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10年後のじぶんにほめてもらえるようなことしてるかな、今。

2012年7月。就活の面接のために恵比寿にいた私は、
たまたま駅で、この広告を見かけました。

確かJASRACの屋外広告だったと思います。どこの代理店だったんだろう。

ちょうどその半年弱前、長年闘病していた母を亡くしていました。
亡くなった時、就活の書類審査の時期真っ只中で、病院で母と会う合間にエントリーシートを書いていたのですが、「自分の親の窮地に自分のことしか考えられない自分に、強みなんてない」と思うようになり、やがて少しずつ文字が書けなくなりました。当然、そんな状態で応募した会社は全部書類で落とされました。

母が亡くなった時、泣いたら自分が崩れ落ちそうで、頑なに泣かなかった代わりに周りの世界の色がうまく認識できなくなり、味覚を失っていた時期がありました。それでも人の心を動かすものを作る仕事がやっぱりしたくて、ずっと広告の仕事を志望していました。

この看板も、今や検索にも引っかからない看板だけれども、そんな人生でどん底にいて、1ヶ月後の光さえも見えていなかった当時の私はこの広告を見て、泣きそうになっていたのを今でも覚えています。

それからちょうど10年後の今。
あの時の自分に言いたいことがあります。


1ヶ月後からしばらく、あなたはたくさんの人たちに「君は広告に向いてないよ」と言われます。目がパンパンに腫れるまで号泣したりします。

けれどもたくさんの会社や人たちに会って、その過程で「向いていないよ」と言ってくる人以上に自分を応援してくれる人たちにも出会って。そして9ヶ月後の終わりに、自分が受かると思っていなかったとある広告代理店に合格します。

さらにその1年後、入社してからたくさん怒られて、飲みに行って、深夜まで仕事をして。同期や先輩や後輩、得意先の人や関係会社の人、そして会社外の人たちに恵まれて、たくさん遊んで、たくさん働く生活をします。総じて充実している一方で、やっぱり「作る仕事がしたい」という気持ちはずっとあって、こっそり企画や制作に関わる講座を受けたり、自分でプログラミングを勉強してみたりします。

働き始めたその 4年後、参加していたとある企画講座の最終課題で、自分のこれからを考える「自分の企画」をプレゼンするというお題が出ます。自分のこれからを考えたときに、自然と、「オリンピックイヤーに、海外で仕事ができるようになりたい」という言葉がすんなり出てきます。そして色々考えた結果、「今までずっと興味があった『作る』ことをちゃんと学んでみたい」と思うようになります。

もちろん、自分にアートやデザインのセンスがあると思ったことはなかったし、大学も会社も才能とセンス溢れる人たちに囲まれていたから、会社を辞めるギリギリまで「デザインを学びに海外に行きたい」という話は誰にもしたことがありません。

けれどもそこから3年後、コロナで留学を延長したりしますが、トントン拍子に留学が決まり、あっさりニューヨークに渡米します。

その後の1年間、デザインを学んでみて、自分の出来なさを感じる以上に、自分が好きなことを学べることが本当幸せで、できることが毎日増えることに感動しています。やはりここでも周りにセンスある人たちが集まり、競争も激しいので凹むこともありますが、個性的な友人や先生の作品や、ニューヨークの生活が毎日刺激的で、渡米してすぐ「ニューヨークに来てよかった」と思うようになります。

そして10年後のあなたは、デザイナーとしてニューヨークで働き始めています。

この広告を初めてみた今の2012年7月のあなたは、「そもそも10年後、自分に未来なんてあるんだろうか。」と気が遠くなりそうだったと思います。けれども、10年の間に人生は予想もしない方向に広がるし、広がるきっかけになるのは、毎日のひとつひとつの行動でした。10年後のあなたは、「あの時辛くて、けど諦めなくて本当によかった」と思っています。頑張ってくれて、諦めないでくれて本当にありがとう。

一方で、10年後のあなたは、相変わらず毎日たくさん悩み、落ち込みながらなんとか生きています。よく、「単身でニューヨークに来て、しかも今までの領域とは違うデザインの勉強をして、今は仕事までしてる。すごいね。かっこいい。」といろんな人に言っていただけるようになったのですが、本当にそんなことはなくて。

仕事ではなかなか要領を掴めないし、プライベートで会う人たちも皆すごい人たちに見える。自信は相変わらずないし、毎日「ああなんでこんなできないんだろう。なんで目の前のチャンスをモノにできてないんだろう」って正直落ち込んでいます。

だから未来は相変わらず見えない。けれども、目の前のできることを積み重ねた先の10年後、「あの時頑張ってよかったな」と思えている自分がいるはずだと信じてひとつひとつ頑張りたいなと思っています。

10年後の自分に、ほめてもらえるように。

最後に…

「渡米してから週1回noteを更新しよう!」と決めてから、今回で1年が経とうとしています。ちゃんと週1回更新しました。頑張った。
noteの波及力が本当にすごくて、思わぬ知人から「note読んでるよ!」って言われたり、noteがきっかけで直接会う人も出てきたりして、自分のことを発信することが、いろんなご縁に繋がることを感じた1年間でした。
いつもご愛読ありがとうございます。

個人的にやりたいことが増えてきたので、2年目編は2週間に1回のペースで更新しようと思います。相変わらず拙い文章ですが、たまに覗いてもらえたら、誰かの後押しになるような文章が書けるようになれたら嬉しいです。

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