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五味太郎さんの『絵本をよんでみる』。思考の深さ、繊細さに驚愕。

数日前、またいつものように市立図書館に行きました。

今回は夫も一緒に行けたので、ぜんぶで40冊まで借りられるということで、本当に山盛り(笑)



図書館で大好物な場所を発見!

さて、2月から2週間に1度通い続けている市立図書館ですが、
今回初めて見つけたものがありました。
今まで通っていたのに気づかなかったんですが、私の大好物が詰まっている場所が、この図書館にあったのです。

それは、何かというと・・・

児童書研究コーナー

です!!

こちらでは、『このくらいの子どもにはこんな絵本がおすすめ』といった簡単な指南書のようなものから、
絵本好き児童書好きに向けた、子供に絵本を与えるとはどういうことかとか、児童書の歴史とか、絵本を著者なりに深く深く掘り下げたものとか、、、
そんな書籍がたくさん集められていました。

絵本好きで子ども好きで保育好きな私には、たまらなーい!!!ヾ(*´∀`*)ノ
静かに心を躍らせていました。

まずは何を借りようかな…と考えて、まずはグッと興味を惹かれて、読みやすそうなこちらの2冊を手に取りました。


「絵本をよんでみる」を読んでみる

そのうちの1つ、五味太郎さんの「絵本をよんでみる」を読み始めたのですが、これまた最初からとっても驚きました。

この本の中では、五味太郎さんが絵本を解説してくださっています。
あとがきの江國香織さんの言葉、『プロの書き手としての読み方の面白さを堪能する』が、どすんとしっくりくる内容になっています。

さて皆様、「うさこちゃんとうみ」という絵本をご存知でしょうか?

我が家にもありますが、いわゆるミッフィーちゃんのお話の一つ。

ブルーナさんの絵本は、あっという間に読めるのに、なんだか面白くって、子どもも何度も読んでと持ってきます。

その「うさこちゃんとうみ」が、「絵本をよんでみる」の冒頭から、五味さんが解説してくださっているのですが・・・

その考察の深いこと、深いこと!!!

絵本は確か10ページくらいで終わるし、読み聞かせも1分ぐらいで終わるような、短い絵本です。

それが五味太郎さんにかかると、なんと40ページにわたる言葉を紡ぎ出せることに本当に驚きました。


ひとつ、書籍から例を挙げます。

あるひとうさんのふわふわさんが
「きょうは さきゅうや かいのある
おおきな うみにいくんだよ。
いきたいひとだあれ?」といいました。

『うさこちゃんとうみ』より

というシーンがあります。

五味太郎さんはまずこう言います。

もう、この文章だけで感銘をうけた。ぼくがこの本を初めて読んだのは十九か二十歳のこ ろだと思うけど、実は、ぼくの父親がこれに似たタイプのセリフを時々言う人だったんだ よね。たとえば「おれ、きょう野球を見にいくんだ」って言うので、「行くならおまえ、学校終わってから新宿駅に一時に来い」 と。 そんな体験がよくあったので、ここはわりと 素直に読めたんだけど、父がそういう言い方をする時に、ぼくは素直に聞いているんじゃ なくて、「へんな親父だな」って、どこかで緊張してしまうのね。そういう記憶が、この 文章を読むとよみがえってくるんで、とっても懐かしいと同時に、「いいなあ」って思っ たということが、まずある。

そしてさらにこう続けます。

あるひとうさんのふわふわさんが

この「ふわふわさん」もちょっと異常だね。
このネーミングで、お父さんの性格のある部分を決定していますね。 英語版では Mr. Rabbit なんだけど。この、いわば翻訳作業についての考察は、とりあえず後まわし。

さらにさらに、こう続けます。

「きょうは さきゅうや かいのある おおきな うみにいくんだよ。

「わたしが」だろうね。で、

「いきたいひとだあれ?」

とりあえずおまえに関係なく、オレは海に行くんだけど、おまえ、いっしょにどう?っていう誘い方が「しゃれてるねえ」という感じ。
言い方からいって、うさこちゃんに呼びかけてるのは明らかですからね。
ここの文章をちょっと理屈っぽく言うと、とりあえず人間の 行動というのは「我」から出発する。ふわふわさんは自分の 行動を表明する。で、「おまえ、いくかい?」じゃなくて、 「いきたいひとだあれ?」という形で、うさこちゃんの「我」 を揺さぶる問いかけをする。すると当然、

「あたし あたしがいくわ!」

となる。
これ、すごいね。「いきたいな」じゃなくて、「いくのはわたしだ」、「あたしがいくわ」って。ここの文章だけみていても、二時間はボーッとして楽しめる。

ーーーぼくも十五分ほど・・・・・・(対談者)

その差は人生の経験の差でしょう。君もこれから経験を積めば二時間になります。
で、この会話を読んで、「もうドラマが始まっているんだな」と思う。


す、すごい、、、。

絵本の1ページに綴られた、たった4行の言葉たち。
ここから五味さんは、自分の過去の記憶を呼び覚まし懐かしむと同時に、一つ一つの言葉についてここまで深く考え、感じ取るんです。さらには二時間、ぼーっと考えていられるんです。


じっくり深く考えることを、自分に許可するきっかけに

驚きと同時に、そうか、こんなに深く考えてもいいんだな、という気付きになりました。
そして一つ一つの物事や言葉って、このぐらい深くゆっくりじっくり考え、味わうことをしていいんだと、もっと自分に許してあげようと思いました。

忙しい日常の中、あれもこれもやりたいって思っていると、一つ一つがおろそかになりがちです。
とりあえず行動!数撃ちゃ当たる!とか思ってると、行動ばかりして思考が浅くなってしまう気もします。

最近スレッズでも毎日必ず何かしら投稿するようにしていますが、これもとにかく行動!と思ってやっているので、単語一つ一つを吟味してよくじっくり考えて発信することはできていません。

もちろん行動すること、どんどん試していくことは悪い方には傾かないとは思います。
それでも、五味さんのように、言葉一つ一つをすくい上げて、じっくりと味わってくれる方がいることを頭の片隅に置いて、時には自分の思考をじっくり巡らせ、繋いだ言葉を発信していけると、自分の人となりや思考が今よりもっと相手に伝わることもあるかもしれない、と思いました。




こちらの本まだ読み始めたばっかりですが、読み進めていくのが本当に楽しみ!!!

また一緒に借りてきた、ジョン・バーニンガムさんの書籍も、早く読みたくてたまらないーーっ。


では、今日はこの辺で!

最後までお読みいただきありがとうございました!



hona


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