見出し画像

進化と淘汰

生物学と言えば、福岡伸一先生で分子生物学の観点を教えてもらえる。ミクロな世界からマクロな視点へ、動的平衡という諸行無常へいざなわれる。

一方、長谷川眞理子(ハセマリ)先生は進化生物学の観点からものをみる。突然変異から生み出された特徴が自然環境に合うことで生き延びる、淘汰される。

キリンは首を伸ばそうとして首が伸びたのではなく、首が長いキリンの方が行きやすいからそれだけが生き延び、かけ合わせ更に首が長いものが残る。始めに目的があるのではない。上手く適応できたから生き延びたのだ。

それ故に、同じ種でも環境により進化は異なる。逆に種は違えど環境により進化した姿が近いなどという面白い現象も起こる。

一方で福岡伸一先生の『できそこないの男たち』にも触れられた雄と雌の関係にも勉強になる。

『できそこないの男たち』では、男の脆弱性が強調されるが、本書では、卵子と精子の関連から、雄と雌の役割、生育のあり方、男女関係が説かれる。生存競争の関連で、雄だけが競うと考えがちだったが、状況がかわると雌どおしで争うケースも…

さらには、花とチョウ、花と鳥の共存共栄関係やそれを裏切る進化なども紹介されている。

さて、これらのケースを学ぶなかで、寺院運営に役立つと感じたのは…

進化に目的はない。すなわちやってみないと、わからない。

一方で進化の最適化は、科学的見地からみると合理的である。すなわちやってみないとわからないが、論理的思考は必要となる。

更には、寺院の一人勝ちはない。地域や他者と共存共栄関係が生き残りには必要だということであろう。

そして、もっとも大切なのは、環境に適応することである。我々は往々にして寺があって地域があるとか、寺の活性化が地域活性につながると考えがちである。それは進化を見るがぎり無理がある。

あくまで地域環境によるということであろう。寺院の繁栄を願うなら、地域の繁栄が先にある。地域繁栄し結果として寺院の繁栄があるということであろう。

人口減少社会を生き残るとは、自然淘汰の世界に極めて近いと個人的には思う。

そういう意味で抽象化して考えるならば、学ぶことが多い一冊だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?