kandinsky

はじめに

見えないもの.
けれどたしかに今そこにあるもの.
波との対話.

いつからだろうか,音楽にもダンスにも残像と残響を感じてその世界に没入すればするほどあるいは身を委ねれば委ねるほど意識が別世界に飛んでいく感覚を実感するようになったのは.
はっきりと覚えているのは小学生の頃に聞いた吹奏楽部の演奏会.金管楽器の音色が,世界が忽然とパイプイスに座るたかだか11歳の少年を包んだのである.

見えないもの.
けれどたしかに今そこにあるもの.
波との対話.

踊っている時,僕だけが感じていて美しいと思う世界がある.
音を体感で感じて見ている瞬間.
ミュージシャンにもダンサーにもシンガーにも.はたまたそれは画家やメディアアートといったArtistがそれぞれに感じている世界感覚.その波打ち際.自己を介し,自らの身体からメディウムへと共鳴し奏で合う.

メディウムを介して現れ出る変態は,その人のユニークさあるいはオリジナリティそのもの.表現者本人だけが見えている世界を追う,エクササイズでもレクリエーションでもないダンスの可能性に,未踏について.それはすなわち,” 音楽が見えて,踊りが聞こえてくる ” 世界線についてである.

20世紀のダンスの足跡

かつて20世紀のダンス史を思い返す時,ドビュッシー (ⅰ がロイ・フラー (ⅱ に対して「彼女の創作した作品によってはじめて自分の音楽が聞こえた。  」というコメントを残した『セイレン(シレーネ)たち(les syrenes)』1913年.

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