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エッセイ(思い出から)

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2020年8月の記事一覧

MY LITTLE LOVERと、えりちゃんのことを少しだけ

MY LITTLE LOVERと、えりちゃんのことを少しだけ

「悲しみのため息」も「ひとり身のせつなさ」もピンとこなかった。

小学生。まだ運動場でけいどろ(地域によってはどろけいと言うらしい)をすることが一番の楽しみだった私には、年頃の女性の憂いを帯びた複雑な気持ちが分かるはずもなかった。

歌詞には共感できなかったが、メロディーを耳にした瞬間、一目惚れならぬ「一聴き惚れ」をした。

悲しみのため息 ひとり身のせつなさ
抱きしめたい 抱きしめたいから

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うらない

うらない

彼とは長く続きそうよ。

さびれた商店街の中にあるお店。たこ焼き、たこせんとマジックで書かれたそのとなりに「占いできます」とある。

高校生のころ、このお店の占いが当たると話題になった。

友達に誘われた。以前から気になってはいたので二人でそのお店に寄って帰ることにした。

占ってくれたのは、パーマのかかった髪を後ろで一つにまとめ、淡い色のチェック模様のエプロンをしたおばちゃん。前ポケットにはネコ

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祖母の家

祖母の家

祖母の家がなくなった。

「一つの時代が終わったんや。」

父が芝居がかった口調で言ったので盛大にため息をついた。驚いた。なぜ教えてくれなかったんだと思った。

以前から壊そうかと話していることは知っていた。でもいつの間に実行されていたんだ。体から力が抜けていくのを感じた。

祖母の家。それは私の亡くなった母が育った家でもある。

母は四人兄弟の一番上で、妹が二人、弟が一人。祖父は若くして病気で亡

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