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ときに胸を締め付けられながら生きる___読響「未来の音ガラ・コンサート」2023年3月4日

2023年3月4日(土)に、読響の「未来の音ガラ・コンサート めぐろパーシモンホール開館20周年記念/目黒区制施行90周年記念」に行ってきました。

出演者は、
指揮=角田鋼亮さん
ヴァイオリン=周防亮介さん
チェロ=上野通明さん
ピアノ=岡田奏さん

この日のプログラムは、すべて大好きな曲。

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18

周防亮介さんの弾く、ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26」は、まるで春の快晴の空を、ひばりがまっすぐ飛翔していくようでした。
一直線に急降下したり、天に向かったり。海辺を望む崖のあたりで強い向かい風を受けていたり、どこまでも続く壮大な草原であったり。

私はこのところ人生最大と言えるある挑戦をしていて、緊張から胸が痛いほどに締め付けられています。心はのびのびしているものの、息苦しい日々が続いているのです。この状態で聴く「ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26」は、とてもフィジカルに合っていて、心地いいものでした。

「ああ、誰もがこんなふうに自らの翼で、風を受け、人生の幕を開けてきたのか」

ホールにいる全ての人が、この瞬間を越えてきたのだ。
大雑把な言い方をしてしまえば、緊張しているときも感動しているときも、フィジカル上の反応は似ているのです。そんな実感とともに、心に力が満ちてきました。
周防亮介さんとオケの演奏により、私は胸が締め付けられている状態を肯定的に受け止められたように思います。

休憩中に、ホールの外のモニターを撮ってみました

上野通明さんのチェロは、この日の演奏会でとにかく聴きたかったもの。まるで皮膚の内側に向かって集中し、極限まで純度を高めていくような上野さんの音色が私は大好きなのです。

ドヴォルザーク「チェロ協奏曲 ロ短調 作品104」の3楽章。主題を奏でるチェロの一音が長く、すーーーーーーーーーーーーと続いてヴァイオリンが奏でる2つの副主題を支えてフィナーレを迎えるのですが、
ここは一音が長いというよりも、まるでそこに1本のゆるぎない線があり、そこからあらゆる命、世界が誕生してくる様を眺めているようでした。もしかすると私たちはこの源を、地平線や水平線と呼んでいるのかもしれません。
気づくと涙が溢れているほど、とても素晴らしい演奏でした。

大行列だったサイン会の様子

そして、
岡田奏さんの弾くラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」は、個人的に最も大好きな曲の1つです。
マスクで顔の半分を覆っており聴こえ方が制限されているためか、前半の高音の煌めきが私にはほんの少しだけ聴こえづらかったのですが、とても力強い演奏で、心が躍る体験でした。冷たい風を正面から受けながら襟を正すような、それでいて心がどこまでも自由に開放されていくような---。

ときに胸を締め付けられながら生きることこそ恩寵である。
演奏会を通してこう実感した1日でした。私の人生には、音楽があって幸福です。

【ききみみ日記】
★今回で投稿109回目になりました★
オペラ・クラシック演奏会の感想をUPしています。是非お越しいただけますとうれしいです。
(2022年10月10日~2023年1月15日まで101回分を毎日投稿していました)





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