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【第1話】サウナリーマン日記「アウフグースの衝撃〜サウナセンター〜」



人混みが嫌いだ。

そのため休日はどこに行くのか、
どこのサウナに行くのかいつも
頭を悩ませている。

しかしながら今日は、どうしても
行きたい場所があった。
台東区にあるサウナセンターである。


「サ道」と言うドラマでも紹介され、
東京都内最古のサウナと呼ばれている。


期待に胸を膨らませ、建物に入る。


歴史を感じさせるロッカーで着替えをすませて、エレベーターで6階のサウナへ向かう。


施設の所々に古さというか、ノスタルジーをそそる空間がたまらなく居心地が良い。


浴室に入ると、水や麦茶を自由に
飲めるようになっていて、塩まで置いてある。

サウナを楽しむ人への気遣いが溢れていて、
感動を覚える。

体を洗い、サウナマットを片手に
目的地へ飛び込む。

下段だと出入りの風が入ってくるので、
中段に陣取る。

さっそく目の前のテレビに目を奪われる。

面白い番組をやっていたからではない。

その画面には、延々と焚火の動画が流れていた。

そのディスプレイからの暖かい光が
神聖な雰囲気と、今一緒にサウナを
楽しんでいる男たちの奇妙な一体感を
演出していた。 

水風呂から出て、すぐにドラマで
原田泰造が腰掛けていたポジションを確保する。
くだらないが、こういう追体験が大好きだ。


そこに長袖を着たスタッフからの
甲高い声が浴室に響く。

アウフグースの予告の声である。

「素晴らしいタイミングだ」

思わずつぶやいてしまった。
隣に腰掛けていたおじさんに
聞こえていたら恥ずかしい。

アウフグースとは何か。

ドイツ語では、「コーヒーなどを沸かせる」と言う意味を持つ言葉らしい。

ロウリュと呼ばれるサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる現象を起こし、タオルで盛大にあおぎ、熱風を送るサービスのことである。


アウフグースを行うと、
サウナ室内の体感温度が一気に上昇し、
普段以上の熱風を直接浴びることができ、
ワンランク上の爽快感を得ることができる。

サウナブームの中でますます
その認知度が高まっている。


この熱風を送るスタッフは、
施設によって「熱波師」と呼ばれ、
このスタッフ目当てに訪れるお客も多い。

「熱波甲子園」というイベントもあるくらい、
エンタメ要素もあるサービスなのだ。

そのサービスに立ち会う際、
私はひとつミスを犯した。

熱波のレベルを測り切れていなかった。
最上段に陣取ってしまった。

アウスグースが始まり、スタッフが
15人ほどいる男たちひとりひとりに
順番にバスタオルで熱風を送る。

悲鳴とも歓喜とも呼べる声が
サウナ室中に響く。

だがどう考えても一番しんどいのは、
灼熱のこの部屋で
タオルを振り回すお兄さんである。

私の番である。

熱いのではない。
強烈な痛み。

それは殴られてたりとか、
叩かれたりといった
痛みではなく。

生きている実感を全身に
問いかけられる痛み
である。

いまのところ、
この平和な社会の中で
生活している以上、命の危険に
晒されることはそうそうあり
得るものではない。

どこか眠っている本能。
生存に執着するような。
そんな感覚をむき出しにされた
ような痛みだった。

フラフラになりながら、部屋を出る。
原田泰造ポジションを探す力は
残っていない。

近くの浴槽の縁に腰掛ける。

一気に体力を奪われ、
後悔すら襲ってきた。

サウナ室は上段にいけばいくほど、
体感温度は高くなる。

ところが、徐々に得体の知れない
爽快感に変わっていく。

水風呂から上がるころには、
全身の感覚が「入れ替わった」感覚。

あの熱波にはいったいどんな
魔力があるのだろうか。

再び浴槽の縁に腰掛けたあと、
しばらく動けなかった。

本日のサウナポイント

アウフグースで生きている
実感と感覚を取り戻せ。

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そして今日も私はサウナへ行きます。

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