「全ての始まりは・・・逃避」⑤
昔はバックパッカーと気取ってはいるが、最初のきっかけは現実逃避だった。
専門学校に通いながら、音楽プロダクションで働く事になった19歳の僕は日々、東長崎の裸電球4畳半の部屋とオフィスがある六本木と赤坂TBSのGスタ(サウンドインSの収録)とその界隈の高級クラブを行き来する事になる。光輝くオーラを放つ芸能人やミュージシャン、Ⅽ調なテレビマンや奔り回るだけのADマンに踏ん反り返ったクライアントの社長たちとラベルのスペルも読めないスコッチをツーフィンガーのWで酌み交わす酒は竜宮城への入口だった。先輩上司に譲って貰った一張羅のメンズビギのタイトなジャケットを着飾りシャンデリアで煌々と照らされるクラブの磨かれたテーブルに映る僕の顔は世の中を知らないバカな若造だった。・・・
僕にとっては虚構の世界だった。脱しなければ!、母の姉(おばさん)がアメリカに住んでいる。そうだ!アメリカの大学に行こう!・・・気持ちが先に立ち就職内定一番の僕は卒業を待たずに辞めてしまった。
夢は膨らむ、マンハッタンの摩天楼の最上階で笑っている自分の姿が見える。あり得ないサクセスストリーを妄想しながらバイトに励む。アメリカだ!・・・続く。
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