ミツバチから見た景色(最大の難関の養蜂場所探し②)

前回の場所探しの記事はこちらから。
ミツバチ見かけますか?(最大の難関の養蜂場所探し①)

 「見渡す限りの田んぼの手前には小さな杉山があり、その麓の民家の近くには竹林が整えられている。民家の生け垣はツツジに紫陽花で初夏にはツツジが紅く満開となり、その後梅雨入りの頃には綺麗な青い紫陽花が瑞々しく咲いている。」

 自然に溢れた光景に思えませんか?実はこれ、文章の中にはミツバチに嬉しい要素が一つも入ってません。(文章に出てこない記述の部分では別の可能性があります。)1つ1つ見ていきましょう。

①見渡す限りの田んぼ
 稲は、風媒花で蜜を出しません。花粉は、風で運ばれるので虫の媒介は不要です。と言っても、稲の花が咲く夏は花があまり咲いていない「花枯れ」の時期で、見渡す限りの田んぼの側ではミツバチが稲の花粉(蜂は幼虫の育児に花粉を必要とします)を集めることがあります。また、暑いと巣の温度を下げようと田んぼの水も持ち帰って来るため、頻繁に田んぼと巣を行き交うことになります。

 この時にこの10何年間か大問題になっているネオニコチノイド系の農薬が絡んできます。7月から8月にかけて稲の害虫のカメムシ防除の為、農薬の空中散布が行われます。これは、カメムシが稲の米を吸った箇所が黒くなる斑点米を防ぐ為に実施されます。農家からの買取価格の等級がこの斑点米の割合で決定される為、高く買い取って欲しい農家さんはきちんと散布します。そうすると、散布時に農薬にさらされたミツバチは死ぬか神経が狂い方向感覚がわからなくなり、巣箱に戻れなくなったり、巣箱の前でうろうろしてやがて死にます。この段階で蜂が激減(大量死)するのですが、数ヶ月後に再度蜂が激減(大量死)します。ネオニコ系の農薬は浸透系の農薬なのでもちろん花粉にも含まれます。巣に持ち帰った花粉はミツバチの頭で巣穴に押し込まれますが、その後に別の花粉も押し込まれます。貯めた花粉を手前から食べ、稲の花粉にたどり着いたら再度大量死と言うわけです。

 でも、害虫防除の為に農薬散布は仕方ないと思いますか?本当にそうなのでしょうか?詳しくみるとこの問題は、馬鹿馬鹿しいの一言です。
 農家から買い上げられた米は、一等米も二等米も混ぜて(斑点米を除く)選別機にかけた上で製品化され流通します。この工程で斑点米は、ほぼ除外されます。一等米なんてスーパーで見かけたことありますか?売るときは混ぜて一緒なのです。斑点米の有無で味は変わりません。なので、買いとられる前に農家で選別機をかけて出荷している地域もありますが、農協で農薬を買って散布しないと出荷してもらえない地域もあるそうです。農協は、農薬の販売店でもあり、巨大な物流会社でもあります。かさばる重たいお米を自分で全量さばくのは現実的ではなく、結局農薬を散布して米を買い取ってもらうことになります。でも、農家にとってこの農薬は余計な出費です。選別機にかけたら農薬を使用しなくても一等米です。不要な農薬を撒き、農家の利益が少なくなり、ミツバチも大量死する。農薬メーカーは儲かっていますが(メーカーの元会長は、元経団連の会長さんでもありますね)。馬鹿馬鹿しくないですか?

 長々と脱線しましたが、この大量死の状況を回避するには、水田の近くには巣箱を置かないこと。稲に対するミツバチの優先順位は低いので夏の蜜源・花粉源が別にある所にする。など場所選びの際に気を付けたいです。

 ところで、ネオニコはニコチンに似た構造であることから、当初から人間に無害と言うふれこみに対して、「ニコチンのように成長期に摂取すると後々問題になるのでは?」と言われていました。この米で成長した世代はと言うと二十代前半から若い世代になると思います。壮大な人体実験の結果はどうなったのでしょうか?単なる思い過ごしであれば良いのですが。本当に必要な用途に使っているならまだしも、馬鹿馬鹿しい儲けの仕組みで被害になったのではやりきれません。

 養蜂家が、騒いでいるだけと思うかもしれませんが、蜂は世代交代が人間より早く、耐性を獲得した群れもいると言う養蜂家の方も最近はいて、そうなると「ミツバチがいなくなる!」「多くの虫媒花が実をつけなくなって大変だ。」と言う理由付けができなくなります。それこそ大変なのではと思っています。発覚してからでは手遅れなのです。ちなみに減っているのはミツバチや虫だけでなく、それを捕食する野鳥も減っています。

 海外では、ネオニコは制限する方向に向かっていますが、日本は農薬の効果が薄くなったのか、たくさん売りたいのか散布量の基準が更に多く使用できるように変更されています。

 農薬大国ニッポン。どうなるのでしょうか…。

 また、脱線しました。すいません。

 昔はどこの田んぼも田植え前に緑肥としてレンゲが蒔かれていました。蜂蜜もレンゲが一番メジャーだったのではないでしょうか。最近では田植えの時期が早くなり、レンゲが花を咲かせるまで待てず、育てる農家さんはほとんどなくなりました。また、育てようにもレンゲの害虫の被害も大きいそうです。
 耕作放棄地では、秋にセイタカアワダチソウがたくさん咲いていますが、蜜源として田んぼは有力とはなりません。

②竹林
 蜜も花粉もなく蜂には全く関係ありません。最近、竹林の整備が行き届かず、荒れ放題の場所も増えてきました。そうなると、光が届かず竹以外の植物も生えません。

③ツツジ
 ミツバチは、ツツジにはあまり訪花しません。あれ?って、思いませんでした?ツツジの花を摘んで蜜を吸った経験のある人は結構いるはずです。

 よく黒い服を着ていると蜂に襲われるって、聞きませんか?

 天敵の熊に色が似てるからと言われたりします。実は、蜂は赤より長い波長の光が見えずらい(見えない)と言われています。なので、蜂にとって赤と黒は同じ色。認識出来ないので、赤い花にはあまり訪花しないと言うわけです。

 余談ですが、ツツジには少量では問題にならない程度の毒があるそうです。蜜の吸いすぎや花の天ぷらの食べ過ぎは注意です。

④紫陽花
 花粉も蜜もありません。ミツバチには、興味のない花です。

 では、土地をどう選定するかと言うと…。

 場所を選定する際には有力な蜜源・花粉源が年間を通して一キロ以内にいつ、どれだけ咲くのか調査しておきましょう。
蜂の行動半径は二キロはありますが、近い所でまず一キロを考えます。

 花によっては、隔年で蜜を出すもの、数年に一度出すものがあります。田んぼ二枚くらいのレンゲ畑と有力な蜜源の木(ユリノキ、トチなど)の“一本”を比べると同じか、もしくは、木の方が蜜が採れると言われるくらいなので、木の方が有力な蜜源であることが多いです。蜜源は木を中心に確認するとよいと思います。

 手入れされていない地域は植生が偏っていることも多く、例えば東北のある山の麓の場所ではトチの蜜が採れなければその年はおしまいとなってしまう地域もあるようです。

 植生の違う地域の中間点や季節ごとの街路樹がまんべんなく植えられている都市部(住居のない都市中心部)はよい候補地です。
参考にしてみてください。

蜜源・花粉源の木や花の確認は下記の本やサイトが参考になります。
(おススメは高いですが、本です。)

参考になる良い本はこちら。
・蜂からみた花の世界 四季の蜜源植物とミツバチからの贈り物
 佐々木正己

また、参考になるサイトはこちら。

次の記事は自分の場所探し体験記です。
(金額とか生々しいので有料にしています。養蜂の土地探し本気で興味ある人はどうぞ。)
どこで探せばよいの?(最大の難関の養蜂場所探し③)

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