蜜蜂がいなければ始まらない養蜂生活。((西洋)ミツバチの入手方法①)

 ミツバチって、どうやって手にいれるの?とよく聞かれます。素朴な疑問である場合が多いですが、養蜂をやってみたいと言うひとに聞かれることもあります。養蜂を始めたくともミツバチがいないと始まりません。 
今回は、養蜂に憧れて突っ走ってしまった人の極端なケースを想像して突っ込みつつ話してみたいと思います。

 西洋ミツバチの場合、大手の養蜂場から購入します。(と言うより、大手からの購入をオススメします。)買うのは簡単。電話で一本です。ですが、その後を甘くみていると大変です。
 養蜂を始めようと言う人なら、一冊くらいは入門書を読んでいるものです。すっかり感化されて、ミツバチの購入前から気分が盛り上がっているでしょう。本には、大体ミツバチ一群から消費しきれないくらいのハチミツが採れると書いてあります。
 ご近所にどう配ろうか?算段を始めて、「今度ミツバチを飼うことになって…」なんてご近所さんにご挨拶もします。「是非、はちみつ食べたいです!」なんて愛想のよい会話に盛り上がるかもしれません。

 想像できますか?ワクワクしますよね。

 でも、断言しましょう。入門書を読んだだけ。そんな人は、ミツバチの箱が到着して梱包を解いた瞬間に固まることになります。蜂蜜のように甘々です。取り扱い説明書などは添付されてません。
固まったのなら、まだ良いです。蜂は出てこれませんから。ワクワクして到着した巣箱を玄関でちょっと開けてしまったら最悪です。
 輸送の振動でイライラしている蜂は気がたっています。一斉に箱をあけた人間を攻撃してきます。

 そう言えば、アレルギー検査は受診済みですか?

 もう既に20ヵ所は刺されているのではないでしょうか?アナフィラキーショックにならなくとも刺されたら痛いし、腫れてきます。蜂の針の抜きかたはご存知ですか?針をつまむと自分で毒を押し込むことになります。放置しても、数秒後には毒袋が収縮して毒が更に注入されます。きちんと面布はかぶれてますか?隙間があると蜂が入ってきますし、まさかかぶってないなんてことはないですよね?蜂は鼻の穴や耳の穴にもぐって刺してきます。神経が集中しているので、めちゃくちゃ痛いです。穴にもぐられたら摘まめないので、何もせずに出てくるのを祈るのみですが、あちこち刺されたあなたは攻撃目標です。望み薄です。
蜂は何百匹も乱舞しています。どう収拾をつけましょうか?
刺されているあなたもパニックですが、渋々飼育を了承した家族の心境はどうなっていますか?

 さすがに入門書を読んだ人は、巣箱の場所を準備し、しばらくして静置してから巣門を開けるでしょう。そう言えば、巣門を止めるための釘はありますか?開けたものの釘を打つのに手間取っているうちにそろそろとミツバチが出てきて巣門を押さえている手に向かってきます。刺されたら大変、蜂の毒は攻撃目標のフェロモンの匂いです。どんどん蜂がやってきます。
 でも、ちょっと待ってください。
 ・女王蜂の生存確認
 ・(自然分蜂防止の為の)新女王蜂の蛹(王台)の除去
 が、今日の仕事のはずです。気を取り直して燻煙器で煙を吹きかけながら巣箱をあけましょう。ミツバチが暫くおとなしくなります。
 燻煙器は使ったことありますか?使い方は?と箱を見ても、使い方は書いていませんよ。大丈夫でしょうか?
 日没までにはすべての作業を終える必要があります。自然分蜂(巣の半分のミツバチが一斉に巣立ちます。)を防止するには女王蜂の蛹をすべて除去しておく必要があります。  
 今日はあきらめたと巣門を閉じたままにしてしまったあなた。蜂は日中の活動時間帯に出られないとお互いに熱を高めて蒸殺(高温で死ぬこと)してしまいます。ジ・エンドです。
 確認の為、巣枠を持ち上げる必要がありますが、巣枠はプロポリスでなかなか動きません。てこの原理で動かさないと枠を動かせません。ご存知ですか?
 箱の中には蜜がきちんと採れるようにたくさんの蜂数がいる状態で養蜂場が準備して出荷されてきています。持ち上げた巣枠に女王蜂の蛹はありましたでしょうか?働き蜂が何重にも一面に重なっています。蛹を見落とさないように働きバチを振り落とす必要がありますが、ちょっと振ったぐらいでは全く落ちません。コツはご存知でしょうか?女王蜂は1匹しかいません。女王バチまで乱暴に扱っては、傷ついた女王蜂を働きバチが殺してしまうので取り返しがつかなくなります。女王蜂は探せましたか?
 女王蜂の蛹を取り切れずに次の週末まで持ち越してしまったあなた。巣別れした蜂の大群がご近所様の軒先にぶら下がり大騒ぎになります。ご近所様との関係は良好でしょうか?重ね重ね恐縮ですが、渋々了承した奥様のご心境はいかがですか?

 なんとか乗り切ったら、どんどん群を大きくしないといけません。巣枠の扱いのこつやタイミングをご存知ですか?本にはなんとなくの基本方針しか書かれてなかったと気付くでしょう。4月に巣箱が来て6月には採蜜期間が終了しかねませんよ。一瞬です。

 お盆が過ぎました。ある日突然オオスズメバチの大群がやってきます。準備は万全ですか?三時間もあれば一箱全滅です。


 なんとか少し貯まった蜜、ご近所様に配る為に絞りますか?分蜂騒ぎもあったのに配らずにいるのは居心地が悪いですよね。
 でも、ちょっと待ってください。8月以降は蜜がほとんど入って来ないのでは?蜂蜜は、そもそも蜂の大事な食料です。なかなか蜂蜜が貯まらないからとミツバチが冬に餓死しないように10月くらいから慌てて砂糖水をあげてももう手遅れです。砂糖を蜂蜜に変えるには蜂の酵素が働くように蜂が巣内の温度を上げる必要があります。もう寒くなってきました。温度を上げるには、エネルギーが必要なので蜂に更に蜂蜜が必要です。蜂蜜を貯める為に蜂蜜を消費しては本末転倒です。なら、直接蜂蜜をあげようとスーパーで買った蜂蜜をミツバチに与えたあなた。ミツバチが死んでしまうかもしれませんよ。加熱された蜂蜜や蜂蜜以外のものが混ざっている可能性があります。ラベルは、あてになりません。自分の蜂蜜なら安心ですが、既にご近所さんに配ってしまってしまいましたね。
 あとは運に任せて、いえ、蜂に任せて越冬ですが、蜂蜜が足りなくては餓死で全滅です。

 いかがでしたでしょうか?養蜂を趣味で開始して、1年目で次の年まで越冬を成功させられる人はかなり少ないと聞いたことがあります。
 入門書だけで養蜂にチャレンジするのは無謀です。本はポイントが押さえて書かれているので読むべきですが、細かな操作までは書かれていません。飼育に必要な道具は養蜂場から購入できますが、使い方が書かれているものは稀です。すべて揃える必要はありませんが、絶対なくてはならないものがないと気付いてからでは大変です。
 どこかの初心者向けの養蜂講座などは最低限受講しておくべきでしょう。

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