見出し画像

ユーザーが違いすぎる…メルカリ出身のPMがぶつかった「UXの壁」

株式会社HOKUTOとは
医学情報の入手・保存・検索ができる医師向け臨床支援アプリHOKUTOを開発する医療系スタートアップです。2021年12月にシリーズAにて8.25億円の資金調達を実施し、累計調達額は11.25億円(2021年12月末日時点)となりました。
2022年3月時点でHOKUTOの医師ユーザーは4万人を突破し、全国の医師の約8人に1人に使われるアプリとなっています。

良いプロダクトを作るために、ユーザー体験(=UX)の重要性が語られる機会は増えています。
一方、"自分自身がユーザーではない"プロダクトの作り手として、日々心を砕いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回、医師向けアプリHOKUTOの開発責任者である山本に、ユーザーではない立場でどんなことを意識しながら開発に取り組んでいるのかを伺いました。

山本久智 株式会社HOKUTO 取締役 / プロダクト開発責任者
1990年生まれ。東京大学工学部卒。 株式会社メルカリの創業時に参画し、複数の事業を牽引。 2020年11月にメルカリを退職し、2021年1月に株式会社HOKUTOに参画。 臨床支援アプリHOKUTOの開発全般を担う。

体験できないUXを追求するという難しさ

——山本さんはメルカリ・メルペイという誰もがユーザーとなりうるプロダクトの開発を担われていましたが、HOKUTOはユーザーを医師に限定したプロダクトです。開発にあたって難しさを感じるところはありましたか?

山本:はい。一番難しいと感じたのは、自分が一生体験できないUXをどう磨きこむかということです。
HOKUTOは医師が診断や治療を行う際に使われるアプリですので、私のような非医療従事者が実際に使うことはありません。

一方、「必要な医学情報にすぐに辿り着けない」という医師のペインを解消するためのアプリとして、「何タップで必要な情報にアクセスできるか」「機能毎の体験の接続はスムーズか」といった観点でUXを磨き込むことが重要になります。しかし、私自身は医師ではないのでそのペインに遭遇することもなければ、実際に使う場面でUXを体験することはできません。

「自分が体験し得ないUXを追求しなければいけない」そのミッションに対して、非医療従事者である自分は適役なのだろうかと最初は悩んでいたのを覚えています。

"感性を捨てる"ことに気づいた

——なるほど。自分が体験できないユーザー体験を追求する…その難しさを乗り越えられると思ったきっかけがあれば教えてください。

山本:「自分の感性を捨てればいい」と気づけたことです。
実はHOKUTOに入社する前、自分があまりにもユーザーから離れすぎていて、上手くプロダクトを作れないんじゃないかと悩んだ時期がありました。

UXをより良いものにするためには、自分の感性に頼ることも重要です。
メルカリは実際にユーザーとして使ってみることで「この体験の接続は心地よさを感じるな」とか「この体験はもっとスムーズさが欲しいな」といった示唆を得て、UXに対する感性を磨いていました。

メルペイ立ち上げ時には当時スマホ決済の最先端だった中国に行って、実際に自分がユーザーとして現地でスマホで決済をしたり、中国人のユーザーが使う場面を観察していました。そこで培った感性は実際にプロダクト作りに生きる場面が多く、UXを作り込む上で自分の感性に頼ることも重要だという意識は自分の中にありました。

しかし、入社前に医師20人にインタビューをしたり、現役医師の取締役と話をする中で、自分がユーザーではないプロダクトのUXを磨くためには自分の感性を捨ててそれ以外のことに集中すればいいと気づいたんです。

自分が体験できないUXを磨くために

——自分の感性を捨ててそれ以外のことに集中する…具体的にどのように取り組まれているのでしょうか?

山本:はい。大きく3つあります。

一つ目はユーザーインタビューの徹底によって定性的なインサイトを得ることです。
HOKUTOアプリではこの1年間で3つくらい大きめな機能・施策群をリリースし、どれもアプリの継続利用率・利用頻度に大きな改善効果を上げているのですが、それぞれプロジェクトを進めるタイミングでユーザーアンケート・インタビューを通した定性的なデータを得てからそれをベースにプロジェクトを進めています。
自分のPM経験の中でもここまでの精度・速度でプロダクトが成長していくのは正直初めてなのですが、これらはユーザーインタビューを通してユーザーニーズを的確に捉え、一定強い仮説を持って開発を進められている事が大きいと思っています。

二つ目はデータ分析によって定量的なインサイトを得ることです。
HOKUTOには初めて見られる人に必ず驚かれる分析データがまとまったスプレッドシートがあるのですが、施策を打っていく際には定性的なデータだけなく定量的なデータによって仮説を補強する作業を必ず行っています。
また、強い仮説のもと機能を提供するのに加え、高速でPDCAを回して最適な形にブラッシュアップしてくこともプロダクト作りにおいて欠かせません。
上述の成果を上げられたのにはデータ分析による改善の積み重ねも大きく寄与しています。

HOKUTOの分析データ

三つ目は、これが一番重要なのですが、分かる人の感性を信じることです。
社内には救急医でPMの清水がいますし、取締役の山下も現役の医師です。
実際に彼らが臨床現場でHOKUTOを使う中で見つけたペインや改善案を大切にしています。例えば電波悪い時に検索が動かなくて困るとか、臨床現場で一分一秒でも早く情報に辿り着きたいからサジェスト機能を磨き込みたいみたいなところはなかなか肌感を持ちにくいところです。
自分自身の感性がこうしたいと頭をもたげる時もあるのですが、そこは一歩引いて、実際の使う人の感性を重視するようにしています。

今後どんな体験をユーザーに提供したいか

——ありがとうございます。今後HOKUTOを使う医師に対して、どのような体験を提供していきたいと考えているのでしょうか?

山本:「1秒でも早く必要な医学情報に辿り着ける」体験を提供していきたいと考えています。
医療の現場では患者さんの命を救うために1秒を争う場面も少なくないと聞きます。また、医師は慢性的に労働時間が長い職種ですので、HOKUTOはその業務負担を少しでも軽減できるプロダクトにしていきたいと考えています。
そのためにも医師に価値を感じてもらえるように、UXを磨き続けたいです。


一緒に働く仲間を募集しています!

株式会社HOKUTOでは、「より良いアウトカムを求める世界の医療従事者のために」というビジョンに共感していただける仲間を募集しています。
ご興味ある方は是非弊社採用ページをご覧ください。
採用ページ:https://corp.hokuto.app/recruit

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?